表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/51

第十三話 浸透していく新たな犂

 キャベツの種蒔きも終わってだんだんと寒くなってきた頃、スピラ家の主人がマキシミリアンの所にやって来た。マキシミリアンは不在だったので、哲郎とハンナが彼にどうしたのか訊くと、「犂を領内の皆にも広めたい」との事だった。哲郎は「僕は別に良いですけれど、マキシミリアンが良いと言うか分かりません」と答えたが、彼は心の奥底ではマキシミリアンは有輪犂を広める許可が出たんだから重量有輪犂を広める許可も出る筈だ、と思っていた。

 やがて夕方になりマキシミリアンが帰宅した。哲郎は彼に重量有輪犂を広める事についての可否を問うた。

 マキシミリアンは哲郎の予想していた結果とは違い難色を示した。


「職人が忙しくなるだろう」マキシミリアンは言った。哲郎はそれに対し、


「土地の再区画もダメですか」と訊いたが、ダメだと言われた。哲郎としては再区画した方が良いのだが、信頼されていないのでは仕方ない。哲郎が(なか)ば諦めかけていると、


「そんなに広めたいならその、重量有輪犂とやらをもういくつか作って共用すれば良いじゃないか」とハンスが言った。


「それは考えていなかった」とマキシミリアン。哲郎もついすべての村人が個人の犂を持つことを前提に考えてしまっていたが、この領内ではお互いに助け合うのが基本だから、数少ない犂を共有するほうがむしろ当たり前かも知れない。

 翌朝、職人のところに出かけて行って、重量有輪犂をもう三つほど作って欲しいと頼む。職人には怪訝(けげん)な顔をされたが共用のためだと説明すると了解してくれた。





 追加の犂が完成する頃には、重量有輪犂の噂は領内にかなり広まっていた。暇があれば見に来る者がいた。少し前にやって来た若造が開発したそうだ、などと人々は噂した。

 哲郎はと言うと、むず痒くて仕方が無かった。追加の犂はどのようにして共用するのだろうか? 哲郎の目下の疑問はそれだった。

 やがて全ての重量有輪犂が完成した。哲郎がどのようにして共用するのかマキシミリアンに問うと、「俺やハンナの親戚に渡す」との答えが返って来た。マキシミリアンによれば、彼やハンナの親戚には遠くに住んでいる者もいるので、それらの者たちに渡し、そこで近所と共用で使うらしい。

 翌日、哲郎はマキシミリアンと共に重量有輪犂を親戚たちに渡しに行った。マキシミリアンからすれば哲郎は重要な開発者なので皆にもその顔を見せるべきだからである――最も哲郎はそれを望まなかったが。

 やがて十月になり、どこの家でも重量有輪犂を使って畑を耕し、その威力に驚いた。これ以降、重量有輪犂はこの領内に浸透していくのだった。

下の☆を押してポイント評価が出来ます。ブックマーク・ポイント評価よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑上の☆をクリック(タップ)して、ポイントを入れる事が出来ます。★一つでも執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。

小説家になろうSNSシェアツール

小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=473360702&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ