先見の明
お読み頂きありがとうございます(_ _)
王妃の薔薇園のお茶会の席から退出していくフォーンサイト伯爵家の天使の様な双子達。
二人は幼すぎるという理由で、ダンスは免除である。
そもそも二人一緒に王子一人とのダンスは無理である。フォークダンスならイケるかもしれないが・・・
「なあ、クロード」
「はい? 」
「残るはティリア嬢だよな」
「ええ。彼女が最終ですね」
ため息を付くアレクシス。
「彼女は王妃には向かない」
「え? 何でですか? 」
「俺もハリーもずっと違和感があるって言ってただろう? 」
「ええ。髪型の事ずっと言ってましたね」
侍従たちが片付けを始めたテーブルに頬杖を付いて考えるアレクシス。
「髪型変わっただろ? 執務室で」
「ええ。強引に私が変えましたね」
「でも、ピンと来ないんだよ」
「はあ」
「彼女よりさっきの二人の方がイメージが湧くんだ」
「まさかのロリコ・・・」
「違うぞ」
三白眼になるアレクシス第一王子を、肩をすくめながら見るクロード。
「予定通り彼女とお茶はするけど、彼女を俺は選ばないと思う」
「ほほう」
「王妃の部屋に今日はエリーが来てるんだよ・・・」
ちょっとだけ切ない顔をするアレク王子。
「はい。聞いております」
全くと言って良いくらい表情が動かないクロード。
「エリーがいい。俺」
「そうですか」
幼馴染のこの男はきっと知っていたはずだ。
白々しくこんな風に答えてるけど。
「婚約者候補筆頭にエリーをしなかった理由を聞いていいか? 」
「私にはわかりません。国内を留守にしていたのが理由かと。ただ、」
「ただ? 」
「王妃様が公爵閣下にエリーナ様を外遊に出して、『世界を見せろ』と進言したという事は知っています」
「なるほどね」
「あと、ティーダー家の当主がトリステス帝国へ外交の為の駐在中にティリア嬢があちらの大使館で暮らしていた事は把握済みです」
「ふうん。母上の思惑は? 」
「さあ。でも帝国の皇太子殿下が今回のお茶会にねじ込んで来ましたからね」
「釣りが上手く行ったって事かな」
立ち上がるアレクシス第一王子。
「ティリア・ティーダー侯爵令嬢をエスコートしに春の庭に行くか」
「はい殿下」
胸に手を当てて恭しくお辞儀をする次期宰相候補であった。
××××××××××
「「いやーん可愛すぎますわー! 」」
「「「おおおぉ! 」」」
お着替えスタッフ一同も一緒になり拍手喝采中である。
シンシア王女とエリーナ嬢チョイスの花の刺繍が入ったツーピースに着替え髪型を整えて、何というか花嫁仕様に仕立て上げられたミリアンヌである。
もう、王妃も侍女も一丸となってノリノリで仕上げてしまった。何とベールまで被せて花冠まで載せるという凝りようである。
何故かマーサが感極まって涙ぐんでハンカチで目を拭ってしまっているではないか。
いやちょっと待てまだ早い・・・
「ミリア様可愛い! 叔父様に見せられないのが残念ですわ」
部屋中の女性陣がウンウンと肯いている。
「見せびらかしたいっ! 誰か見せる相手は居ないのかしら! どうしてミゲルはいないのかしらっ! 」
やめてくださいと大声で叫びたいミリアである。
背中に冷たい汗が流れる・・・
「今度はお母様もお誘いしなくちゃ! 」
エリーナが誰のお母様を呼びたいのだろう? キャサリンママ?
「もうお家ここでいいんじゃないの? 住んじゃいなさいよ」
「あわわ、駄目です王妃様」
慌てて答えるミリアンヌ。
「侯爵邸が家なので・・・」
王妃様の言ってる事もおかしいが、ミリアの答えも微妙になんか違う気がする。
ドアをノックする音で全員が我に返る。
「母上~ 入っていい? 」
「母上ー! 報告だよう」
クレス王子とゲイル王子の可愛い声がした。
「あらあら、二人共どうしたのかしら? 」
ドアを侍女が開けると、ぴょんと飛び込んできた双子の王子達。
「あ、ミリーだ! カワイイ! 」
「あ、ミリー! お嫁さんだ! 」
「「ねえ、叔父上の? 」」
首をコテンと傾げる双子達。
全員が可愛らしさに更に悶える。
××××××××××
「あのね、母上、外務大臣のオジサンのね、えーと」
「そうだ、ティーダー卿の娘さん! 」
テーブルの上のお菓子を頬張りながらミリアンヌの両脇に座る双子。
向かい側に王妃様、シンシア王女、エリーナ嬢が紅茶を飲みながら座る。
「ハイ、ミリー。あ~ん」
小さなチョコレートをミリーに食べさせるクレス王子。
「あ~ん。美味しいです」
お菓子が大好きなミリアは『あ~ん』で簡単に口を開けるので、ご満悦のクレス王子である。
それを見て、身悶えする女性陣。
「あのね。帝国の皇太子が好きみたいだよ。ラブラブだった」
「うん。そうラブラブだった」
小さなケーキを今度はゲイル王子がミリアの口元に持ってくる。
「ハイ、ミリー。僕のもあ~んして! 」
ニコニコしながらケーキを頬張るミリアに満足のゲイル王子。
「クレスもゲイルも他には面白い事は無かったのかしら? 」
王妃様が微笑みながら問うと、
「あ、伯爵家の双子が可愛かった」
「僕達と違っておんなじ顔の双子だったね」
「アレク兄上とクロードが、ニコニコしてた。昨日は嫌そうな顔だったのにね」
王妃様は双子の報告をニコニコして聞いている。
「あ。あとね帝国の皇太子の護衛の人が魔眼だったよ」
「え」
「ミリー、魔眼知ってるの? 」
「はい」
「僕達の隠蔽魔法を見破ってたよ」
王妃が微笑みながら、扇を口に当てる。
「でも、ミスタリーレを通して魔法を発動し直したら見えなくなったみたいで、キョロキョロしてたよ」
クレスが右腕を持ち上げると、手首に銀色の腕輪をしているのが見える。
「ねー。『魔眼のディーン』だって言ってたよ」
「いい人っぽいけどね」
「ねー 優しそうだったよね」
なるほどね。
この王子様達は王妃様の優秀なスパイですね、と納得したミリアであった。
イイネありがとうございます(_ _)