表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/98

第2部 12話 ゲームマスターと情熱の正体

ニューズ・オンラインのシステム構成は以下のようになってます。



機能、データ(ニューズ・オンライン専用)

――――――――――――――――――――――――――――――――

ミドルウェア(ニューズ・オンライン専用)

――――――――――――――――――――――――――――――――

VRMMO共通プラットフォーム(OS)

――――――――――――――――――――――――――――――――

機器 (サーバ)



サーバの上にOSが乗っており、OSの上にミドルウェアが乗っており、ミドルウェアの上に機能・データが乗っているという階層構造です。

サーバとOSについては、各システム共通ですが、ミドルウェア以上の階層では各システム毎に準備をしています。


…という設定の話でした!(話の中では文章で書いてますが、分かりづらいと思ったので…)


2021/05/17 改稿

◆縦浜近郊 RXシステムズ本社ビル チーム・ニューズオフィス◆



 バレンタイン・オンラインからログアウト後、山田と成瀬はニューズ・オンラインのオフィスに直行した。オフィスに着くとすぐに、メンバーを集め、バレンタイン・オンラインから機器を譲り受け、グラフィックの差し替えを行う計画について説明を行った。


「バレンタイン・オンラインから譲ってもらえる機器は古いですが、まだまだ使えます。その間にユーザを増やしてお金稼いで、機器を買い替えましょう!」


 スピーカー越しの辻村は山田が説明している間ずっと黙っていた。表情を見ることができないため、山田と成瀬には緊張が走る。辻村が話し始めたのは十秒ほど静粛に包まれた後だった。


「……成瀬くん、譲り受ける機器は後どのくらい保つの?」

「5年物なので、騙し騙し使って一年程度かと」

「それならニューズ・オンラインの延命可否が決まってから買い替えても遅くないか……。いつやる?」


 辻村の言葉を聞き、山田と成瀬は顔を見合わせて大きく(うなず)く。辻村がやる気になってくれたことは大きい。ついに、バレンタイン・オンラインのサービス終了回避に一歩前進した気さえする。成瀬が言葉を選びながら慎重に辻村の質問に答える。


「一週間後を見込んでます」

「遅い! もっと早く出来ないの?」

「難しいですね……。機器をバレンタイン・オンラインのラックからニューズ・オンラインのラックへ移動する必要があります。さらに、機器にインストールされているのはバレンタイン・オンラインのミドルウェアなので、機器への再インストールにも時間がかかります」


 辻村は熟考しているのか、スピーカーからはザーという小さな雑音しか聞こえない。山田は固唾(かたず)を呑んで辻村の返答を待つ。少しして辻村は(つぶや)くように言った。


「ヒモになろう」

「え、ヒモ? ですか?」


 辻村の意図を()み取ることが出来なかったのか、成瀬は聞き返す。


「プライドを捨ててヒモになろう。機器は移動せず、ミドルウェアもバレンタイン・オンラインのまま使おう」

「え? それってつまり……。バレンタイン・オンライン配下の子システムになるってことですか!?」

「その通り! ニューズ・オンラインのデータと機能をプラグイン化してバレンタイン・オンラインに突っ込もう! 子システムとして稼働させても、バレンタイン・オンラインとのパスを作らなければ、独立性は保てる!」


 開いた口が塞がらないとはこのことだ。凄まじい発想だった。


 通常、VRMMOは専用に調達した機器上で動作している。バレンタイン・オンラインやニューズ・オンラインも例外ではない。機器には、VRMMO固有のミドルウェアをインストールした上で、VRMMO固有のデータや機能を突っ込むことで初めて一つのシステムとして動作する。


 辻村のアイディアは、バレンタイン・オンラインのミドルウェアがインストールされた機器に、ニューズ・オンラインのデータや機能を突っ込んで相乗りすること。これを「ヒモになろう」と表現したのだ。


 機器を家に例えてみよう。現在はバレンタイン・オンラインもニューズ・オンラインも自宅を持っているとする。バレンタイン・オンラインの自宅には使われていない部屋があり、そこにニューズ・オンラインが家具一式持って引っ越そうというイメージだ。結果としてニューズ・オンラインは、バレンタイン・オンラインの部屋を間借りしている状態となる。それにも関わらず、ニューズ・オンラインは家賃を払わず、出入り口も塞いで引きこもりの状態。まさしく、「ヒモ」という表現が相応しい状況だろう。


「確かに辻村さんの案であれば、明日にでも実行できそうですが……。バレンタイン・オンラインとしてはお荷物になるだけなので、チーム・バレンタインが首を縦に振らないでしょう」

「チーム・バレンタインには少しばかり貸しがあるから、私が交渉します」


 一度決断した後の辻村の推進力は目を見張るものがある。小気味よくメンバーに次々と指示を出していく。


「鎌田さん、新しいグラフィック用意するのにどのくらいかかる?」

「既に準備万端ですよ。いつでもいけます」


 鎌田が待ってましたと言わんばかりにニヤリとする。


「流石、鎌田さん! 長谷部くん、ニューズ・オンラインのプラグイン化、今日中にお願い!」

「いやいや! 流石に無茶ぶり――」

「はい、よろしく! 山田くんに手伝ってもらって!」


 最早、無双状態の辻村を止めることはできない。長谷部は呆気なく引き下がり、「グワッ」とおかしな奇声を発しながら自席に戻っていく。


「成瀬くんは“ヒモ化”の手順確認と、この件に環さんを引きずり込んで!」

「わかりました!」


 成瀬は調子よく敬礼し、(きびす)を返す。


「山田くんはユーザへのシステムアップデート予告をして。移行中でもサービスを止めることは許されないけど、動作遅延が発生する可能性はある。動作遅延についてはユーザに周知しておきなさい!」

「了解です!」


「名付けてニューズ・オンライン“ヒモ化作戦”! 開始!」


 辻村は声高らかに宣言した。





 次の日、作戦決行日の明朝である。山田は出社するとカフェテリア・オアシスへ向かった。まだ時間は七時前なので始業時間までには時間がかなりある。そのため、店内には人の気配はなく、音を出すことがはばかられるような静けさがあった。


 昨日は結局「ヒモ化作戦」の準備のため、22時頃まで作業をしていた。帰宅したら23時過ぎ。すぐに寝て、起きたらすぐ出社というかなりハードなスケジュールが続いている。本日九時より「ヒモ化作戦」を決行予定であり、その前にGMとしてニューズ・オンラインの状況を確認しておきたかった。


 山田は定位置であるカウンターの隅っこに腰掛けて、PCを広げる。


「山田ふん」


 背後から環の声がかかり、振り向いた。環がスリーブ付きのコーヒー片手にチューブ容器を(くわ)えて手を振っていた。流石に朝一番から羊羹(ようかん)という選択肢がないことにホッとする。しかし、よくよく見るとチューブ容器には「飲むヨーかん」という恐ろしい文言が記載されていた。濃厚なあんこの味を想像して吐き気を催す。


「辻村チーム長の説得、うまくいったみたいだねえ。成瀬くんから今日の作業への参加依頼があったから、仕事の速さに驚いたよ」

「環さんのお陰ですよ。今日の作業にも協力いただけるようで、本当にありがとうございます」


 山田は頭を下げる。環は「いいのいいの」と言って手をヒラヒラと動かした。


「でも、辻村チーム長は大胆なことを考えるよねえ。バレンタイン・オンラインへニューズ・オンラインを相乗りさせるなんて……」

「俺も驚きました……。しかもバレンタイン・オンラインのチーム長から相乗り案の即時OKが出るなんて……」

「それには私も驚いたなあ。昨日帰るときにうちのチーム長の様子を見たら青い顔をしてたよ」

「辻村さん何をしたんでしょうね……」


 目的のためなら手段を選ばない辻村のことである。何か弱みでも握っているのだろうか。あまり深く探らないほうが身のためのように思えてくる。


 世間話を終えたところで、環にどうしても聞いておきたかった質問を口にする。


「環さんは何で俺のことを助けてくれるんですか?」


 唐突にも聞いてしまった。昨日は山田をデータセンターに連れて行ってくれ、余っている機器を譲ってくれた。さらにグラフィックの差し替えを行うために、成瀬の説得まで手伝ってくれたのだ。何か環にとってメリットがなければ普通は協力してはくれないだろう。環は少し驚いた表情を見せたものの、抑揚のない声で答える。


「最初は山田くんがカウンターで机叩いてるのを見て、何を悩んでるのか興味があっただけだったんだけどねえ。気づいたらおせっかい焼いてたなあ。何でだと思う?」


 「俺のこと好きだからですか?」と思わず聞いてしまいたかった。しかし、会社の先輩、ましてやこれだけお世話になっている人に向かってそんな失礼なことを聞けるはずもない。


「わ、わからないです……」


 山田は自らの考えが透けて見えてしまわないかドギマギしながら答えた。環はそんな山田を見て(かす)かに口角を上げた。


「山田くんの情熱が伝染したんだよ。私は山田くんから見え隠れする情熱に当てられて協力した。何で山田くんからはそんな情熱が(あふ)れるんだろうね?」


 山田自身、情熱と言われてもピンとくるものはなかった。思いつくのは辻村から与えられた使命だけである。


「ニューズ・オンラインのサービス終了を回避するためですかね?」


 環は首を横に振る。


「そんな後ろ向きな考えに情熱は生まれないよ。サービス終了を回避するのは誰のためなの?」

「ニューズ・オンラインのプレイヤー達のため……」

「そう。そこに山田くんの情熱が生まれてくるヒントがあると思うな……」


 環はそう言い終わるとくるりと後ろを向いた。


「そろそろ行こう。”ヒモ化作戦”が始まるよ」


 山田も釣られて席を立つ。


――ニューズ・オンラインのプレイヤー達のため


 自分で言った言葉を反芻(はんすう)する。カスミやカンナバル、ゴエモンたちの姿が目に浮かんだ。山田は彼らのために何ができているのだろうか。世話になりっぱなしで、何もできていない気がする。さらに、環に言わせてみれば、彼らのお陰で山田の中に情熱が生まれているというのか。あまり実感がわかなかった。


 カウンター正面の窓には、ビルの合間を車が行き交う、いつも通りの景色が映っていたが、どこかいつもと違って見えた。


ヒモ化作戦が無事に終われば以下構成になります。


機能、データ(ニューズ・オンライン、バレンタイン・オンライン混在)

――――――――――――――――――――――――――――――――

ミドルウェア(バレンタイン・オンライン専用)

――――――――――――――――――――――――――――――――

VRMMO共通プラットフォーム(OS)

――――――――――――――――――――――――――――――――

機器 (サーバ)

※この構成は全てフィクションです


ここまで読了いただき、ありがとうございました!

次話8/20投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ