第四話 探索
哲郎が目を覚ますと、周りには死体が転がっていた。
いくらなんでも酷すぎる。転移する、とだけテオスに言われて転移した先が死体置き場だとは……
と、そこまで考えて哲郎は思い出した。確か哲郎は戦場にいたはずだ。とするとテオスは哲郎を戦場に転移させ、そこで気を失っていた哲郎は死体として他の死体と一緒にされていたのか……。どちらにしろ許されない奴だ。
哲郎は立ち上がった。自分の身体を見下ろすと、くたびれた革の鎧を着ている。周りの死体も同様だ。さらにあたりを見回すと死体がうず高く積み上げてあり、下のほうには薪も見えた。危うく燃やされるところだった、と考えて哲郎は少しひやりとした。
薪のさらに向こうには家が見えた。ここは広場に違いない。よく見るとただの広場ではなく処刑場でもあるようだ。人が皆寝静まった月夜の街に、猫のような鳴き声がかすかに響く。処刑場の地面はよくみると土で、石ですら舗装されていなかった。哲郎は死体の上にいつまでもいるのもどうかと思って、死体の山から降り始めた。夜空を見上げると満月が沈みかけていた。いや、満月ではなく上弦の月と満月のちょうど中間の月だ。となると今は午前2時か3時くらいか――哲郎はそう予測した。
哲郎はひとまず処刑場を離れて歩き始めた。
しばらく歩いていて、気付いたことがある。この街――というよりは村――は非常に小さいのである。家が数十軒も無いくらいで、その他は畑、それと教会、橋があり、橋の先には道が延びておりその先には大きい城のようなものがあるだけである。その他には外に繋がる道などなく、ただ森があるのみである。哲郎はこの時点で逃亡という手はない事を悟った。
仕方がないので、橋を渡ってみる。その先には城があった。城へと続く道のそばにもやはり畑がある。そこからも延びる道があり、なんと森に続いている。哲郎はひとまずそこまで行ってみた。
しかし、哲郎はそこから逃げることは諦めた。森の中の道はもはや道ではなく、わずかに以前道であった事を示す木と木の間の空間があるのみである。哲郎は仕方がないので、また橋を渡って村に戻った。夜が明けてきた。例の城の背後から光が差していることから、あちらが東に違いない。よく見ると橋のたもとには水車小屋がある。小麦粉をここで作るのだろうか。哲郎はそう思いながら村の処刑場へと急いだ。その時だ。
「死体が歩いとる!!!」
突然声が聞こえた。