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転生した元社畜男子は聖女になって人生逃げ切る事を諦めません!  作者: hazuki.mikado
四章. 転生聖女と冒険者ミハイル
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再会

お読み頂きありがとうございます(_ _)


 空に浮いて(きら)めく髪を(なび)かせる少女に黒髪の冒険者が両手を広げながら呼びかけた。


 そしたら空から女の子が降ってきて。



 ホントに降ってきたように飛び降りてきて。


 その長い髪の毛がキラキラ光る天使の羽根の様に見えたんだ。


 黒い髪色の男が腕の中にスッポリ収めて愛おしそうにギュッと抱き締めた。


 そこだけ、時間の流れがゆっくりとして見えて。


 ほうっと溜息が思わず出た。


 多分俺だけじゃなくてその場にいた全員がそうだったと思う。


 抜けるような青い空に土の塊がアチコチに浮いていて、なんだか御伽話みたいだと皆が思った・・・



××××××××××



「うええぇ~ん。生きてるよおぉ~! 」



 抱きしめたまま背中をポンポンされ、顔を覗き込まれた。



「お前、俺の事、死んだと思ってたのかよ? 」


「だってボタンが。うええぇ~ 」


「ボタンって? 」


「光ってたの消えちゃったんです~ うええぇ~ 房飾りもおぉ~ちてえぐうえぇ~~ 」



 ミリアの足元にメルがやって来て、咥えていた瓶を足元に置いた。



「コレで御座います御主人様。ミリア殿は、御主人様の神聖力を感知して光っていたボタンの輝きが急に消えたので死んだと思われてしまったようです」


「は? それミリーのボタンだろ」


「はい。御主人様の血が付いていたようで、それが御主人様の神聖魔法に感応して光るのだろうと大神官様がそう仰って居られました」


「ああ、あの討伐の時のやつな。そんで光が消えて俺が死んだと勘違いして、アレか? 」


「はい。アレで御座います」



 メルとミゲルが上を見上げる。


 おびただしい数の巨大な土の塊が青い空に雲のように浮いている。



「元々土の下に閉じ込められていると考えておられましたので、取り除く予定ではあられたようですがあれ程大騒ぎになるとは・・・間の悪いことに、御主人の御守りが落ちていたのを見つけてしまわれましてコチラの話に耳を傾ける余裕が無くなられました」



 グスグスと腕の中で泣くミリアがぎゅっと手に握っている房飾りは確かにミゲルの御守りである。


 そんな彼女が愛おしくて堪らなくなりミゲルは更にグイッと抱き込むとミリアの頭の天辺に気づかれない位に軽くキスを落とす。



「スマン。心配させた」


「うええぇ~~ 」



 ソレを横目に見ながらメルは溜息をつく。



「ミリア殿。大神官様は神聖力が発動している間は光っていると仰いましたが消えたら死ぬなどと一言も仰っておられません」


「うへ? え? えぇ? 」


「勘違いで御座います」



 ヤレヤレといった様子で毛についた土を前足で払うメル。



「御主人様、お帰りなさいませ」


「・・・ああ。ただいまメル。スマン、心配掛けたな。お前にも」


「はい。ご無事で何よりで御座いました」



 後ろ足で立ち上がり恭しくお辞儀をする白い猫と、抱き合い苦笑いをする二人。



 ミゲルと一緒に埋まっていたサムとハリーは、離れた所から呆然とただただそれを見ていたのだった。



××××××××××



「で? この嬢ちゃんが、ミハイルおめえのコレか」



 ジルが本日栄えある一回目の小指を立てた。



「ああ。ミリアって言うんだ」



 今迄見たことも無いような甘い顔をした黒髪の美丈夫をニヤニヤ顔で、囲む冒険者達。



「宜しくお願いします。ミリアです」



 赤い顔のままペコリと頭を下げるミリアンヌ。



「ふわあぁ~ かんわいいぃ~ 」



 しゃがんでミリアを下から眺めて悶えているのは・・・マリンである。

 ヒョコっと頭を上げて首を傾げるとマリンとパチンと目が合うミリア。



「いいなあ~、可愛い~ ミリアちゃん」



 マリンが更に悶える。



「姉貴が変になった・・・」



 ジェーンが顔を青くするのを見て、大丈夫だ王妃殿下もコイツに(たぶら)かされてるから通常運転だ、と言ってやりたいが口を(つぐ)むミゲル。



「ま、宜しくな、嬢ちゃん」


「はい。ジルさん」



 にこおっと笑う必殺オジサンホイホイに鼻を思わず押えるジル。


 周りにいた奴らも被弾して天を仰いだ。



×××××××××××



「じゃあ、あの黒いのやっぱり虫なの?」



 マリンが嫌そうな顔で呻く。



「お話を伺う限り蜂の仲間でしょう。脇腹に卵を産み付ける行為といい、あの真っ黒い姿もそうなんですが、穴蜂の仲間だろうと思います」


「そんな魔獣初めてだな」


「ギルドに報告するか」



 全員がザワザワする。新種を発見した時は報告の義務がある。



「成虫は花の蜜なんかを餌にしてて、幼虫の時だけ肉食なんです。産卵時期になると成虫が餌になる虫を捕まえて地面の穴に引っ張り込んで眠らせて卵を産み付ける習性があるんですよ。眠ってるだけですから新鮮な餌で幼虫は育ちます」


「うへぇ、ほんとにあのままだと俺ら生きたまま食われてたって事か? 」



 実感が湧いたのか、思わず脇腹を押さえて青ざめるテリーとサム。



「多分そうだと思います」


「餌になる奴は目が覚めても逃げ出せないのか? 」


「そもそも逃げられないように親の蜂が通り道を塞ぐんですよ。で、偶に巡回して通り道の土を退けて入って来て餌に麻酔を打ってまた眠らせといてから外へ出て穴を塞ぐんです」


「「「「ひいえええぇ」」」」


「親蜂の攻撃性は低いでんですが、毒も持ってますから油断はできないでしょうね」



 絶世の美少女が頬に手を当て首を傾るが、言ってる内容は些か自分達にとっては不穏である・・・



「「嬢ちゃん! 助けてくれてありがとう!」」



 足元にサムとハリーがひれ伏してイスラム教徒みたいにミリアを拝むのであった・・・






はー、ヨカッタヨカッタ・・・

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