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16.5話 チ―トな少女の滞在先について

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配置換えという屁理屈を以て【付与術師】の少女の引き抜きを成功させた神城は、次に彼女の住む場所についての話を行うことにした。


「では次は彼女をどこに住まわせるのか? といった話になるのですが、どのようにしましょうか?」


「ん? それは別に……あぁ。そういえば卿が現在使っている屋敷は、突然の客人を滞在させるためのモノだったな」


「え? えぇ。はい。確かそうでしたね」


ラインハルトが「失敗したー」という表情をすれば、そのラインハルトの顔を見た神城は「それが今関係あるのか?」と疑問を浮かべる。


神城としては彼女にはその辺で一人暮らしをしてもらえば良いと考えており、その際には護衛という名の監視を付けることになるだろうから、そのあたりの調節をラインハルトにぶん投げるつもりで話を振ったのだが、話を投げられたラインハルトの考えは違った。


「流石に正式に外交官としての実績を上げ、近いうちとは言え確実に男爵となる卿に住まわせるような屋敷ではないからな。うむ、分かった。こちらで卿に相応しい規模の屋敷を用立てる。いやはや、気が利かなくて不自由をかけた。済まぬ」


「え? いえ、閣下には十分良くしてもらっておりますので、気が利かないなどということはありませんが……」


「ふっ。卿にその気がないのはわかるが、謙遜も過ぎれば嫌味だぞ?」


「お、恐れ入ります」


「うむ。それで良い」


真顔で忠告っぽいことをした後に「良いこと言った」と満足した表情をするラインハルトを見て、神城の頭の中は「結局何が言いたいんだってばよ?」と疑問符でいっぱいになったが、続くラインハルトの言葉で、自分と彼の間にあった常識の壁の高さと厚さを痛感することになる。


「では【付与術師】についてはそれでよかろう。使用人を増やすと言うなら……今更卿に資金の援助が必要とも思えんが、こういったものに横着しては不満の元になる故、国庫から100万シェンを支給しよう。その後は、働き次第で卿が見繕うと良い」


「……はっ(コレって、もしかしなくても「お前が引き取れ」って言ってる……よなぁ)」


そう。ラインハルトにしてみたら「外交官として保護したんだからお前が面倒を見ろ」と言うだけの話であり、先の屋敷については「今使っている屋敷は狭いので面倒を見れません。立場に相応しい屋敷を用意してくれませんか?」とせっつかれたと思っていたのだ。


貴族社会に於いては、回りくどい言い回しが常態化していることの弊害とでも言えば良いのだろうか。


元々神城はラインハルトから「屋敷を用意するが何か希望はあるか?」と問われた際。管理が面倒だったし目立つ気も無かったので、「一番小さい屋敷で頼みます」と念を押した経緯がある。その答えを聞いたラインハルトから「本当にそんな屋敷で大丈夫か?」と聞かれた際にも「大丈夫です。問題ありません」と言って現在の屋敷に移動をしたのだ。


なので、本来ならばラインハルトが神城に謝罪する必要は無いと思われるのだが、しかしここは中世ヨーロッパ風の貴族社会。


上位者から「遠慮するな」と言われて本当に遠慮しなかった場合に発生する各種弊害を考えれば、誰だって遠慮をするに決まっているではないか。


さらに神城は客人扱いとは言え寄子でもある存在だ。


つまり貴族的な常識で考えたなら、遠慮する神城に対しラインハルトが気を利かせて1ランク、否、2ランクは上の屋敷を用意すべきだったのだ。


(危ない危ない。姉上に知られたらただでは済まなかったな)


「当初は神城が作る薬の有効性を理解していなかったから」と言い訳ができるかもしれないが、薬の効能と客人に対する気遣いは全く別の話。


その為、数時間後どこからかこの会談の内容を知ったフリーデリンデが己が息子の気の利かなさを嘆き、自身の教育不足を恥じた末に娘を呼び出し、母の許可を得た彼女が「だから貴様は阿呆なのだぁぁ!」と拳を振るい、ラインハルトが宙を舞うことになるのだが、それもまた後の話である。





異世界で心細い思いをしている少女を保護するのは外交官の仕事ですってお話



―――



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