第二十八話 収穫祭
投稿が遅れました、すみません。
哲郎は回る水車を満足げに眺めていた。一週間程掛けて作った堰を水が勢いよく流れている。水車はそれによってゴトゴトと回っている。改造前より、目で見て分かる程には威力は増していた。
哲郎が「やっと出来ました」と水車小屋の中に入って行くと、中では粉挽きが相変わらず薄いビールを飲んでいた。こちらに顔を向けると「ほう」とだけ言ったが、やがて立ち上がった。彼は出て行くと水車を見、そして言った。
「……これは凄いな」
その時哲郎はこちらを振り返った粉挽きを見て、初めてその眼にわずかながらも尊敬の念が含まれていることを感じ取った。彼はすぐに向こうを向いたが、哲郎の脳にはしっかりとその光景が焼き付いていた。
彼は「ロタールに言わんでも良いのか」と哲郎に問うた。哲郎は驚いていたが、それを聞いて立ち上がり、村長の所へと向かった。
ロタール村長は果たしてそれを見て驚いた。彼は哲郎を褒め称えた。哲郎は照れながら「大したことはないですよ」とはにかんだ。
哲郎はその他にも色々なことを成し遂げた。哲郎はまるで自分の「国」を作っているかのようだった。例えば、彼は洗濯板をもたらしたのである。
哲郎はある日、他の村人達と狩りをしていた時に血で服を汚してしまった。彼は帰って洗濯をしようと考えたが、よく考えてみると村ではほぼ服を洗わないのである。
哲郎はそこで洗濯しようとした。洗剤は無いが、灰汁か石鹸代わりになる。後は洗濯板が必要だ。
哲郎は鋸で木切れを大まかな形に整えた。ささくれを無くすために土を手のひらに付けて擦った。ざっとこのように言ったが、かなりの重労働で、しかも出来上がった洗濯板の溝は歪だった。しかしそれでも、哲郎は満足だった。彼は直ぐに洗濯板で洗濯を始めた。
翌日、哲郎はロタール村長の奥さんにこれを見せた。彼女は驚いて、
「これはあんたが作ったのかい?」
と問うた。哲郎はええ、と答えた。
「是非これを使わせてくれないかい?」
「分かりました、使い方はこうやって……」
哲郎は彼女に洗濯板の使い方を伝授した。彼女は喜んで、哲郎に礼を言った。
そして、収穫祭がやって来た。
村での収穫祭は賑やかだ。村人たちが皆で歌い、踊る。いつもは薄いビールを飲んでいる粉挽きも、ワインを飲んで愉快そうに笑っている。レンバー領内では粉挽きは粉を誤魔化すと嫌われていたが、ここでは皆仲が良い。ここまで来るにはさぞかし苦労したんだろうな……哲郎はそう思った。
一通り皆が騒いだ後、ロタール村長が手を叩いて皆の注目を集めた。彼自身も酔っていた。皆が静まり返ると彼は、
「みんな、今年もありがとう! 収穫量は今年も多い」
皆は歓声を上げた。ロタール村長は続いて言った。
「それから、我々の新しい仲間がここにいる――テツロウ・シノザキ君だ」
哲郎は前に押し出された。ロタール村長は得意気に話した。
「今皆の前にある白いパンは、彼によってもたらされたものだ!」
おおお、と声が上がる。
「更に、彼は『洗濯板』をも発明した!」
男達の反応はいまいちだったが、女性達から拍手が起こった。
「改めて、よろしくお願いします」
哲郎は挨拶をした。直ぐに村人達がやって来て、哲郎と肩を組む。彼は完全に村に溶け込んで行った。
「テツロウって言うのか、俺はパトリックだぜ」
「よろしくお願いしま――」
「なんだ、水臭いな。おいらはヘンリーだ」
「よ、よろしく」
「折角だしワインでも飲もうぜ」とパトリックが誘った。
「え、でも――」
「良いだろ」とヘンリーは言い、三人はワインを飲んだ。哲郎は、初めて飲んだ酒もなかなか悪く無いな、と思った。





