聖獣の承認
もうちょいです〜~。◕‿◕。
「これより現聖王である、ネイサン・ルクスによる『聖獣』の承認の儀を執り行う」
これを聞いて周りにいた来客者達にどよめきが起こった。
「静まれ」
お爺ちゃんが片手を上げるとピタリとその場が静かになる。
「結界石の神聖力を天に返す」
その言葉にザワザワと小さなざわめきが起こるが、それを聴きながらニンマリ笑いながら壇上から降りて行くと金色に輝く結界石に掌を当てるお爺ちゃん。
途端に、満たした時と反対に上に上にと金色の輝きが登り始めた。
結界石が透明のクリスタルの様な六角柱に戻ると
「「「「おお~ 」」」」
どよめきが会場を満たす。
「ミゲルよ、メルをここへ」
え、という顔になるミリアを他所にミゲルがパチンと指を鳴らすと、大きな白猫が二人の足元に突然現れる。
後ろ足で立ちあがり優雅に貴族の礼をするメルヘン。
「お呼びでしょうか」
コレには来賓客も驚いたようで、ザワザワと驚きの声が広がる。
「メル、聖王の言うとおりに」
「はい。畏まりました」
メルはスルリと猫らしい動きで、お爺ちゃんの足元へ近寄っていく。
「メルや、本来の姿に戻りこの結界石の中に神聖力を注ぎ込むんじゃよ」
お爺ちゃんがニコニコしてメルに言い聞かすと一旦首を傾げてから
「仰せのままに」
そう答えるとブルリと体を震わせて一瞬で本来の姿である例の羽根の生えた二メートルの猫に戻り結界石の表面に自分の額をくっつける。
会場が驚きで一瞬ザワついた。
「ああ、モフモフ・・・」
ジュルリと涎を垂らしそうになり、咎める眼差しをミゲルが送っているのにハッと気がつくミリア。
「スミマセン・・・」
「涎に気をつけろよ」
「はあい・・・」
メルが額を押し付けている巨大な六角柱の真ん中に先程と同じ金色の光の流れが押し寄せる。
ミリアとミゲルと違い何本もの細い金色の金砂の様な流れが生まれどんどんと結界石を満たしていく。
「おお。メルちゃん凄い」
思わず呟くミリアンヌ。
「お前とどっこいのの魔力量らしいぞ」
「うぇ、そうなんですか」
「ああ。以前魔力判定しに神殿に来たときにぶっ壊れたらしい。水晶も部屋もな」
「・・・それ、まるきり私達と一緒って事ですよねえ」
「そうだ。だから野放しもヤバいし、神殿預かりにしとかねえと利用しようとする連中に狙われるから、ここでお披露目しとくんだそうだ」
「ははあ、安全の為なんですね」
「ああ、俺達の承認の儀を急いだのも二人いるんならいいだろって変な考えをする輩が出てこないとも限らんという事で急いだんだ」
「あ、それで」
「まあ、陛下と宰相は慌てすぎだっつー事で昨晩は爺にお灸を据えられたらしいがな・・・」
ちょっとだけ遠い目になるミゲルを見上げるミリア。
「でも、皆様がそこまで私達を思ってくださる事を感謝しなくちゃいけませんね」
「そうだな」
ラピスラズリの瞳が優しげに瞬きこちらに視線を向けると
「メルヘンが生まれちまったのは俺達三人のせいだから、俺達に責任がある。俺もお前も今日から爺と同じ『ルクス』だ。全員が神の子になるのなら、アイツは神の子の使徒になるのが当然だろうってジジイが言い出してこうなったんだよ」
「なるほど」
正面を向くと屋根まである結界石は金色の柱に姿を変えてそそり立っていた。
「続いて祈りじゃが、生まれたばかりのお前では分からぬじゃろうからな」
首を傾げるメルに招待客の、主に女性陣から
「うっ♡」
という呻きが聞こえる。
ああ、猫ちゃん萌えは世界共通ですねと納得のミリア。
「そうじゃなあ、ミゲルを護ろうという気持ちを魔力として可視化してこの部屋に拡げて見せよ。其れが一番お前には分かりやすいじゃろうて」
「はい、承りました」
メルが身体をブルリと震わせると四本の足元から直線状の銀色の光が四方八方に床を走り抜け壁に当たると金色の光が四散し、それと同時に大聖堂の天井から金と銀の入り混じった雪がチリチリという鈴の音をさせながら降ってくる。
出席者の頭や肩に当たると鈴の音を残しながら儚く消えてしまう。
「メルの祈りは、やはり慈しみより守りの方が強そうじゃのう」
「警護主任です故」
メルは元のフワモコの大きめの猫サイズに戻ると来客者に向かって恭しく貴族の礼をした。
「ここに居るのは、世界で唯一の聖獣、『メル・ルクス』じゃ。この者も神の子として本日より名を連ねる。これにて本日の承認の儀は終了じゃ」
大神官が片手を上げて宣誓すると、その場の全員が恭しく現聖王と新たに『ルクス』を名乗る二人と一匹に頭を垂れるのであった。
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