メルの指摘
お読みいただき感謝です〜(^^)
「はあ~なるほどね~ そういう裏事情があったんですか」
ここは東の離宮、王弟ミゲル殿下の居城である。
応接間の大きなソファーに座って、己の膝の上に人の子みたいにお座りしているメルをモフるのを堪能中のミリア。
「まあ、そうだとしてもお前と伯爵に迷惑をかけていい訳ではないがな」
あったかい緑茶を啜りながら、のたまうミゲル。
「元々、シンシアは根暗で社交は大嫌いなんだが、兄上はその辺りはよくわからんらしくてな。まあ前世で言うところの、婚活ノイローゼみたいになってたらしい」
「難儀ですね・・・、隠蔽魔法を習得するのに私は七年掛かりました。あれ結構繊細で難しいんですよね」
「俺もジジイどもに習った。出来んことはないがなあ」
「ジジイ? 」
「王宮付の教師だよ。魔法は王宮魔導師だな」
長い脚を組み替えながら
「前世を、思い出す前に覚えたからな。今はほとんど使ってないな」
考えるように首を傾げる黒髪の美丈夫。
「今回出来るようになってて私は、良い方に転びましたけどね~ 普段使いするような魔法じゃありませんよね」
「まあな。おいメル」
ミリアの膝の上で髭をピクリと動かし、目線をミゲルに向ける白いサイベリアンフォレストキャット。
「どうされました? 御主人様」
「お前、出来るだろ? 隠蔽魔法」
「もちろんで御座います」
髭をピクピク自慢げに動かすメル。
「え、メルちゃん、凄い! 」
「吾輩は、生まれつき聖属性魔法が使えるのでありますミリア殿」
「え、練習なしで? 」
「そうであります」
「・・・可愛い上に優秀とか。どんだけ~・・・ 」
自分の七年を思い出して若干遠い目をしながら、ぎゅむぎゅむとメルを抱きしめるミリア。
「苦しいであります。ミリア殿」
「なあメル、お前ならシンシアに隠蔽魔法を教えられないかな」
首を捻る仕草をしながら考えるメル。
「わかりません。ただ、御主人様のお話しだと魔力が足りないわけでは無いのですよね? 」
「そうらしいな才能の問題か? 」
「いえ。恐らくその王女殿下は運動不足なのではないでしょうか」
「「え? 」」
「体力も無いのではないでしょうか? 」
「「ええ? そんなの関係あるの? 」」
「あります」
「・・・確かにアイツは引きこもりだから体力は無いだろうなぁ」
「自在に魔法が使えるようになるには、身体と気力がバランスよく働いている必要があります。ですのである程度の体力は必要となります。魔力を失うと気絶するのは魔力が気の一種だからなのですが、気は言い換えれば精神力です。体が不健康だと精神も安定しません」
「あ、そうか、だから聖王も聖女も第二次性徴を過ぎてからじゃないと継承できんのか! スゲーなメル! 天才かお前」
「お褒めに預かり恐縮です。御主人様」
ミリアの膝から降りて、優雅に貴族の礼を取るメルヘン。
ソレを微妙な顔で見ているミリアに気が付くミゲル。
「どうした、ミリー。変な顔して? 」
「いえ、その情報せめて三年くらい前に知りたかったなと・・・」
体の鍛え過ぎで筋肉過多になり、体の成長が遅れ、第二次性徴が遅れたせいで未だに聖女認定ができないミリアンヌ・・・
「あぁ~・・・ お前筋力つけ過ぎで・・・」
「ああ、年齢に応じた体の発育も必要不可欠ですね。ホルモンバランスに関わりますから。お話によると王女殿下はその辺りは大丈夫ではないでしょうか」
「・・・」
「メル、トドメを刺すな」
「は? 」
三人がけのソファーに突っ伏している侯爵令嬢ミリアンヌであった。
メルちゃん、出来る子っ!
ブクマ、評価共にありがとうございます!(*^^*)