王弟殿下
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小鳥たちが美しい庭園の灌木の枝で囀る中、王宮メイドや侍従達が一日の始まりの支度を始める、清々しい朝である。
「うわああああー」
突然、王宮の住居区画で男の叫び声が聞こえてくる。
声に驚いた小鳥たちが慌てて枝から飛び立ち、城務めの者たちが驚いて手を止める。
白髪交じりのダンディーな執事が後ろに護衛の近衛をニ人連れ、先程叫び声が聞こえてきた部屋のドアを静かにノックする・・・返事がない。
「失礼致します」
そっと、そして油断なく目を凝らしながらドアを開く。
『質実剛健』この言葉が、ぴったりの落ち着いた調度品と、窓に掛かる重厚なカーテンはピッタリと閉じられており、人が五人位余裕で寝られそうな、どっしりとした天蓋付きのベッドが見える。
「ミゲル様? 」
部屋の主に声をかけるが、返事がない。
スルッと部屋に入り込み油断なく部屋中を見回すが、特に異変はなさそうである。
執事は、出入り口に護衛を手で指図をし、待機させたまま大きなベッドに近づくき
「ミゲル様、朝でございます」
と、もう一度声をかけてみる。
「ああ、起きてる」
返事があった事に対してホッとしたことを顔には出さずに安堵する執事。
「セバス、済まないが腰が抜けて動けないのだ。」
「・・・失礼致します」
ベッドの横に竚む執事。
「・・・」
「・・・」
何故か無言の二人。
真っ黒な長い髪の毛にラピスブルーの瞳。
スッとした鼻筋と高い鼻梁に整った形の唇。
ガッシリとまではいかないがまだまだ発展途上の体躯は少年から青年へと変貌を遂げる一歩手前の危うい色気を醸し出しており、社交界では男女を問わず、中々の人気者である。
シルクのパジャマは寝汗でぐっしょりと肌にへばり付き、実に気持ち悪そうである。
「セバスチャン」
「はい殿下」
「俺は誰だ? 」
「・・・ミゲル様でございます」
「立場っつーか、役職って何だ」
「役職・・・で御座いますか」
「おう。それな」
「お立場としては現国王陛下の王弟殿下、でございますが・・・」
「今俺は何才だ? 」
「十六歳で御座います」
「・・・まだ騎士団に入ったばっかりか~」
「殿下? いかが致されました」
「あ~。セバスチャン、俺・・・」
「はい」
「記憶がぶっ飛んだわ」
「はい? 」
「あ~。つまりだ。昔の事を綺麗サッパリ忘れちゃったって感じだな」
「・・・」
「・・・」
おもむろにベットサイドに置いてあるベルに手を延ばし『チリリン』と音をさせるセバスチャン。
入り口に立っていた近衛が返事をし、部屋に入って来ると
「至急侍医をこちらへ」
「はっ」
返事と共に片方の近衛騎士が退室していく。
もう一人は入口付近に待機し、セバスチャンとミゲルはため息をついた。
王弟殿下?登場回!
執事はやっぱりセバスチャン一択ですよね~♡←ココ大事