第四十二話 建国宣言
大変遅れました。
「兄貴、固まってるぞ!」
朝起きたハンスは、家の裏手にまわると叫んだ。
「ああ、そうか。上手く行って良かった」
「ああ、そうかって……これは大変なことですよ、テツロウさん」
横から覗き込んだロレンツォも言った。
「見ての通り、これは非常に堅い。この町の建材に使えると思うんだが」
「確かに、な」
哲郎の提案にハンスも深く頷く。
ローマン・コンクリートというのは、地球での古代ローマにおいて使われていたとされる建材である。現代日本で使われているコンクリートは五十年から百年程で寿命が尽きるが、ローマン・コンクリートは千年以上ももつのである。
「これを使えば、頑丈な家が建てられるはずだ」
「……でも、そんなに堅い建物が本当に必要なんでしょうか?」
ロレンツォが心配そうに問うた。
「確かに、そんなに頑丈でなくとも良いかも知れない。だけど、僕はここに国を作ることも考えているんだ」
「国ですって!?」
「兄貴……」
「ここは、はっきり言って閉鎖的だ。少なくとも今は外部との交流手段は全くない。ならば、もう"国"と呼んでも構わないんじゃないか?」
「でも、ここは一応帝国の領内……ということになると思うぞ」
「それは、また帝国と何らかの交流があった時に取り決めすればいいじゃないか」
「確かに、筋は通っていますね」とロレンツォが言った。
「でも……」
「それに、僕たちは"強く"なければならないんだ。将来帝国との交流なりがあった時に、舐められちゃ困るだろ」
「分かったよ兄貴、確かに兄貴の考えは普通じゃないけどそんなに言うなら手伝うさ」
最終的にはハンスが折れた。
そして、哲郎は村人たちを前にして話していた。
「みんなに話があるんだ」
哲郎がそう切り出すと、呼ばれた村人達はざわついた。
「少し前に、"金"が川から見つかったが、実は金ではなかったということがあったな?」
村人達は頷いた。レンブルクから逃げて来た人たちもそれは聞いていたようで、そうらしいな、などと言っていた。
「あの"金"は、金でこそないが立派な金属だ」
金属と言われても彼らにはピンとこないようだったが、哲郎は続けた。
「あれを使って、お金を造るんだ」
「え、偽造にならないのか!?」
誰かが声を出した。哲郎は答えた。
「ああ、ならない。なぜなら新たな通貨を作るからな」
新たな通貨を作る。一体どういうなのか、村人達は首を傾げた。
「ここで話は変わるが、みんなこの村を"強く"したくないか?」
哲郎はハンスに対して言ったことと同じ内容を村人達にも言った。
村人達はもちろん強く頷く。元から村にいた者達は尚更だ。
「だから、ここに国を作るんだ」
一瞬の沈黙があった後、村人達はざわめき始めた。哲郎はパンパンと手を叩いてそれを静まらせた。
「静かに! 国を作るというのは、無理だと思うかも知れない。しかし、実際のところは今の村をもっと強くして、他の国に舐められないようにするということだ」
哲郎は続けて皆に問う。
「あのレンブルクの街並みをもう一度、この村で再現しないか?」
これには元レンブルク市民たちのほうが強く頷いた――もっとも、逆に昔からの村人達はキョトンとしていたが。
「この村を、もっと強くしよう!」
哲郎が拳を突き上げると、村人達もそれに続いた。
「「「オオォー!!!」」」
かくして、ここに新たに一つの国家が誕生したのであった。





