おっとこりゃあ、不味くないかい?
お読みいただき感謝です!(^^)
王族の入場とともに開始されたデビュタント・バルは国王陛下の挨拶の後、国王夫妻のファーストダンスと共に始まった。
・・・のだが。何故かミリアは、フカフカの布団の上に転がっていた。
陛下たちのダンスの後、最初の高位貴族集団の一員としてではあるが、父にエスコートされダンスを踊った。
そりゃあもう(満腹故の)ご機嫌な笑顔を振りまきつつ、華麗にステップを踏んだのである。
周りの若い貴族子息達の熱い視線を一斉に浴びながらではあったのだが、他人の『思念を遮断するバリア』を張りっぱなしだったため、緊張なんてどこ吹く風である。
まあ、中身がアレなんで、男性に見られた所で一向に気にならないのかもしれないが・・・
『あれ? 何でこんなトコにいるんでしょうか? 』
猿轡をされ、後ろ手に縛られて転がされているこの状況・・・?
『ウ~ン、喉が乾いたので父様から離れてドリンクバーまで行った時、侍従にメモを渡されてミゲル様に呼ばれてるって・・・廊下まで出たのは思い出しましたよ』
母とマーサの夢の詰まったドレスが皺くちゃになって泣かれるのは困るので、取り敢えず腹筋の力だけで上半身を立ち上げ胡座をかいて座り直す。
『王宮内で拐われたって事かな? 』
目隠しはされていないので、これ幸いと当たりを見回す。先刻ミゲルに連れられて行った貴賓室に似ているが、もっと作りが簡素である。
まあ、実のところ貴族目線で見ても調度品は十分に高級ではあるのだが、先に見たモノが豪華すぎた。
『ウ~ンこりゃあ休憩室かなあ』
ミゲルの所にはなかった寝台があり、その上に今まさに自分が座っている。
本来は、パーティー中に気分が悪くなった出席者が仮眠や休憩を取るためのものであるのだが、まあ不埒な奴が使うこともあるという、アレだアレ・・・
『肩を叩かれて、振り返ろうとして・・・うーむ』
覚えが無いので何をされたのかは分からない・・・着衣の乱れがないため寝転されていただけのようである。
『一応女の子だからなー。こういうの不味いよねえ』
小首を傾げながら、
『フンッ! 』
と、力を込めて、手に巻き付く拘束を引き千切る。
『ブチッ』
小気味のいい音と共に手が自由を取り戻す。
「? 何でシルクのリボン・・? 」
例えリボンであろうとも、普通は後ろ手にされていてはそう簡単に引き千切れない・・・流石は脳筋ミリアである。
リボンはご丁寧にプレゼント宜しく蝶々結びをしてあったようだ。
更に猿轡を外してそれも確認。
「何でこっちもシルクのスカーフ? 」
何だか両方とも高級そう・・・
「ウ~ン? ま、いっか」
立ち上がり、寝台から降りて肩をぐるぐる回し首もついでに回す。
「ここはお爺ちゃん仕込みの隠蔽魔法ですよねえ・・・」
思念遮断を解いて、自分の姿を周りから見えない様に隠す為の光魔法を展開する。
キラキラとした光がミリアの身体を取り囲むと、自分以外の人間には見えなくなった筈だ。
確認する為に、壁際に置いてある大きな姿見を前に立つと何も映っていない。
「フフフ、上手く行きましたね。お爺ちゃんに感謝だよね」
習得するのになんと丸々七年かかった光魔法である。
いつもは脳天気なお爺ちゃんに
「下手くそっ! もっと上手に確実に! 」
と、叱咤激励のスパルタ式で叩き込まれた魔法である。
『こんな所で使えるとは思わなかったけどねえ』
つい感慨深くなり、遠い目になるミリア。
お爺ちゃんは逃走用に使うんだそうだ・・・聖王が何から逃げるのかは、ご想像にお任せである。
「取り敢えず脱出? それよかお返しをしなくっちゃね! 」
ゲームではこんな展開はなかった気がするのだが、と首を捻るミリアンヌである。
指をポキポキ鳴らして
「誰か知らないけど、天に代わってお仕置きよ~♡ 」
悪意は三倍返し。
これが今生においては目標のミリアンヌである。
乙女ゲームは関係なくストーリーが進むのが世界のテンプレ!()




