三人寄らば
お読み頂きありがとうございます(_ _)
「ねえ? コッチはどう? 」
「コチラのデザインが良いですわ」
「いやーん。この色がいいですわ私! 」
王妃の部屋でキャピキャピと黄色い声がする。
「え、え~と? 」
首を傾げるミリアの目の前に、山のように次々と積み上げられてゆくドレスと装飾品の数々。
「コレコレ、このドレスを着てほしかったのよ~ 絶対に可愛いいんだから! 」
王妃様が取り出したドレスはイブニングドレスである。
大きくV字に開いたデコルテのシルクテープから、ふんわり優しいオレンジがかったピンク色のベースにアネモネ、撫子、スミレ、マーガレット、矢車草などがプリントされた布地が三段重ねのフリルで襟になっており中心にシルクの薔薇が飾られている。
肩を包む小さな肘までの袖はオーガンジーの三段重ね。
ウエストラインは腰の細さを強調するため切り替え線が下に向かって尖り、スカートは襟と同じ生地を使いふわりと三段のティアードで優しく膨らんでいる。
まさに『妖精姫』にピッタリの可憐なデザインである。
「絶対に似合うと思うのよっ!」
王妃様が鼻息荒く持ち上げる。
「こんな可愛いの、ワタクシの娘達には着せられなかったのよおおお! 」
うん。我が国の王女様方は妖艶さがウリのお嬢様達ですしね、と言うに言えないマーサは入口近くに待機したまま、ひっそりと壁に擬態している。
「あら伯母様コレも素敵ですわよ~ 」
「ですわね」
きゃっきゃと喜びながらエリーナとシンシアが引っ張り出したイブニングドレスは、ツーピースドレス。
うっすらとゴールドが掛かったような白いシルクタフタに優しい色合いの小花と蔓の刺繍が全体的に細かく施してある。
襟元はダイヤモンド型でスッキリと仕上げ、袖は半袖でフリンジを施してある。
ウエストと後ろスカートには楕円形のパネル飾りがありパネルの中心部分に同じ意匠の花のリース模様の刺繍が施されていて、縁取りは袖同様フリンジ装飾がされている。
なんとも豪華なウェディングドレスの様な一品である。
「いいわよ素敵ね! それは、王宮の縫製班に徹夜で作らせたのよっ! 」
ソレを聞いて目が点になり王宮の縫製班に想いを寄せて、意識が遠くなったのは仕方ないと思うミリアである。
靴はアレ、アクセサリーはコレと大はしゃぎの女性たち。
『ひょっとして着せ替えゴッコの為に呼ばれた? 』
マーサに向けてアイコンタクトを送ると、こっそりサムズアップしたデキる侍女の姿が目に入り、更に意識が遠くなったミリアンヌであった・・・
××××××××××
「ああ、何て可愛いのかしら」
マーサと王宮の侍女まで駆り出され、先ずは王妃様チョイスのドレスに着替えさせられる。
髪型は白い小花飾りがピッタリということでツインテールのまま宝飾品をどちゃどちゃと飾り付け出来上がった姿はまさしく『妖精姫』そのもの。
「はあ~ん。可愛すぎる~ 」
お着替えスタッフまでウットリしてため息をつきながら顔を赤らめる・・・
ふんわりと優しげなお花柄が何とも『春の庭』でお茶なんかをしてると、雰囲気がぴったりと合いそうで素敵である。
「ああああぁ~、誰かに見せびらかしたいっ!! 庭に連れて行きたいわっ! 」
王妃様がご乱心である・・・
「駄目ですわ、お母様、今はガーデンに狼の群れが屯してるんですから・・・」
「そうです、後でバレて叔父様にキレられたら怖いです! おやめ下さい! 私まだ命が惜しいです! 」
慌てて止めるシンシア王女と、エリーナ嬢。
「うう。早くミゲルのお嫁になって頂戴ね」
次は泣き落としか・・・
「あ。あうぅ・・・」
羞恥で気絶しそうなミリアンヌである。
「次! 次はワタクシ達の選んだツーピースですわね! 」
「そうですわ! 花嫁衣装みたいな仕上りにしましょう伯母様! 」
「ハッ! そうだわね! あれならウェディングドレスっぽくなるかも! いいわっ次行きましょう! 次っ! 」
王妃様の号令で、あっという間に、次のドレスの為の下準備に入るスタッフ達。勿論マーサが指揮監督である・・・
「あああぁ・・・・」
ミリアンヌの試練は続く・・・
文殊の知恵じゃなくて姦しいの方だった・・・