恋愛フラグは本人達に関係なく勝手に立つものである
執筆担当者も訂正しないもーん。
広間に戻るため、貴賓室を出る二人。
王族専用の貴賓室のせいなのか、廊下に配置される警備は近衛のようで全員が美しい房飾りの付いた白い騎士服を身に纏った美丈夫達である。
「取り敢えず、広間に戻るぞミリー」
エスコートの為に差し出された左手の上に右手を乗せるミリアンヌ。
「ありがとうございます、ミゲル様」
お腹が思い切り満たされた『妖精姫』は魅惑の極上スマイルを周りに振りまきながら
「早く、東の離宮へ行きたいですわ」
ほうっとため息をついた。
「もうちょっと我慢しろ、せめて明日以降にしてくれ。それとその角度は、ヤメロ・・・」
秘技『斜め四十五度』でこちらを見上げながら不思議そうな顔をするミリアを見て、思わず鼻を右手で抑える王弟殿下。
「ホントに悪気が無いからなあ~ こっちの身が持たん・・・ 」
「あ、ゴメンなさい・・・てへ」
はぁ~とため息をつき天井を見上げるミゲル。
長い廊下を親しげに歩いて行く、黒髪の王弟殿下とストロベリーブロンドの美少女の会話が漏れ聞こえ、思わず目が点になって二度見する近衛騎士達。
更に柱の影からそれをじっと見つめている人物がいた事に二人は気が付かなかった。
××××××××××
大勢のデビュタントの主役たちが、むせ返るような香水の匂いを纏い、キラキラ、ギラギラと着飾った姿をチラホラ見せ始めた会場に戻ると、直ぐにミリアンヌパパの所へ直行する二人。
「アークライド侯爵閣下、大切なご令嬢と楽しい時間を過ごさせて頂きありがとうございました」
ミリアンヌの右手を侯爵の左手に流れる様な美しい所作で渡すミゲル。
「これはこれは、王弟殿下。我が娘ミリアンヌとの時間はお気に召して頂けましたでしょうか? 」
小首を傾げる侯爵閣下。
「ええ、もちろんです。貴重なお時間を与えて頂き光栄の至りです」
麗しい笑顔で返すミゲルと、扇で口元を隠しながら
「お父様、ワタクシ、お腹が空いて倒れる寸前だったのを殿下に助けて頂きましたのよ」
と小さい声で父に告げるミリアンヌ。
「・・・殿下、このお礼は必ずや・・・」
と言いながら、王弟殿下と硬い握手をガッチリ交わすアークライド侯爵家当主ウィリアム閣下。
その姿を見た年頃の娘を持つ高位貴族達の中には、『王太子妃候補が一人脱落した事』を顔にこそ出さないが、こっそりと喜んでいた者達がいたのは間違い無い。
実際の所は食いしん坊の娘を助けて貰い、ただただ喜んでいるだけの親バカ侯爵と、見るに見兼ねて貴賓室へ食事を運ばせたものの、ミリアの豪快な食べっぷりに呆れていた王弟殿下なのだが・・・
そんな事実は誰にも知られてはならない出来事なので勘違いされてもまあ仕方がないし、訂正しようもないのである・・・
まあ、想定内の出来事ってストーリー的に必須項目デスヨネ。
お読みいただき感謝です〜\(^o^)/