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15話。前置きとか準備は大事

文章修正の可能性有り

どこぞの情熱的なギャングの幹部も言っていたことだが、組織に所属する人間にとって大事なものは『信頼』である。『信頼』の前では、頭がいいとか才能があるだなんてのは歯に付着したポテチのノリ塩よりも価値がない。如何に能力があろうとも、簡単に『信頼』を裏切るような人間には仕事を任せることはできないのである。


そして社会人にとって『信頼』とは、口ではなく、態度と結果で見せるもの。


このことを念頭に置いて考えるなら、お披露目まで数日程度の期間も自己の情報を秘匿できないというのなら、能力も人格も『信頼』できないと判断せざるを得ない。


そう判断した神城は、なんだかんだで保護することになった少女に対し「君だけが戦場から避難できるということがバレたら、絶対にクラスメイトから顰蹙や恨みを買うだろう。だから、絶対に情報は隠すように。……ちなみに、もしもこの情報が漏洩したら俺は君を『信頼できない』と見做すことになる。当然保護の話は無しだ」と釘を刺した後、予定していた【勇者】たちの観察を取りやめてローレン侯爵が居るであろう執務室へと歩を進めていた。


予定を取りやめたのはいち早く【付与術師】の少女を引取りたいから。といった理由もあるが、一番の理由は『金髪にした程度では日本人顔は誤魔化せない』ことを少女から指摘されたからだ。


当然の話だが、一般の文官が自分たちの様子を見ている。というのと、一般の文官の格好をした日本人が自分たちの様子を見ている。というのでは全然話が違う。


キョウコのように戦場に行きたくないと思っている者や、転移初日から王国に対して含むところがあるような素振りを見せていた【賢者】の少女のような存在から見れば、今の神城は奇貨どころではない。


加えて、神城が現在どのような待遇で扱われているかを知れば、絶対に接触してこようとするはずだ。


故に【勇者】一行の中で、特に王たちに注目されている【賢者】に目を付けられてしまえば、面倒事に巻き込まれる可能性は激増してしまうのは確実である。そんな約束された面倒事を避けるために神城が戦略的な撤退を選ぶのも当然のことと言えよう。


薄情? 何が? 


大前提として、神城と少年たちに接点はなく、神城にとって少年たちは『商品の搬入先である学校に通っていた生徒』でしかなかったし、少年たちにとっても神城は『自分たちが通ってた学校に薬品を納品していた業者の人間』でしかなかったという現実を忘れてはいけない。


そのような希薄な関係性しか持たない相手を助ける義理など、神城にはない。


キョウコの場合は、あくまで彼女が神城よりも化粧品に詳しそうなJKであり、神城の仕事の役に立ちそうな【付与術師】という職業であり、そしてなにより「助かるためならなんでもする!」という決意を見せたが故に保護することを決めただけの話で、もしもそこになんらかの下心があったならば神城も彼女を保護しようとはしなかっただろう。


つまるところ神城は、これ以上【勇者】関連の面倒事を避けるために予定を変更したということだ。



~~~



神城の都合で、もともと会談を予定した時間よりも早く神城に訪問されたラインハルトはと言えば……特にそのことを問題視していなかった。


「神城が? ふむ。予定の時間よりも早いな」


「はっ。神城卿は『閣下がご多忙であることは存じ上げておりますので、お時間ができるまで待たせていただきます』と仰り、今は控えの間にて待機しております」


「ふっ。相変わらず殊勝なことよ」


王国内でも指折りの大貴族である侯爵家の当主であり、軍務大臣であるラインハルトの価値観からすれば、自身との面談を前にした者が一時間以上前から待つのは当たり前の話である。


当然予定時間よりも早く来た者たちを待たせるための準備もしてあるので、会談を予定していた相手がその時間より早く来訪したからといって慌てる必要がないのだ。


「しかしまぁ、あまり待たせるのも悪い、か」


とは言え、神城は国賓である【勇者】一行の一員であると同時に、異国の貴族として王国が客人として認めた存在であり、さらにローレン侯爵家の内部では神城が作る薬を求める声が日増しに高まっていることもあって、今や神城は王国屈指の大貴族であるラインハルトですら気を使う必要があるほどの重要人物となっていた。


まぁ、当の本人は『なんの責任もないが切り捨てられもしない』という非常に都合の良い立場を望んでいるのだが、彼が作る薬の存在を公妃アンネから王妃にまで伝えられてしまった以上、その願いが叶うことはもはや無いのだが、彼がそのことに気付くのはまだ先の話である。


そんな【勇者】に関わろうが関わるまいが面倒事が約束されている神城の未来についてはさておくとして。


「では神城との会談を行うとしよう。……母上や姉上が用意した者が聞き耳を立てる前に済ませておく必要もあるからな」


「……はっ」


基本的にラインハルトは神城との会談の内容をフリーデリンデやアンネには話していない。


これまでは「たとえ相手が肉親であっても、侯爵家の当主として王家が認めた客人との会話を明かすことはできない」という貴族の矜持を利用して誤魔化せていたのだが、最近は『無骨なラインハルトが準男爵殿の機嫌を損ねたら大変なことになる』と考えているらしく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()監視の人間をつけようとしてくるのだ。


そのような事情から、本来ならば今日はアンネの意を受けた者がラインハルトの下に来る予定であったが、なんの偶然か、今回神城が予定されていた時間よりも先に来てくれたのでまだその人員は到着していない。


これを「好機!」と判断したラインハルトは、お目付け役が来る前に神城との会談を行うこととした。


(……何が悲しくて40にもなった侯爵家の当主が、母や姉の手配した人間に監視されながら接客をしなくてはならんと言うのか)


口に出したら「貴様の無骨さが原因だろうが!」と、容赦ない一撃を見舞われて空を舞うことになるので絶対に口には出さないが、彼には彼なりの苦労と不満があるのだ。


「では、神城を呼んできてくれ。あぁ、もし向こうがもう少しゆっくりしたいと言うのなら、無理に連れてくる必要はないぞ」


「はっ」


己が仕える主人から母や姉への愚痴を聞かされてなんとも言えない顔をしていた執事に対し、ラインハルトは神城との会談を行うための指示を出すのであった。


まぁサブタイ通りですな。

ネタが使いたかっただけとも言う。


尚、このラインハルトの愚痴は、後ほどしっかり母や姉の耳に入るもよう。

一体誰が裏切ったんだ(迫真)


短い? うん。作者もそう思いますが、前回が7000文字あったから、まぁ多少はね?ってお話



―――



ふっ。我が左肩に30年以上封じられてきた魔物が、封印を解こうと蠢きよる……


もはやバンテ○ンとフェ○タスが頼りです。


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