ゼノア卿
初めてミリアの外観を細かく書いた事に気がついた~~(笑)
その少女はそれはそれは、美しかった。
一見プラチナブロンドに見える髪の毛が光を反射し、動く每に薄紅色とクリーム色が混じった美しい薔薇の花を彷彿とさせる輝くストロベリーブロンドに、そばかす一つない白磁のような肌。薔薇色に上気した頬の間を、形の良い額から続く鼻筋がスッと通っており、その行き着く先にある小さく整った鼻梁。熟れたサクランボのような艶めいた唇が繊細な顎に配されている。
見事な左右対称を成している大きく見開かれたアーモンド型の目にタンザナイトのような瞳が煌めき、その周りを髪と同じ色の長い睫毛が縁取っている。
白く細い首に続く華奢な鎖骨。丸みを帯びたまろやかな丘陵と、グッと締まった細いウェスト。すんなりとした伸びやかな腕は長いシルクのオペラ・グローブで包まれていて、一目で良いので、その隠された甘美な白さをこの目で確かめさせて欲しいと跪きたくなる・・・デビュタント・バルでワルツを踊っている少女達の中でも、目立って小柄。なのに遠目でもその美しさは高価な宝石の様にひときわ光り輝いており、まるで御伽話に登場する妖精のようだった。
高位貴族としての挨拶周りをしていた時、不意に目にしたその少女の姿はあまりにも衝撃的で、その男は胸を鷲掴みにされてしまい愕然とした。
「あの少女は・・・」
長い白銀の髪に蜂蜜色の瞳。まるで王子様の様な整った顔と佇まいの青年、ティーダー侯爵家の嫡男、ゼノア・ティーダー伯爵である。
現在は父親が侯爵家を取り仕切っておりまだまだ跡目を継ぐことはなさそうだが、成人と共に父親が有していた爵位の中から伯爵位を授けられ、自領も賜り領地運営を始めたばかりの青年である。
妹は第一王子の筆頭婚約者候補であり、王子妃、ひいては王太子妃として王家に嫁ぐのではないかと囁かれており良くも悪くも注目を浴びている。
「なんと美しい・・・」
「どうかなさいましたか? 」
目の前にいる女性に声を掛けられた。
「ああ、失礼しました王女殿下」
赤いドレスを着こなす黒髪の美女。この国の第二王女シンシアである。
「うふふ、ひょっとして今年のデビュタントのご令嬢で、気になる方でもいらっしゃるのかしら? 」
「ああ、いえ。王女殿下そういうわけでは・・・ 」
「ほら、あの子。バルで踊っている薔薇の様な髪の小柄なご令嬢、『妖精姫』よ。美しいわ。まるで御伽話に登場しそうでしょう? 」
扇で口元を隠しながら妖艶に目元が輝く。
「有名なアークライド侯爵家のご息女、ミリアンヌ嬢よ」
「ミリアンヌ嬢・・・あれが・・・」
ミリアンヌを見つめる瞳は恋する少年のように煌めいて、その奥には紛れもなく劣情の色が含まれているのをシンシア王女は見逃さなかった。
「良ければご紹介致しましょうか? 」
「は? 何で私に・・・」
「うふふ。だってミリアンヌ嬢に夢中になっておいででは? 目が恋する者の様に煌めいていらっしゃいますわよ」
その言葉を聞いた途端、青年は口元に手を当て、顔色を悪くする。
「・・・失礼致します、王女殿下。少しばかり気分が優れませんので・・・」
「あら? 本当ね。顔色がお悪うございましてよ、休憩室でお休みになってはいかが? 」
「お気遣いありがとう御座います」
ゼノアはぎこちない動きで王女から無理矢理体を離し、その場を辞した。
「どうなるかしら? 」
妖艶に微笑む美女は扇で自分の口元を覆うのであった。
お読みいただき感謝です〜(^^)