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03 2人の上下関係

 さてここで一息。

 この世界がどうなっているかわかるかな?

 いや、わからないだろう。

 とりあえずこれは知っておいてほしい。

 この世界の地球は透明な壁によって二分されている。

 君たちの云う赤道と直行にして存在、壁自体の高さは有限であるが、それを乗り越えようとした者は皆どこかに消えてしまった。

 分かたれた台地は2つの世界へと変化する。

 サイクラノーシュとハイパーボレア。

 土星の大地と寒冷の大地。

 あの青年はサイクラーノーシュにその青年の思い人はハイパーボレアに・・・。

 あぁ、なんとも儚い恋ではないか。

 さて、そんな悲しい恋をする青年に異端の者が近づいた。

 おやおや、彼女は彼を知っているのだろうか?

 別の彼を知っているのだろうか?

 時の旅をしてきた彼女はいったい何者?とりあえず、それは私にもわからないと言っておこう。

 ただ、物語を進めると見えてくるかもしれないのかもね。

 

 では、次のシーンに行ってみようか。

 次は2人の道化師のお話だ。

 彼らはあの青年と同じ、私がずっと見ている者達。

 ここで紹介しておこう。

 

 道化語りをどうぞ。

 

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 道化語りシーンその1『2人の道化』

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「エイちゃん!さっきの結果、ちゃんとまとめたぁ〜!?」

 私はトンネル電子顕微鏡から顔を上げると、PCで作業をしていたエイちゃんを見た。

 しかし、

「・・・・・・」

 かのエイちゃんはむくっとした顔で私を見ていた。

 青年と少年の間に立つ容姿をした少年は少し怒る。

「なんで怒ってるの?」

「何回言ったらわかるんだよ!俺の名前はエイボン!!エイちゃんなって呼ぶな!!せめてエイ君と呼んでくれ!」

「あわわわっ?反抗期?・・・エイちゃんも年頃なんだね〜」

「年頃でもねぇ、お前が言うな!師亜!」

「あっ、失礼な事言ったぁぁぁぁ!私の方が偉いんだぞ!教授なんだぞ!」

「うっせ!結局、知識だけが上なだけだろが!それなんと呼ぶか知ってるか?―――耳年増って言うんだよ!この耳だけおばさん!」

 エイちゃんは私の頭を力強く抑える。

「あわ〜!!止めてよエイちゃん!背が縮んじゃうじゃない!」

 がばっ、と私は押さえる手をどける。

「ふんっ!150もない身長なんだ、いまさら変わるめぇ!」

「あ〜、なにさそれ!一体誰が君を養ってあげてると思ってるのよ!」

「うっ・・・・それを言われるときついな・・・」

 エイちゃん―――本名、エイボン・・・といっても多分偽名だよね―――は今、とある事情で私の家で暮らしている。

 大体4ヶ月前、エイちゃんが私の下にたずねてきた事から始まった。

「それに、エイちゃん!――君は私の下に来た理由忘れてない?」

「そりゃ・・・まぁ、忘れるわけないさ」

「なら言ってみなさい!」

 ぬ〜、とエイちゃんはめんどくさげに口を開く。

「それは、俺が師亜の研究している次元に関する知識を教えてもらうためです」

「そう、それです!つまり私と君は先生と教え子!師弟なのです!」

 ずびし、と私は人差し指を立てる。

「師弟・・・とは違う気がするけど。・・・あれ?俺は今ふと感じた」

「何です、言ってみなさい」

「先生と教え子・・・改めて口にすると何かエロい。なにかイケない関係だ」

 頬を赤らめるエイちゃん。

 ・・・きも。

 イケないのエイちゃんの頭だ。

「私、今まで何故、貞操の危機にさらされなかったのか理解不可能です」

「それはだな。簡単な答えだよ、師亜君」

「何ですか?」

「俺はロリには興味な、ぶぐはらぁぁぁぁ!!!」

 エイちゃんは吹っ飛んだ。

 そしてド痛い音を出しながら扉にぶつかる。

「どうしましたエイちゃん?私はまだあなたの答えを聞いてないけど・・・、それに何故、逆立ちに失敗したような格好で転がっているのですか?」

「おい、どの口がそんな事を言う?今、確実に俺を吹き飛ばしたのはお前だろがっ!それになんだ、今の攻撃?ハリセンなようなもので叩かれたように見えたが・・・そして何故か鉄の感触がした。・・・まさか鉄扇!?」

「何を言うですか、私は何も持ってませんよ。攻撃もしてませんにょ」

「・・・にょ?」

 エイちゃん突っ込みはスルー。私は手を広げる。

 エイちゃんは立ち上がり、私の周りをグルグル回り。

「・・・確かに・・・」

「でしょ?何も持ってないでしょ?」

「でも、あの感触は・・・?」

「女の子には触れてはいけない秘密があるんですよ」

 ちっちっちっ、と指を振る。

 しかしエイちゃんは、

「・・・女の子の区別さえ許されない子供な体なくせに・・・」

 ぼそっ

「えい!」

「ぐぶきぃっ!」

 再度、何故か扉の方へと飛んでいくエイちゃん。そう・・・何故か!ここ強調。

「エイちゃんは空中きりもみが好きなんですね」

「今、さっき『えいっ』って言う掛け声を聞いたのだが・・・それにまたあの鉄に殴られる感触・・・、本当に何も持っていないのか?」

 エイちゃんは直に復活した。

「別に何も持っていませんよ。・・・でも今日の晩御飯には何かが盛ってあったりなかったり・・・」

 持ってると盛ってる――ね。

「何それ!なんか上手く言ってやった、見たいな顔してるけど、全然上手くないから!!それに怖いから!」

 しかし、最初は年頃の男の子と一緒に住むのは抵抗があったのだが、彼は今まで私に手を出した事がなかった。

 まさか、彼は私を女と認識していなかったとは・・・・。

 ・・・すごく傷つく・・・。

 でも私もエイちゃんと同じ年だし、今が成長段階。いつかはぐ〜んと背が伸びて、ばば〜ん、と胸が出てくるはず!

「まぁ、体型はしょうがないよな。それにもう17歳だし、大体、体の成長はほぼ止まる段階だし、師亜はずっとこのままなんだ。師亜は師亜。自分のままで行けばいいんだよ」

「何故、ピンポインに私の願いを打ち砕きますか!!」

「いや・・・・その、なんだ・・・・。今、師亜が胸をペタペタ触って落胆してたから、励まそうと・・・。とりあえず夕飯に何か盛られるのはいやだからご機嫌取りを・・・とな」

「今、私の機嫌は取れているようにみえますか?」

「いや・・・見えんな。どこで失敗した?」

 真顔で返される。

 この男、デリカシーはないのか!?

 気配りができていようで気を配れていない。まったくもって達の悪い。

「数分前に戻って、自分の行動をみてきなさい!」

「次元を飛べたら、俺は師亜のところに来る必要もなかったのにな・・・、とりあえずごめんさい。俺、死にたくないです」

「よろしい、では夕飯の買い物をしてくることで許しましょう。・・・ところでさっき渡したデータまとめ終わった?」

 なんか横道にそれたが私は話を戻す。

「ん、まぁ・・・なんとか。でもこれって変化ないよな。こんなのが参考になるのか?」

 エイちゃんがデータをまとめた紙を出してくる。

 私はそれを受け取り、ざっと目を通した。

「あわ〜、こりゃ面白い。エイちゃんの言うとおり、変化ないね」

「値が違ってくるのは大体コンマ5桁の所ででてるけど、それは既に無視できる値だ」

「そうだね。これはもう全て一緒の結果。でもこれはすごい進歩だよ!―――エイちゃん、これなんの測定結果だと思う?」

「なんのって・・・、俺は数字しか渡されてないのにわかるはずないだろ」

「え〜でも結果をだす計算式は見てるはずだよ。それにその計算式は1カ月前に教えたじゃん」

「あれ?そうだっけ?」

 なんということだ。

 この男は私の元に学びに来たのではなかったのだろうか?

 自慢じゃないけど、私の講義って金を出してでも受けたい人は居るんだよ?

 それをまったく忘れたなんて・・・。

「エイちゃん・・・」

 じと〜と彼を恨むように見る。

 するとエイちゃんは慌てて、

「いや、ちょっと持ってくれ!そう・・・直にでも思い出す。確か1カ月前くらいはシュレディンガーの波動方程式?だっけ・・・」

「違〜う。確かにそれもやったけど、その次の講義!」

「その次?え〜と、シュレディンガーの猫?」

「そんな講義やったことないよ・・・・。でも確かに、猫の話も空間移動をする為の方法の1つだよね。かのシュレディンガーは思考実験でランダム時間に青酸ガスを出す、箱の中に猫を入れ、蓋を閉めた。この時から猫は生きてるか死んでるかは開けてみなきゃわからない。つまるところ確立論だけど、ここで注目する点は猫の存在。あの蓋を閉めた時点から猫は存在が不安定になっちゃう、何故なら死んだかどうかわからないんだからね。で、それが空間移動の方法の1つになるわけ。存在が不安定ってことは、もしかしたら何処か違うところに居る可能性も出てくるかもしれない。そこにいるかもしれないけど、いないかもしれないってことね。だからその猫は違う世界にいるのかもしれない・・・。少し強引なこじつけだけど可能性としては有り得る。でも、もし猫が別の世界にいるとしても問題がある?それは何か?―――それは、その猫がその世界にいるかどうか誰かが認識しなければならない。これはモノは確認されてもそ存在する、と云うどこかの哲学者の言葉だね。いや・・・心理学者?まぁいいか。つまるところ観測者シーカーが別の世界に必要なんだよね。で、ここで行き詰る。どうやってその観測者をあっちに送るか・・・」

「あ〜、なんか師亜の『一人講義』が始まったな・・・どうしよ。お〜い、師亜。話が脱線してる。もうそろそろ止めにしないか?聞いてるかい?」

「モノを送るのに観測者がいる。でもその観測者を送るのにも結局観測者が居る。つまり無限ループ」

「聞いちゃいねぇ・・・。しょうがない、これを言うしかないのか。でもこれ言うと普通に殴られるんだよな。いやだな〜、でもやらなきゃ駄目なんだよな。・・・いや、でも痛いの嫌だから止めとこう。酸欠で倒れるまで待てばいい。

 という事で、次のシーン行ってみよう」


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 おやおや、シーンが終わっちゃったね。

 彼も図々しいね。私の視点を変えちゃうなんて。

 私としては彼らのやり取りをもっと見ておきたいが、とりあえずエイボン君のお望みとおり次のシーンへと言ってみようか。

 

 では・・・ふむふむ、次はどうやらあの青年と旅人がお話をするようだ。

 少しは壁の不思議に近づけるかな?

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