人気者は辛い
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王宮という特別な場所に出入りできるのは基本的に、公爵位から上級伯爵位までの高位貴族と呼ばれる一部の特権階級の者達である。それ以外で出入りが認められる者達と言えば王宮使用人や、官職等に付いている家格の者達だ。
中級伯爵位以下の貴族は特別な用事でもない限り、王宮への出入りはほぼないに等しい。ましてや下級貴族の子女となれば、一生涯王宮に招かれる事など無いのが実情である。
そういった貴族階級の子女が、王宮に招かれ踊る機会と言えば、春に行われるデビュタント・バルだけと言っても過言ではないであろう。そんな一生に一度になるかもしれない大切な王宮行事を、全ての貴族階級の参加者が楽しめるよう、王宮内にある大ホールは素晴らしく綺羅びやかに飾り付けられている。
会場の壁際には立食スタイルのビュッフェ形式のお料理が湯気を上げながら美しく、かつ豪華に置かれてあるテーブルが幾つも並び、その間には休憩用の長椅子がゆったりと置かれていたりする。
国王夫妻御一家の入場がある迄は、この会場の中で自由に過ごして良いという決まりにはなっているのだが実際のところ、下位の貴族たちが自分たちより高位の貴族に挨拶をしたり、有力貴族との結びつきのための根回しの場なのである・・・
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「いやあ~侯爵閣下、美しい。まさに奥方に生き写しと言っても過言では無いですなあ~。いや、『妖精姫』と呼ばれるに相応しいご令嬢ですな」
自慢の娘を褒められて嬉しくないわけもなく、ミリアンヌパパはご機嫌で挨拶を受けている。
髭面、三段腹、昔はイケメン、等各種取り揃えておっさんから爺まで。
お前らそれしか言う事ねえのかよ?
と口には出さずにお行儀よく扇で引き攣った顔を隠しつつ、腹の中で管を巻き続けるミリアンヌ。
先程から同じ台詞ばっかりで飽きてきた・・・
社交なんかする気は更々無かった為、友達がいないのは確かなのだが謁見の順番が最初だったため一番最初の入場だった。そのせいで他に獲物がいなかったのもあるのだろう。
周りに貴族の山ができ、ミリアにとっては不幸な事に、お料理の載ったテーブルに一切近寄れない。
『くっ。せめてスイーツ・・・』
現在お爺ちゃんに筋トレ禁止令を食らっており、タンパク質の過剰摂取を止められている。メインの肉料理は今までよりかなり控え目にし、自宅に帰った時の事を考慮してサンドウィッチかスイーツくらいなら・・・と思っていても近寄ることすら出来ないという現状は地獄である。
朝から少ししか食べていなかったのでお腹のパラメーターは既に空腹を指している・・・
『ジジイども、邪魔っ・・・って、また増えた~~ 』
領地改革の先駆者であるアークライド侯爵家当主ウィリアムとの交流を図りたい貴族は山程いるのである。
『お、お腹減った~・・・』
最早、胃は限界突破寸前である。扇の裏で青い顔で引き攣り笑いをしているミリアの方に向かい
「侯爵閣下、ミリアンヌ嬢をお借りしても?」
という天の声が響き、人垣のど真ん中にサーッと効果音が付きそうな勢いで花道が現れた。
居並ぶ貴族が頭を下げる中、その道を通ってミリアの側にやってきたのは黒髪の美丈夫、ミゲル王弟殿下であった。
基本的に、ミリアは大食い。だってよく動くから~(動きすぎでお爺ちゃんに怒られる)
そんな彼女が、着替え中のつまむ程度の軽食で足りるわけがないのである。