大したことじゃない
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「今、どなたかとの婚約が持ち上がってるとかですか? 」
真剣な目で問いかけるミリア。
「ん? いや? そうじゃない。前にも言ったろ、アレクシスが婚姻相手を決めない限り、俺はずっと独身だ」
はははっと愉し気に笑うミゲル。
「ただ、アレクの相手が決まろうが決まってなかろうが、他国からの申し入れがあれば、受け入れるしかない場合もある。それが王命による結婚だな。できれば避けたいがそうもいかん場合もある」
「他国からの申込み・・・」
「あとは、そうだなあ。この国には公爵家は二つしか無いだろう? そのせいもあって、実際王家の直轄地が広くてな。俺を臣下にして、新しく公爵家をおっ立てて、ソコを領地にするって案があるんだ。そうなると手っ取り早く嫁を充てがうだろうな」
「そんな、充てがうって・・・犬や猫のブリードじゃないんですから」
「あ~、ある意味王族は血統を重んじるからブリードみたいなもんだぞ」
「・・・」
「あと直轄地で隣国との境目にある辺境が手薄でな。そこへ辺境伯として行くっていう案もあるんだ。そっちは、危ねえからよっぽどのバカじゃねえと国内では嫁のなり手が無いだろうからその場合は隣国の貴族辺りから都合するかもな」
「え、都合するって・・・」
「嫁さんを貰うってことだよ」
「・・・」
「外交上、まるく納めるのも王家の努めだからな」
「・・・」
「まあ、大したことじゃねえよ。王族に生まれちまった以上は仕事みたいなもんだ。結婚もな」
この世界はゲームに似ているが、実際は違う。
ハイドランジア王国は魔力を持った人間が他国に比べて多く生まれる傾向にあるらしく、昔から魔力持ち目当ての誘拐や略奪が頻繁に起こっていた。それが原因で、他国との戦争が多くあったと聞く。
現ハイドランジア王国は聖王である大神官様がこの国に居る事によって他国からの干渉を完全に防いでいる。
それは、魔族という共通の異分子から自分たちを守ってくれる保護魔法を世界中に広げる膨大な神聖力があるからだ。
聖王や大聖女という存在がハイドランジア王国民にとって特別なのは魔物からの攻撃に対するだけではなく、ある意味他国の干渉からもこの国を守っている存在であるからとも言えるのだ。
神殿教育で習ったはずの知識が今になって実感として蘇る。
自分自身は子供の頃、結婚したくない一心で大聖女になろうとしていたのだが、何かとんでもなく責任があるものに挑んでいたのかもしれないという事を今更ながらに感じて、気が遠くなる思いがする。
そして自分自身の立場や役割を受け入れ、王族としての責務を粛々と全うすることに向き合っているミゲルを、初めて大人の男性なのだと認識したアークライド侯爵令嬢ミリアンヌ。
「ミゲル様はそれで本当にいいんですか? 」
「ん? 」
「だって・・・えと、あのその」
あれ? 何を言いたかったのだろう。
両手を握りしめ、首を傾げて次の言葉を考える。
「え~と・・・あれえ? 」
「・・・お前な」
呆れた様な顔でミゲルがこっちを見るので余計に焦って言葉が辿々しくなる。
「え~と、あのその。昨日の夜中に思い出したんですよ、えとですね。宮田課長の時、私が仕事山程抱えたり他の人の分までやってたりしてるの見かねて、ずっと心配しててくれたんですよね・・・」
「お、おう。急にどうした」
「それで、女の人に頼まれたら嫌って言えなくて。男だから頑張らなくちゃとか頑なになってたのをずっと、何ていうかズバッと他に回せって怒ったりして、さり気なく助けてくれてたっていうか。早く家に帰れって言って研究室から締め出したりとかして怖い上司のフリしてたでしょう、ずっと」
「・・・」
「え~と。デビュタントの時に言ってた『よく見てたから』ってそういう事ですよね。それで課長がアメリカへ出向してる間に、自分で自分が無理してるの全然気が付けなくて、胸が急に痛くなってそのまま死んじゃって。ずっと私は課長に守って貰ってたくせに気が付かなくて。それなのに、さっきの話だと今度は国を守るために好きでもない人と結婚するって。前と同じじゃないけど、同じじゃないですか! 損な役回りばっかりで! そんなの私が嫌です! 」
「言いたいことは分かるが、言葉が変だぞミリー・・・」
横を見ると耳まで赤くなったミゲルが、頭を抱えていた。
いやあ、青春だね。チャンネルはそのままで~
ブクマが気がつけば二桁に・・・
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