プロローグっぽいなにか
文章修正の可能性有り
アンデッド(英: Undead)は、かつて生命体であったものが、すでに生命が失われているにもかかわらず活動する、超自然的な存在の総称。Living dead または Living Dead(生ける屍)とも言われる。
死にきっていない(死者でも生者でもない)者たちの総称。
日本語では「不死の怪物」や「不死者」などの訳もよく使われている。それ以外の日本語表記では「亡者」や「死霊」などがある。
アンデッドとされる存在は多種あるが、その多くは太陽の光に弱いとされており、夜間に活動したり、墓地などに現れたりすることが多い。生者を襲い、犠牲者を同種のアンデッドや従僕とするとされるものもいる(例:吸血鬼)。聖水や聖餅を弱点とするものもある。
Wikipediaより
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中世ヨーロッパ風な理から成り立つこの世界では、当たり前のようにアンデッドと呼ばれる者たちが存在する。
その種類としては、動く死体であるゾンビや、動く骨であるスケルトン。呪詛を吐く亡霊のレイスや、その上位種であるスペクター。さらには知性や肉体を持つリッチやヴァンパイアといった者たちが挙げられる。
基本的に彼らアンデッドは、死後、その死体を定められた処理方法によって処理されなかった場合や、墓地等に発生しやすい『瘴気』と呼ばれる成分が含まれた空気が蔓延する土地から発生しやすかったり、野生動物よりは、負の感情を抱いたまま死ぬことが多い『人間のような知性があるタイプ』のほうがアンデッドになりやすい傾向がある。
そのため、フェイル=アスト王国の法では、人口が百人以上存在する村や町には神官が常駐する教会が置かれ、彼らによって死体の処理や墓地の浄化を行うことが義務付けられている。
また、この世界の人々も死体が疫病の元になることは知っており、死体のアンデッド化や疫病の発生を防ぐため、王国では放置されている死体を見付けた際に役所に報告することで、少額ではあるが褒奨金を出す制度も採用している。
この制度のおかげで今や街中で放置された死体を見ることはそうそう無い状態となっているのだが、その反面、この制度のせいで、スラムの住人が死体を作るために互いを殺しあうという悲劇を生むこともあるとか。
民度は大事。そういうことだ。
閑話休題。
基本的に生者から嫌われるアンデッドであるが、魔王軍の中ではそれほど嫌われてはいない。と言うか、人間が見たら「なんで?」と驚きの声を挙げるほどに重宝されていた。
「今日も今日とて農作業……。フフフ。墓から出てきた彼らも、まさか死んだ後も畑を耕すことになるなんて思ってなかったでしょう」
「……そりゃそうでしょ。私たちだってアンデッドに農作業させようなんて考えもしなかったもの」
まぁ、彼ら魔王軍がアンデッドを『重宝』する方向性が、戦闘ではなく生産に偏っているのがなんとも言えないところではあるが、それはそれ。
「肉が腐ってるゾンビや、中途半端に食欲が残ってるグールと違って、スケルトンは洗えば綺麗だし命令に忠実だから農作業に最適。この発想は無かった」
「うん。そうね。エルフやドワーフの連中は自分たちの好むものしか作らないし、獣や鬼の連中に根気が必要な農作業は無理。気が長いドラゴンだって細かい作業はできないし、私たちも地に降りて農作業なんかできない。海の連中に至っては完全に門外漢ですもの。そりゃ貴女たちしかいないわよね」
配下のリッチが上げてきた今季の収穫量に関する予想推移が記された書類を眺めながら、不死者の王・ヴァリエールが満足そうに頷けば、彼女の執務室に来ていた空の王・アテナイスは、ヴァリエールの配下が入れたお茶とお茶菓子を食べながら、アンデッドたちの利用方法に対して理解を示す。
「農作業だけじゃない。今やっているいろんな作業を行えるのは、魔王軍の中では私たちしかいない」
そう言ってヴァリエールはふんすっと小柄な胸を張る。
事実、彼らアンデッドには好き嫌いもなければ、疲れも、労働に対する不満もない。
一応『生者を嫌う』という本能のようなものはあるが、それも近くに生者が寄らねば良いだけの話だし、収穫や何やらを管理する部署にはその本能を抑え込めるだけの知性を持つ者を配置しているので、今のところ農作業を行う現場で問題が発生したことはない。
それ以外にも、道路や下水といったインフラ整備の現場や、拠点の設営。排泄物の清掃や廃棄物の処理など、様々な場面でアンデッドは活躍しており、今や彼女たち抜きでは魔王軍は軍事行動はおろか、まともな生活もままならないだろう。
「そうね。それについては本当に助かってるわ」
「ふふふ」
そんな組織の根幹部分を支える部署を任された矜持故か、ヴァリエールは自分の仕事を褒められれば素直に喜ぶし、貶されれば烈火のように怒る。
そもそもの話だが、リッチのような知識欲のためにアンデッドとなった者や、強い怨恨をもっていたり、契約によって呼び出された者以外のアンデッドには目的というものがない。
普通のアンデッドは、生者の放つオーラ的なモノを求めて生者を攻撃したり、己と縁のある土地にしがみついてブツブツと恨み言を呟くだけの存在なのだ。
斯く言うヴァリエール自身もそうだった。
ただ、彼女の場合は自分がアンデッドになったときは確かにそれなりに強い恨みの念もあったし『恨みを晴らす』という目的もあったので、他のアンデッドと違うと言えばそうなのだろう。
しかしその恨みを晴らした後の彼女には、特に生きる(?)目的というものがなかった。
強大な力を持ちながらも特に何をしたいわけでもなく、かと言ってもう一度死にたいわけでもない彼女は、ただ毎日をボケーっと過ごしてきたのである。
そんなヴァリエールにとって転機となったのが、彼女以上の力を持つ存在である魔皇との出会いと、その魔皇から「暇なら働け」と言われて回されてきた『仕事』との出会いであった。
ヴァリエールにとって『それ』は、恨みを晴らしたあとの暇つぶし程度で始めたことでしかなかった。しかし、仕事をこなすことで彼女は己の中に小さいながらに存在していた承認欲求が満たされることを自覚できたし、なにより暇じゃないのが良かった。
長命種や不死者にとっての最大の敵とは【勇者】ではない。
『暇』だ。
この言葉を実感するくらいには暇を持て余していたヴァリエールのもとに齎されたのが『仕事』という名の暇つぶしだったのだ。
アンデッドであるが故に寝る必要もなければ休憩の必要もない彼女からすれば、普通の社会人なら音を上げるような仕事量も、多少難易度が高いゲーム程度の認識でしかない。
そしてゲーム感覚だからこそ、彼女は自分の出した結果を他人から褒められたら素直に喜ぶし、文句を付けられたら本気で怒るのである。
そのことを知るアテナイスは、尚も胸を張るヴァリエールを茶化すことなく、素直に彼女の言を認める。
……彼女がへそを曲げればアンデッドたちの作業効率が落ちる。作業効率が落ちれば農業に於ける収穫量が目に見えて落ちる。そうなれば配下たちに食わせる食料が不足する。
アンデッドのヴァリエールは食料が不足しようと微塵も困らないが、アテナイスは違う。安定した食料生産の裏付けがあればこそ順調に種族を増やすことができるし、数が増えれば種族が栄えるのは自明の理。
アテナイスは多数の配下を抱える王であるからこそ、ここでヴァリエールを不機嫌にするような選択をするつもりはなかった。
ちなみに魔王軍の内部に於いてこういった思いを抱えているのは彼女だけではない。
『褒めるだけで機嫌が良くなり作業効率が上がると言うなら、いくらでも褒め倒す』
これが、いまや彼女に食料を握られた魔王軍に所属する者たち全員の基本指針であった。
「で、今日はなんの用?」
魔王軍の食料事情を支える重鎮のヴァリエールは当然暇ではないし、空の王であるアテナイスもヴァリエールほどではないにせよ、多忙な身である。
多忙な者が、同じく多忙な者になんの用も無しに会いに来るはずがない。まぁ普段から空を飛び回っているアテナイスが『休憩がてら友人の様子を見に来た』と言うならそれはそれで歓迎するが、今回は違うだろう。
そう考えたヴァリエールが水を向ければ、お茶を飲み終えたアテナイスは「そうね。それじゃそろそろこっちのお仕事の話をしようかしら」と言いながら、小柄なヴァリエールが持たない谷間から一枚の書状を取り出し、それをヴァリエールに手渡す。
「……(むぅ)」
「???」
ナニカに負けた気分になりつつ微妙な表情でその書状を読めば、そこには『ヴァリエールとアテナイスはフェイル=アスト王国での威力偵察任務をするように』と魔皇からの命令が書かれていた。
「威力偵察?」
「そ。具体的には、突発的なアンデッドの発生に対する連中の対応の中身や、速度の調査、ね。魔皇様は速度のほうに重点を置いているみたい」
「速度……つまり今回の偵察では情報伝達や移動に使われるであろう組織の力の調査を重視しろってこと?」
「そうみたいね。役割分担としては、私が貴女を現地に運び、貴女が現地でアンデッドの発生&活性化を担当。あとは私たちが観測するって感じかしら」
「ふーん」
アンデッドが各種作業に適性があるのは先に述べた通りだが、当然その適性は軍事にも活かされる。
新たに生まれたアンデッドが滅ぼされても、現行の軍勢に被害がないこと。
素材(死体)は向こうにあるので、部隊を輸送する必要が無いこと。
発生の規模や範囲、そしてアンデッドの強さをある程度こちらで調節できること。etc……
これらの理由から、アンデッドは通常戦力としても使えるが威力偵察にも向いた戦力なのだ。
一応アンデッドの欠点として『知性が無いのでまともな報告ができない』という欠点があるが、そこは空の王たるアテナイスとその配下たちの出番である。
基本的に視力が高い鳥類が持つ空からの視点が、偵察に最適であることはわざわざ語るまでも無いだろう。それにアンデッドが活性化するのは主に夜であるが、アテナイスが統べる者たちの中には夜目が利く種族も多数存在するので、舞台が夜であっても戦闘を観測する分にはなんの問題もない。
なにより、今回の任務は『相手がアンデッドとの戦闘をどのように行うか?』ではなく『突発的な事案に対してどれくらいの速さで対処できるのか?』の調査だ。そのため『戦闘を事細かに観測する必要はない』と言うのであれば、この任務の難易度は格段に下がることになる。
そのことに気づいたヴァリエールはちょっとつまらなそうな顔をするも、すぐに『これも仕事』と思考を切り替え『どこでアンデッドを活性化させるのが一番効果的か?』を考慮し始める。
そこで彼女は一つの問題に気が付いた。
「でもさ、勇者が来たらどうするの? 殺してもいいの?」
「あぁ、そういえば勇者に関してはまだ何も言われてないわね。けど、殺せるなら殺してもいいんじゃない?」
「んー。何も言われてないってことは、そうなのかな」
「えぇ。被害者だろうがなんだろうが私たちからしたら敵だし。わざわざ生かす意味もないからね」
「それもそうだよね」
彼女たちにとって勇者は魔王軍を滅ぼすために召喚された敵である。そうであるが故に容赦の必要はない。魔皇が『止めろ』と命じるならその命令に従うが、魔皇からの命令がないなら好きに動く。それが魔王軍だ。
魔王軍を代表する社畜【不死者の王・ヴァリエール】と、その同僚にして友人である【空の王・アテナイス】。二人の王の影が、勇者とフェイル=アスト王国へと迫ろうとしていた。
なんだかんだで四章。
書きたいことがうまく文章に纏められぬ……
アンデッドの有効利用法を考えたモモ○ガ様、否、アイ○ズ様って天才ですよねってお話。
一言で言うなら、さすもも。
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