第四十三話 マックス
「まずは、いくつか役割分担をしよう」
哲郎が提案すると、ロレンツォとハンスは頷いた。
「ええ、村人達を連れて行けば何とかなるでしょう」
「でも、俺達だけで足りるか?」
ハンスが疑問を口にする。
「どういうことだ?」
「今後、俺達だけでは村を動かして行くのに数が足りなくなることがあるかも知れないだろ」
「それはそうだな」
「だから、村人達をもっと積極的に村の運営に参加させるべきだ」
ハンスはそう言った。しかしロレンツォがもっともらしい反論をした。
「でも、私達のなかで、声の掛けやすい、村人達のなかでも比較的慕われているような村人って知り合いにいますかね?」
「「……」」
哲郎とハンスは黙り込んだ。
「……確かに、いないなぁ……」
ハンスが言う。
「そう、いないんですよ」
ロレンツォが答えた。
「……いや、一人だけいる」
哲郎が何かを思い出したように顔を上げた。ロレンツォとハンスは振り返る。
「誰だ?」
「誰ですか?」
「それは……あの筋肉ムキムキの人だ。名前は忘れたけど」
「おう、シノザキとやらだったな。元気してるか? いや、今は村長さんだから元気してますか、だな」
筋肉ムキムキの村人はそう朗らかに言った。哲郎は元気だよ、と答えて、
「突然の話で申し訳ないんだが、この村の運営に関わる気はないか?」
と問うた。
「村の運営? そりゃまたどういう訳で?」
村人は驚いたように言った。哲郎は、
「今の村を運営しているのがロレンツォとハンス、そして僕だっていうのは知っているよな?」
と確認した。
「ああ、三人のお方の名前はよく聞く」
「そこで、だ。三人だけだと将来的には足りなくなる。だから、村人から一番信頼されている人を新たに選ぶべきだ、と考えたんだ」
「え、でもなぜ俺が?」
「だから、村人から一番信頼されているからだ」
「で、でも……」
「僕の知る限り、一番信頼されているのはあんただ」
「本当に良いのか?」
「ああ。むしろ、頼む」
哲郎はそう言うと、村人に向かって手を合わせた。
「分かった、あんたがそう言うのならやる」
村人はついに折れた。
「ありがとう、よろしく頼むよ」
「とんでもねぇ」
「あと、名前を教えてくれ」
「マキシミリアンさ」
マキシミリアンか、と哲郎は噛み締めるように言った。ハンスの父親と同じ名前だ。
「マックスと呼んでくれ」
「分かった、マックス。まずはハンス達の所に来てくれ」
哲郎はそう言うと、マックスとともに歩き出した。





