婚活鬱って・・・
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「本当にごめんなさい」
赤いドレスのシンシア王女はミリアの前で土下座した。
ひえええ~ と固まるミリア。
「ワタクシからも謝罪するわ。デビュタントでは本当に申し訳無い事をシンシアが・・・いいえ、王家があなた方二人に取り返しのつかない様な真似をしてしまったわ・・・」
ハンカチを目に当てウルウルしながらミリアの手を握る王妃様。
「いえ、ゼノア・ティーダー卿とマーロウ・シンフォニア卿のご理解さえ頂いているのなら私は何も王女殿下に申し上げる事はございません」
ちょっとだけ首を傾げて謝罪不要の意思を示すためのお辞儀をするミリアンヌ。
王族に謝られるのも頭を下げられるのもヤバいんじゃない?
「それに、シンシア王女様は婚活鬱だったとミゲル様にも聞いてますし・・・」
「「「コンカツウツ?」」」
その場の全員が首を傾げた。
××××××××××
「つまり、基本的には男性も女性も関係ないんですが、結婚しなくちゃ幸せになれないとか結婚する事が当たり前だとか結婚しない自分は価値がないんだとか思い詰めてしまい、生きる気力がなくなる病気ですね」
「「「なるほど! 病気! 」」」
何故か婚活鬱の解説をするミリアンヌ侯爵令嬢。
「そうなのです。病気の一種と言われていまして真面目な方ほど思い詰めやすいので、婚活鬱にかかりやすいらしいのです」
「「「なるほど」」」
「確かにシンシアは生真面目だわね」
「あと、運動不足と」
「!」
「栄養不足でもなりやすいです」
「!!」
「お肉とかお魚食べてますでしょうか?卵とかも」
「ええ、勿論」
シンシアが神妙な顔で答える。
「では、甘味は多くないですか」
「・・・ええ」
「シンシアは甘味の方が肉や魚より多く食べてるわね。おまけに運動不足気味だわ」
王妃がバラした・・・
「運動が足りてないと、魔法の発動も悪いらしいのですよ」
「!」
「魔力があっても食事や運動が足りてないとキチンと発動できないらしいのです」
「ええ~! 初耳だわよ」
エリーナがいい加減大きな目を更に見開き深い海の様な瞳が零れ落ちそうである。
「私も知らなかったんですけれど、メルちゃんに教えてもらいました」
「?」
「ああ、ミゲル様の飼ってる聖獣ですね」
「え、何それ」
と、エレーナが言うと、王妃様が
「あ、ミゲルから聞いてるわ。それとクレスとゲイルが、家来にするって追い回してるらしいわね」
王妃様が、思い出すように小首を傾げた。
「メルちゃんは生まれつき聖属性魔法を使いこなす凄い猫ちゃんなんです。可愛いくて可愛くて可愛いんですよね~ 」
ぽややーんとメルを思い出し、惚けるミリアンヌ。
そしてそのぽややーんとしているミリアンヌを見て、更に悶える王妃と王女と公爵令嬢である。
そしてそれをドア近くで見守りつつ苦笑いを必死で隠すマーサであった。
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「兎に角ですね、シンシア王女様はそのご病気だったんですから、もう閉じこもるばっかりじゃなくって治す用に頑張って下さいませ! 」
『キター! 脳筋お嬢様・・・ダメですよスポ魂は・・・』
壁際のマーサが顔には出せないので、背中に冷たい汗が流れ始める。
「毎朝ランニングしましょう! きっと元気になりますよ! 」
『ダメです! お嬢様こっち向いてマーサを見て下さいませ! 』
「朝日を浴びて身体をうごかせばお腹も減るし、筋肉もついて、夜もぐっすり眠れてお肌ツヤツヤですよ! 」
『ダメダメダメ! お嬢様~! 』
「何なら私が・・・」
『駄目ーーーー! 』
とミリアが言いかけ、マーサの焦りが最高潮に達したときに
「僭越ながら、吾輩がお役に立てるよう王女殿下をご指導させて頂くのは如何でしょうか? 」
という声と共にミリアの足元がキラキラと光り始め、貴族の礼をしたメルヘンが現れたのであった。
キタヨ、長靴をはいたぬこ。