第二十三話 山賊
哲郎が目を覚ましたのは夜中だった。ガサゴソと茂みの中で音がする。元々哲郎は眠りが浅かったので、すぐに起きた。焚き火の火はまだわずかに残って燃えている。哲郎は茂みの中をつい覗いてしまった。すると、
「やい、命が惜しくば手を挙げろ!」
山賊が飛び出して来た。たったの一人である。後ろを見ても誰もいない。
哲郎は、昔読んだ本の内容を思い出した。中世ヨーロッパでの山賊は、多くの場合は相手が脅しに屈しなければ逆に逃げていく――というような内容だった気がする。
山賊を見てみるが、剣のみで飛び道具などは持っていなさそうだ。よし。
哲郎は側にあった大きめの木の枝を手に取った。何も無いよりはましだ。いざという時はこれを棍棒代わりにしよう。
「さあ、かかって来い!」
いつの間にか哲郎の口から煽り文句が飛び出した。すると山賊は――
何と、飛びかかって来た!
これには哲郎も驚いたが、木を振りかざして山賊に打ってかかった――跳び下がりながら。
山賊はものともせずに、こちらに向かって走って来る。哲郎は逃げ出した――ように見せかけ、横に跳んだ。勢い余った山賊は見事川に落ちる。
哲郎は山賊を押さえつけた。山賊はアップアップともがいているが上がれない。ギリギリ溺れない程度に痛め付けると哲郎は、
「命が惜しくば手を挙げろ」
先ほど山賊が言ったのと同じ文句を言った。山賊が激しくもがいたので、剣は川底に沈んでいる。山賊は慌てて、
「分かった、言う事を聞く」
と言った。哲郎は、
「まず、その剣を寄越せ」
と言った。
「分かった、後で取ってけ」
「あと、その毛皮の上着もだ」
「うっ」
簡単に言えば、山賊のほぼ全財産を奪ったのである。哲郎は山賊が川から上がるのを許さなかったので、山賊は仕方なく川の中で上着を脱いだ。哲郎が力を緩めると、山賊は下流のほうへと泳いで行った。あの冷たさでは凍死か、低体温症だろうな――哲郎はそう思った。
山賊が去った後で、哲郎は川に潜り剣と上着を拾い上げた。それらを乾かすために焚き火に薪をくべたりしているうちに夜は明けていった。





