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第十二話 重量有輪犂の完成

 やがてキャベツの種蒔きの日の朝がやって来た。哲郎たちがちょうど朝食を食べ終わった時、入口から人が入ってきた。誰かと見てみると、何とあの職人だった。

 職人は、「完成したぞ」とだけ言った。マキシミリアンは礼を言うと、やはりパンを渡し、裏の畑に向かった。哲郎は職人と共にマキシミリアンについて行った。

 マキシミリアンは裏の畑で新しい犂を牛に繋いでいた。やがて繋ぎ終わり、マキシミリアンが牛を追い立てると重量有輪犂が牛に引っ張られて動き出し、土をボコボコと耕していった。マキシミリアンは、


「おおお!!!」


 と感激している。職人も「やはり苦労して作った甲斐があった」と喜んでいる。思わず哲郎も「やった!」と叫んだ。ハンスとボリスが見に来、一足遅れてハンナもやって来た。マキシミリアンの家族たちはこの犂が哲郎によってもたらされた事を知ると、哲郎に向かって手を出して来た。どうやらハイタッチのつもりのようだ。哲郎はそれに応えた。マキシミリアンたちもそれを見て笑っていた――





 とまあ大喜びした哲郎たちであるが、この有輪犂、特に車輪を付けただけではなく刃やモールドボードの改良を行った重量有輪犂は作るのが大変なのである。都市に住む職人()()の集まりならともかく、領内唯一の職人ともなれば作るのに多くの時間を割く必要があり、その間は他の作業は出来ない。

 これに対し、哲郎は土地の再区画を提案したが却下された。実際地球でも中世ヨーロッパでは有輪犂が普及したために土地が帯状に再区画されたりしたのだが、この世界では有輪犂などというものはまだ存在しないに等しいのだ――少なくとも哲郎の知る範囲内では。

 土地の再区画をすると、犂を折り返す手間が減るために耕すのが楽になる。哲郎はそれを実現させたかったのであるが、理解してもらえなかったのだ。が、考えてみたらそりゃそうである。突然外から来た怪しい人物が新たな犂を導入しただけでも不審であるのに、それが土地というデリケートな問題に触れようものなら大変なことになる。哲郎もそこまでの信頼は今は得られていないわけである。しかし逆に言えばそこまで信頼されることが一種の目標にもなるわけだ――そう考えると哲郎は少し気が楽になった。

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