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第3部 9話 ゲームマスターと花形プレイヤーの過去2

ヤジマの前任者登場!!


2021/06/18 二年前→一年九か月前に修正

◆ニューズ・オンライン ギニーデン オタゴ王宮前 一年九か月前◆



 ヒイロはキングスタウンにリスポーンした後、すぐにギニーデンへと向かった。オタゴ王宮にてGMコールを行い、戦闘機能の追加によって発生した弊害をGMに伝えたかったのだ。


 しかし、オタゴ王宮までの道のりは困難を極めた。ニューズ・オンラインのサービス開始当初からプレイしていたヒイロのステータスは、プレイヤーの中ではおそらく高い方だろう。しかしそれでも、キングスタウン周辺でモンスターにまともに太刀打ちできる程の強さはなかった。


 アイテムボックスに入っている装備は初期装備。攻撃スキルに至っては未習得であり、ただでさえ慣れていない戦闘を行うには敷居が高すぎた。


 モンスターとの戦闘を極力避けながら歩みを進めるものの、全ての戦闘は回避できない。リスポーンを繰り返してはキングスタウンに幾度となく出戻ってしまう。


 そんな状況を顧みると各地に散らばるプレイヤーたちへの負担は計り知れない。プレイヤーたちもヒイロと同じく後にも先にも進めない状態に陥り、詰みかけていることが容易に想像できた。おそらく運営側は、このニューズ・オンラインの悲惨な状況に気づいていないのではないか。


――誰かがこのことをGMに伝えなければ。


 ヒイロはプレイヤー達の悲痛な想いを代弁したい一心で、諦めずにギニーデンを根気強く目指した。





 どれほど時間がたっただろうか。ヒイロは満身創痍の中、やっとの思いでギニーデンまで辿り着いた。感覚のない足に活を入れ、オタゴ王宮の前までなんとかその身を引きずっていく。そして早速GMコールを開始する――が、いくら繰り返せど肝心のGMが現れない。


 なけなしの気力をふり絞ってGMと連呼し続けるものの、時間だけが無情に過ぎていく。GMコールを開始して三時間ほど経過しただろうか。ついにGMがその姿を現した。GMは漆黒のローブで全身を覆い、頭にはフードをすっぽりと被っており、GMの顔をうかがい知ることはできなかった。GMはコンソールを操作して、ヒイロの情報について確認しているようだった。コンソールから目を離さず、ヒイロの方を見ようともしなかった。


「ヒイロ様……ですね? いかがなさいましたか?」


 鉄のようにひんやりとした無機質な男性の声が響いた。


「GMさん! 今ニューズ・オンラインが大変なことになっています!」

「と、言いますと?」


 GMの声は抑揚なく、冷たいものだった。ヒイロはGMの冷ややかな態度に飲まれないよう、大きな声を張り上げる。


「街の外にモンスターが(あふ)れかえり、既存のプレイヤーは街に閉じ込められている状態です! 今の状態では、プレイヤーたちが街の外へ出てゲームを続けることは不可能です!」

「つまり、ヒイロ様のご要求は何でしょうか?」

「戦闘機能を削除してください! 難しいようであれば、モンスターの数を少なくするという方法でもかまいません! 私は今まで通り、新たな土地を開拓したり、隠れ家を建てたり、そういった生産系のニューズ・オンラインが好きなんです!」


 GMは少し間をおき、コンソールを眺めながら話し始める。


「……ヒイロ様のご要求は理解いたしました」

「じゃあ――」

「申し訳ございませんがわたくし共といたしましてはヒイロ様のご要求にお応えできかねます。戦闘機能の追加については、事前告知を行っていましたので、各プレイヤー様の事前準備状況につきましては責任を負いかねます。さらに、弊社には戦闘機能の追加を望むユーザ様からの声が多く寄せられていました。今回の戦闘機能追加は、ユーザ様の声に答えようとわたくし共にて鋭意努力した結果になります。何卒ご容赦(ようしゃ)くださいますよう、よろしくお願いいたします」


 ヒイロは絶句した。ヒイロの方へは一切歩み寄りのないゼロ回答だった。自然と口調が乱暴になっていく。


「それでは、現在街に閉じ込められているプレイヤーたちはどうすればいいんですか!? それに、戦闘機能追加の事前告知なんて見た覚えがありませんよ!?」

「申し訳ございませんが、わたくし共といたしましては責任を負いかねます。事前告知についてですが、弊社HP上にて告知を行っております」


 ヒイロはGMの言い分に呆れてしまった。


「何故ゲーム内ではなく、ゲーム外で告知を行うんだ!? そんなの気づきようがないじゃないか!」

「ご質問いただいた内容についてはお答え致しましたので、これにて失礼いたします」


 GMが(きびす)を返し、オタゴ王宮の中へ戻ろうとする。


「おい! 待てよ!」


 ヒイロはカッとなり、GMの肩を(つか)んだ。


「ヒイロ様。GMへの運営業務妨害を検知しました。規約に則り、アバターを三日間凍結いたします。再度、運営業務妨害をいたしますと、無期限でのアバター凍結となりますのでご注意ください」


 次の瞬間、ヒイロの眼前は暗転し、強制的にログアウトさせられた。





 ヒイロの予想通り、既存プレイヤーたちは身動きの取れない状況に陥り、その多くがニューズ・オンラインから離れていった。同時に、戦闘機能に()かれて加入してくるプレイヤーもいたため、プレイヤーの総数としてはそこまで変わることはなかった。


 運営側としてはプレイヤーの総数が減らなければいいのかもしれないが、ヒイロとしては本当に悔しい出来事であった。ニューズ・オンラインが好きだったたくさんの仲間たちが去っていった。


 毎日農作物の生育状況を畑にチェックしにいっていた青年が去った。


 アクセサリー作りのスキルに極振りして人間国宝とあだ名をつけられていたドワーフも去った。


 ニューズ・オンラインで味覚機能が実装されることを夢見て料理スキルを極めようと努力していた女の子も去っていった。


 GMと会うことはできたものの、何も変えることはできなかった。仲間たちを引き留めることができなかった自分自身の無力さに嫌気がさした。


 アバター凍結の一件以来、ヒイロは秘密の隠れ家作りを一旦凍結し、自身のレベル上げに専念した。そして、アバターのレベルだけでなく、アバター操縦者としての腕も磨き上げることに務めた。


 その結果、ヒイロの名はニューズ・オンライン中に(とどろ)いていった。


 しかし、ヒイロにとっては「強さ」はあくまでも「手段」であり、強くなること自体には興味がなかった。今まで通り、ニューズ・オンラインで好きなことをしたい。ただそれだけだった。


 ヒイロはギルド”緋龍の翼”を設立し、ギルドメンバーそれぞれが好きなことをできるように後押しすることにした。


 その結果、シーツーには街ができ、商店街ができ、隠れ家であった“緋龍巣”の使い方も多様化していった。


 ”緋龍の翼”がトップギルドとして、その名がニューズ・オンライン全体に知れ渡るのには、そう時間はかからなかった。


ここまで読了いただきありがとうございます!

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