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第1部 8話 ゲームマスターと少女の因縁

2021/05/17 改稿

◆ニューズ・オンライン ギニーデン南部 農園地帯◆



 カスミは嫌な予感に襲われていた。


 ニューズ・オンラインの現在の季節は夏。それにもかかわらず、明け方から降りしきる雪。こういった異常気象はニューズ・オンラインでは無いと考えていたが、その予想は大きく裏切られた形となった。カスミの知る限りこのような異常気象は発生したことがなく、他のプレイヤーの認識ともおそらく齟齬(そご)はないだろう。


 ニューズ・オンラインでは、プレイヤーが農園を所有することができ、農園では様々な農作物を育てることができる。


 単純に薬草や装備品の素材を、自分自身のために使用する目的で育てる者もいれば、農作物の売買により定期的な収入を得る者もいる。このため、投資的な位置づけで大枚をはたいてでも農園を購入し、農作物を育成するプレイヤーは多い。


 農作物はレア度により育成難易度が異なり、レア度が高ければ高いほどきめ細やかな管理が必要となる。天候、気温、湿度、水・肥料の量など管理すべきパラメータは山ほどある。


 そんな中、異常気象でも発生すれば何が起きるか想像することは容易(たやす)い。汗水たらしながら手間暇かけて育ててきた農作物はしおれて枯れ、投資は回収できずに大損害である。


 カスミは今のアバターでは農園を所有していないものの、昔のアバターでは所有していたため、農園の管理にかかる労力の際限なさには身に覚えがあった。


 ギニーデンが見えてくると、道の両側には他のプレイヤーが管理しているらしき農園があった。カスミは農園の柵を飛び越え、畑の状態を確認する。土の上に深々と積み重なる雪をかき分け、茎の部分でポキッと折れた白い花の姿を発見する。


「やっぱり……」


 花は雪の冷害により土の上に這いつくばるようにしてしぼんでいた。


「許せない……」


 プレイヤーの努力ではどうにもならない不条理。GMの横暴、もしくはゲームのバグとしか考えられなかった。


 カスミは今回の出来事に既視感を覚え、歯を食いしばる。数日前にアバターを凍結されたのも、完全にGMの暴挙であった。いつものようににログインしようとしたら、アバターが存在しないという突然の通知。GMの一方的な凍結処置であり反論する機会すらも与えられなかった。


 アバターという皆の尊敬を集める自分の分身がなくなったことによる喪失感、そしてニューズ・オンラインという自分の「居場所」が奪われたのだという無念さは(こら)えることのできない痛みとなりカスミを襲った。


 横たわる花を見ると、自分の姿と重なり胸が痛む。


「どうした?」


 カスミの異常に気付いたヤジマが声をかけてくる。


「ここ、カスミの農園? 泣くほどのことなのか?」


 カスミは頬を涙が伝っていることに気付き、腕で涙を拭う。


「私、GMが許せない!」

「――え!?」


 驚きの声とともにヤジマの表情が強張り、絶句する。カスミはヤジマの異変を気にも留めずに続ける。


「オタゴ王宮へ行こう!」

「な、なんで!?」

「GMコールする! 今度こそ私の”居場所”に手は出させないんだから!」


 カスミはヤジマの手を引き、街の中心に位置するオタゴ王宮を目指して走り出した。


ここまで読了いただきありがとうございます!

ここからクライマックス入ります!

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