第1部 プロローグ ゲームマスターはなかなか姿を現さない
筆者がITエンジニアなので、ITエンジニアあるあるや、ITエンジニアの難しさ・無力感などを表現できたらなと思ってます。まだまだ書きたいことたくさんあるので、応援いただけると嬉しいです。面白い、面白くない、誤字脱字などなんでもいいので是非コメントください!
2021/05/17 改稿
◆ニューズ・オンライン ギニーデン オタゴ王宮前◆
辺りは一面の雪。オタゴ王宮前の大通りは白色の絨毯さながらに、雪が地面を覆い尽くしている。そして、今も尚降りしきる大粒の雪が、絨毯の厚みを増していく。そんな寒空の中、ニューズ・オンラインのプレイヤーたちは、王宮前に群がり、剣や杖を振りかざしながら声を荒げている。
『GMは早く出てこい!!』
『GMは損害を補償しろ!!』
「GM」とは、VRMMORPG「ニューズ・オンライン」のゲームマスターのことである。ゲームマスターはゲームで発生する全ての事象を司り、ゲームをコントロールする。ゲーム内では神に等しい存在と言っても過言ではない。そんな神に向かって、プレイヤーたちは乱暴な物言いで姿を現せと言う。
プレイヤーの群衆に巻き込まれる形で、ヤジマは愕然としながらオタゴ王宮の前に佇んでいた。
そもそも何故こんな事になってしまったのだろうか。何故プレイヤーたちと一緒にGMへ反旗を翻すことになってしまったのか。
オタゴ王宮の巨大な時計台をぼーっと見上げながら、ぶつくさと呟いていると、隣りにいた少女がヤジマの顔を覗き込むようにして話しかけてくる。
「ヤジマ、何してんの?」
少女の長いまつ毛に一瞬見とれた後、顔と顔の距離が近いことに気づき、びっくりして距離を取る。端正な顔立ちで見つめられると、こんな状況でもドキッとしてしまう。
「い、いや、今日用事があるから、早くログアウトしないとなーと思って……」
「こんなときに落ちようっていうの? GMコールするときは、一人でも多いほうがいいんだから逃さないわよ!」
少女はヤジマの腕を強引に引き寄せた。オタゴ王宮はGMの住まいであり、GMコールする場合は王宮まで出向くことになっている。
「GMコールできたら返してあげるから、それまで一緒に叫びなさい! いっせーのーせ、GM出てこい!!」
少女の掛け声にげんなりしながら、無気力にその声に続く。
「GM出てこーい」
残念ながらGMが出てこないことをヤジマは知っている。なぜならここにいるヤジマこそ、なかなか姿を現さないGM本人だからである。