悪をやっつける王子様
宜しくお願いします(_ _)
翌日ミゲルとミリア、お爺ちゃんの三人が神殿で明日の式典の打ち合せをしている所にクレス王子とゲイル王子が転移魔法で突然現れた。
「あのね、母上から伝言でね、トリステスの皇太子からティリア・ティーダー侯爵令嬢に正式に婚約の申込みがあったんだってさ」
クレスがチョコレートを口に放り込む。
「でね、それの交換条件で悪の皇女はハイドランジアにはもう二度と来れないんだってさ」
クッキーをモグモグしながらゲイルがキャンディに手を伸ばす。
「え、どうしてですか?」
ソファーに座るお爺ちゃんの両脇でお菓子を口にしながら双子が続ける。
「昨日のお昼ごろ皇女がフリージア城を抜け出して離宮に行ったんだよね」
「僕らはずっと悪の皇女を見張ってたんだ。そしたらコソコソお城を抜け出していったんだよね。あの人足がめちゃくちゃ早いんだよびっくりしたよ」
「だからね、がんばって走ってついて行ったんだよ。そしたら離宮の庭に入って行っちゃってさ」
「あの人が叔父上に近寄ったら捕まえていいって母上が言ってたから僕達が捕まえたんだよ。メルに使う為の魔法を使ってグルグル巻きにして庭に置いといてね、父上と宰相と魔眼のディーンを連れてったんだ」
「そしたらディーンが『皇太子に報告します』って言ったからじゃあお兄さんも連れて来たらいいじゃんて思ったから離宮の庭へ連れてったらさ~ 何かな、分かんないけど皆が笑い出したんだよね~」
「「大人って分かんないね」」
「「「?」」」
全員が首を傾げる。
××××××××××
黒塗りの大型の馬車にはトリステスの国旗にも描かれている鷹の紋章が入っている。
誰がどう見ても、トリステスの皇族の使用する格式高い馬車であるが・・・
「俺が簀巻きにする手間が省けて良かったです」
魔眼のディーンが皇太子に薄ら笑いを向け盗賊の様な台詞を述べた。
「まさかあの後すぐに城を抜け出すとは・・・」
額に手を置いてため息をつく皇太子カイル。
彼らの向かいの座席の家庭教師兼護衛兼侍女のリンダが、
「このまま船に運ぶんですか? 」
眼鏡をクイっと指で上げながら足元の山積みになったクッションの上に転がっている皇女を冷めた目で見る。
口にスカーフで猿轡をはめたのは実の兄であるカイルである。あまりにも喚き散らすので自ら手を下す羽目になった・・・
体中に巻き付いているロープは銀色に輝いていて、魔法で練り上げた呪縛だと双子の王子達に言われたモノで、邪なモノを捕縛する為のものだと説明されて頭が更に痛くなった。
「このロープ自体は魔法なのでハイドランジアの国境を越えれば勝手に消えるそうだ。あの王子達がそう言っていたし、魔術師達もそう保証してくれた。できれば船に乗ったら解ける魔法が良かったが・・・」
「主、港ってハイドランジアの国境を越えたトコのやつに乗るんですよね・・・」
実に嫌そうにディーンが言うと
「そこまで面倒見きれんと、双子の王子達に言われたんだから仕方ないだろ」
はあ、とため息を更に吐く皇太子。
「国境越える前に、普通のロープでサクッと縛っときますか?」
リンダがサラッとそう言いながら、自分の手荷物の中から綿ロープを取り出した。
「そうだな。逃げられて俺がティリアと結婚出来なくなるのは困るし、そうするか・・・」
足元のミノムシが『ム~!』という抗議の声をあげているが、三人は全く動じない。
「そもそも帰る準備をしろと言ったそばから、離宮に忍び込んだお前が悪いんだからな。ロザリア、お前は今回の事でハイドランジアには二度と行けないどころか、トリステスから一歩も出せなくなったんだから覚悟しとけよ」
皇太子の額に青筋が立っているのは見間違いでは無いだろう。
馬車は国境にある港町へ向いて進んで行く。
『ム~!』という、姫君の声は馬車の音と共に遠ざかっていくのであった・・・
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