お爺ちゃんだけど老婆心
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「でさあ、ミリーは結局どうしたいの? 」
煙管からぷふぁ~と煙草の煙を吐くお爺ちゃんこと大神官、別名『聖王』様。
翌日、連続の来訪は控えた方が良いかな~ となんとなく遠慮して東の離宮には足を向けずに、神殿に来ているミリアンヌ。
「うう~ん、実は考えてなかったんです」
「ソコをミゲルにビシっと言い当てられて困ってんだ~~ 」
「うう・・・」
頭を抱えるミリアをニヤリと笑いながら腕を組むお爺ちゃん。
「どうせ大聖女になって、結婚から逃走する事しか考えてなかったんでしょ?」
「面目ない・・・」
「神殿に住んじゃったら、家族とはオサラバだわよ」
「うっ」
「結婚したら、神殿に住まなくてもいいけどお~ 」
「・・・」
「後は侯爵家でず~っとご厄介になるかあ~ でもさ、生家にアンタがいると小姑付きになってダニエルの結婚に支障が出そうよねえ~ 」
「ああああ~ 」
「この世界って結構そういう所乙女ゲーム的なのよねえ~ 年頃の男女は結婚=幸せ的な? 」
「制作者の手落ちでしょうか」
「ゲームは関係なく、この世界は成り立ってると思うわよ~ もうわかってんじゃないの? 封建的な社会だから単に文明的に遅れてるんでしょーよ。 女性の独身バリキャリとかそうそういないでしょ? 」
「そこまでは分かんないです・・・」
「外、歩いてないもんね」
呆れた様な目で見られてシューンとなるミリア。
「ソウデスネ」
ひたすら身体と武力と魔力を鍛えた十五年間・・・後は貴族としての礼儀作法とか・・・外へ行ったのって、メルを見つけた時ぐらいだ! と気がついた。
「ミゲルは一年くらい国中巡って魔獣狩りをやってたのよねー 」
「へー 」
「あの子は王族だけど、ギルドに登録してて、市政にも結構詳しいわよね~ 」
「ギルドって、冒険者ですか? 」
「そう。変わった子だと思ってたけど、転生者だったとはねえー・・・んん? 」
急にお爺ちゃんの動きがピタッと止まり、驚くミリアンヌ。
「どうしたんですか、急に・・・心臓発作? 」
そのままの姿勢で、ゆるゆると首だけを振る仕草をするお爺ちゃん。
「ミゲル、あの子。魔力検査やり直ししなくちゃいけないわ・・・多分」
「え? 」
「こうしちゃいられないわ、ちょっと誰か! 」
お爺ちゃんがテーブルの上にあるベルを力いっぱい振る。
「はいっ。どうされました大神官様」
白い神官服を着た、女性がドアをノックして応接室に入ってくる。
「直ぐに王家に遣いを。王弟ミゲル殿下の魔力を再検査するよう、申立をして下さい」
女性はお辞儀をすると足早に廊下に下がっていった。
「一体どうしたんですか? 」
「私が覚えてる限り、以前ミゲルは光属性の魔力だけって判定だったのよね。でも、今は転生者の記憶も持ってるでしょ? 」
「そうですね」
「変わってるかもしれないのよ」
「あ、なるほどね」
「私とパターンが違うから調べてみないとね」
首を傾げるミリアンヌ。
「どうなるんですか? 」
「聖王と大聖女の条件って知ってる? 」
「えとー、光属性の魔力がすごく強くて、聖魔法を、使える? くらいしか知らないです」
「一般的にはそれで合ってるんだけど。ミリーをイジメてて思い出したのよねー 」
「? 」
「魔力判定の時に光属性とは別に属性を五個以上持ってる事と、魔力の供給量の多さ。コレが最低条件なのよ」
「え、そんなの知らないですよ属性が多いのは転生者の特徴じゃなかったっけ? 」
「だって、神殿の機密事項ですもの~ 」
「ええええ~! 」
「言い換えりゃ、アンタが侯爵領の神殿で検査した時に、部屋をぶっ壊す魔力があった時点で大聖女になる事は決定済みなのよね」
「ええええ! 」
「ミリーはさ、初潮さえくればオールオッケーなのよねえ」
「・・・心配して損した」
「ウフフ~でもさ、アンタ真面目じゃん」
「はあ」
「神殿で結界張ってるだけの人生で終わりそうでさ~ 」
テーブルに肘をついて顎を載せ三白眼になってミリアを見るお爺ちゃん・・・
「・・・確かに」
「転生前の人生と比べてみて、せっかく生まれ変わったのに、その生き方で良いのかしらね? 」
「・・・」
「だからアンタの事を突っついてみたんだけどさあ。人生ってゴールするだけが全てじゃないわよう。そこん所ちゃ~んと考えてみたら? 」
「はひ・・・」
連日、ツッコミを入れられ益々しょげるミリアである。
さあ~ミリアちゃん、次行ってみよ~う!