女子は支度に時間がかかるもの
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承認の儀の当日、午後1時。
各国の代表達が大神殿の奥にある大転移門から現れると、待ち構えていた神官達によって大聖堂の貴賓席へ次々と案内されて行く。
リンデン公国やシャガル王国の様にハイドランジア王国に隣接している国以外は承認式に参加するために現聖王の申し出の通リ、転移門を使った移動となった。
中には転移魔法そのものを使うのが初めての国もあったが国際機関でもある冒険者ギルドの協力もあって何のトラブルも無くスムーズに事が運んだ。
実は今回ハイドランジア王国への移転魔法に関してはギルドの協力もあっって実現したと言っても過言ではない。
各国の首都には必ず冒険者ギルドがある。
ギルドはスクロールの販売元でもあるのだが、使う為の指導も行っているため職員達は教えるプロである。各国の代表者達に品物を届けるついでにレクチャーも請け負ってくれた。
これに関してはミゲル自身がSクラス冒険者としてギルドに籍を置いていることも多いに関係していると巷では囁かれているが真偽の程は謎である。
まあ、いい加減少ないSクラス冒険者なのだ、ギルドとしてもそれなりの下心はあったとしても不思議ではないだろう・・・
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「良かったですねえ、良いお天気に恵まれて」
大神殿の聖女の控室で緊張しまくりで、朝から胃の痛いミリアの長いストロベリーブロンドをハーフアップに結い上げながら、ご機嫌のマーサである。
「う、うん。そうだねマーサ・・・」
「殿下を探しにお嬢様が出掛けた時は本当に心配いたしましたよ」
そう言いながら目線は鏡の中のミリアに向いているが、手は全く休まず動き続ける侍女頭。
うーん全自動。
続いて顔に薄化粧を施すと、キトンを目にも留まらぬ早業でミリアに着付けていくマーサ・・・流石はプロである。
王家の茶会の時と同じ様に美しい襞を作って一枚の布をドレスとして着付けていく。
承認式にはこのドレスの上から更にミスタリーレを織り込んだ布で作られたヒマティオンを肩から腰にかけて斜めに羽織り肩で美しいドレープを作る。
編み込んだ髪に白い小さな生花を散らすように飾り付け、装飾品は『ミゲルの独占欲丸出し』という各方面より高評価を受けたサークレット、ネックレス、イヤリングの三点セットである・・・
「お嬢様、こうやって何回も何回もお嫁様みたいな衣装を着てると本番は何を着ていいか分からなくなりそうですね・・・」
ニンマリと笑うマーサと鏡越しに目が合い、ミリアが思わず引き攣り笑いになったのは言うまでもない。
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本来のサイズに戻ったロッドを右手に持って廊下に出ると迎えに来ていた女性神官達が傅く様に恭しくお辞儀をすると、大聖堂に向かい歩き出したミリアンヌに付き従って共に進み始める。
目線だけでチラリと横を見ると、マーサが控室のドア前で恭しくお辞儀をしているのが見えた。
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一方ミゲルは聖王の控室での着替えはさっさと一人で済まして大聖堂の入り口にお爺ちゃんと一緒に立ってミリアンヌの到着を待っていた。
こちらは膝丈のキャソックに似た白い神官の礼装姿である。
上着のサイドにはスリットが入っていて、下に同布地のトラウザーズと皮のブーツ。
件の茶会の時とほぼ一緒だが、サッシュの代わりにヒマティオンを纏っている。
「男のは聖女の衣装に比べたらかなり実用的だよな」
「あー、コレはアタシが作ったのよね。以前は聖女みたいに膝丈の長さの男物のキトンにヒマティオンだったのよ」
「へー、それであっちに比べると現代風で機能的なのか」
「・・・まあね。男の脛毛なんて見たくないでしょう? 」
「・・・あー、確かに」
「自らパターン起こして作ったのよ。褒めてちょうだい。そうじゃなかったら、アンタも男物のキトンでその下はトラウザーズもなしのフリ●ンだったんだからねっ! 」
「・・・感謝します」
ミゲルが遠い目になった。
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