銀の鎖
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光属性の魔法と聖属性の魔法は根底は同じものだが、実はちょっとだけ異なる。
聖属性魔法を使いこなすには、本人の魔力量の多さと、才能。そしてその専門家による訓練が必要となるのである。ミリアが幼い頃から神殿教育を施されていたのはこの資質によるモノが大きいとされている。
共に魔物が忌避するモノなのだがその存在を根底から消し去ってしまえるのは聖属性魔法だけである。
その為この世界において聖王や大聖女は特別な存在とされているのだが、ハイドランジア王国の王族は魔物を退ることができる優秀な血をその身に受け継いでいる為、国内だけではなく他国の王侯貴族からのアプローチが非常に多い。
その血筋を自国の王家に取り込みたいと願う国にとってハイドランジア王家の女性は引く手数多と言っても過言ではなく、幼少期より婚約の為の釣書と絵姿が山の様に届くのである・・・
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『ハイドランジア王家の血族は光属性の魔力が代々続いており途切れたことがない。それ故、その血筋を取り込んだ家系は聖属性の魔法が使えるようになる事が確認されている』
パタンという音をさせて、厚い歴史書を閉じる美女。
黒い髪、黒に近い濃紺の瞳は若干ツリ目でフサフサとした長い睫毛に縁取られ、高く通った鼻筋と大きめでハッキリした赤い唇は意思の強さを伺わせる。
真っ赤なドレスを好み、それに合わせた黒曜石やブラックダイヤのアクセサリーを纏うことで有名な、この国の第二王女シンシアである。
大輪の薔薇を思い起こさせるような華やかな美貌は傾国の美女とも言われるほどで、諸外国からも是非とも嫁いでほしいと熱く切望されている女性である。
「ああ、つまらない! 嫌! 」
本を寝台の上に放り投げ、座っているソファーに突っ伏してしまう。
「求婚してくる貴族も他国の王族も、皆、私の事を只の子を孕ませる為の道具にしか考えてないんだわ」
目に涙を滲ませながら、力なくソファーの上で上半身を起こして座り直すと、ため息を付いた。
「私の事を大切にして、愛してくれる人なんかいるものですか! 」
そう言いながら左足首に巻き付いている細いチェーンに手を伸ばす。
「マーロウ、貴方だけが私の味方よ」
細いチェーンが長く長く伸びていく先にある、一人がけのソファーに白いマントを纏った一人の少年が座っている。
ブルーグレイの髪の毛に同色の瞳の色白で美しい美少年は、最年少で王宮魔道士になった天才魔術師、マーロウ・シンフォニアである。人形のように美しく中性的で繊細な美貌は、男性というよりは少女のようにも見える。辛うじて首元の喉仏だけが彼の性を主張しているようにも見える。
「・・・・」
「なにか言ってちょうだいマーロウ? 」
「何を言えば? 満足しますか王女殿下」
「何でもいいから」
「・・・何でも。ですか」
クスクス笑い始めるシンシア王女。
「そうね、満足なんかしないものねワタクシは。貴方は賢いからよく知ってるわよね」
「・・・僕は、賢くはないです」
「そうかしら? 」
「ただ、器用なだけです・・・」
王女はクスクス笑いながら鎖を指に絡めてもて遊ぶ。
「それでも羨ましいわ。私と違って自由に生きていけるでしょう? 」
「これが自由ですか? 」
シャラシャラと音をさせて、マーロウが左手を持ち上げると、王女の手から伸びている鎖が彼の手首に巻き付きその先端が手の平の中央に埋まっているように見える。
「そうね。貴方の自由を奪っているのは私だものね」
大輪の薔薇が飾られている豪華な部屋に王女の忍び笑いが響いていた・・・・
次、行ってみよ~・・・