エリーナ・グランド公爵令嬢
王家の隠し玉、エリーナちゃん登場。
ここは、王家の庭園の中でも許可なく入ることは出来ない王妃の薔薇園である。
国の内外を問わず集められた薔薇は今が丁度、満開の時期であり今見ずにいつ見るんだ? という位に咲き誇っている・・・
「美しい薔薇ですわ流石は王妃殿下の園ですわね」
そう言いながらアレク王子の前に優雅に座る女性、グランド公爵家の御令嬢エリーナは紅茶の入ったティーカップを音も立てずにソーサーに戻す。薄いブルーのシルクで仕立てたデイドレスはウェストから五枚になったフラウンスでふんわり広がっており、襟元の白いレース飾りのついた前立が上品である。
アレクシスのはとこに当たる彼女は彼のニ歳年上。今年成人で学園も卒業する。
艶のある亜麻色の髪は緩く片方に纏めて生花を飾り、海のようなブルーとグリーンの入り混じった神秘的な瞳は亜麻色の睫毛で影ができそうなくらい長く色っぽい。
実は幼い頃より面識があるためお互い気負いなく付き合える相手。しかも身分は公爵家の御令嬢なので、このパーティー会場の中では一番身分が高い御令嬢である。
「今日は一番最初がエリーナでちょっとだけ安心してるんだよね」
「あら、どうしてかしら」
「君以外の御令嬢はあまりまだ面識がないからさ」
はぁ、とため息をつく王子。
「実際さ御令嬢との話の内容とかは教師に習った一般教養的な内容以外を思い付かないんだよ。何を話していいのやら皆目見当がつかないよ・・・」
「王妃になる事を想定してるんだから、趣味とかじゃなくてさあ外交とか産業の事とか軍事面とかどう思うとかを聞いてみたらいいじゃないの。それで篩にかけて残った頭の良い子を選べばいいじゃない。何を今更言ってんのよバカじゃないの? 」
いきなり王子にタメ口をきくエリーナ。
「エリー、相変わらずだね」
「ふん。畏まったところで、どうせアレクは私以外を選ぶだろうから大丈夫よ」
眉根を寄せて、紅茶を口にするアレクシス。
「なんでさ? エリーナ以外を選ぶだろうって・・・」
「だって、アンタ昔年上は嫌いだって私に言ってたじゃない」
「そうだっけ? 」
「そうよ」
「君が年上が好きなんじゃなかったっけ? 」
「え? 」
二人して首を傾げる。
「エリーは叔父上が好きなんじゃなかったっけ? 」
「えー?覚えてないわよ。でもまあ、ミゲル叔父様に憧れない女性はいないんじゃないの? 」
「うーん。おかしいなあ、昔それで喧嘩になった覚えがあるんだよね」
腕組みをして考えるアレクシス。
「あれえ? アレクは年下の女の子が良いって言ってたと思うんだけどなあ? 」
話が聞こえないくらいに遠くにいるメイドや近衛騎士達から見ると、えらく親密そうに見えてしまうのは話の内容が全く聞こえないからである。
いや、まあ、仲は良いのだろうが・・・
「兎に角、どうせ私以外にするんならさあ時間の無駄じゃない? サッサと終わらせて、次行こうよ、次」
「エリー次って何さ? 」
「え、今日は初日だから後一組なんでしょ? 女神さまを見に行くに決まってるじゃないの! 会えるの今日だけらしいじゃない? 」
「へ? 」
「アークライド侯爵令嬢ミリアンヌ様よ! 知らないの? 今、巷では女神様って言われてんだから! 」
「ええ? 聖女じゃなくて? 」
「そうなんだけどさ、騎士達の間では女神様って呼ばれてるのよ。ホントに知らないの? ファンクラブもあるらしいのよ! アンタ情報収集が遅いわよ。しっかりしなさいよ。クロードもヌルいわねえ~ 大丈夫なのそんなんで? 」
「ええ~・・・ダンスはどうするのさ? 」
「ああ、それもあったわねえ。忘れるトコだったわ」
扇で口元を隠しつつ、ケタケタ笑うサバサバ系の公爵令嬢である。
お読み頂きありがとうございます(_ _)




