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6話。晩餐会の前のお話

王様との謁見が終わった後、俺たちは「それでは皆様。皆様は晩餐会の準備が整うまでこちらでお待ちください(意訳:王や貴族の方々の着替えや諸々の準備が終わるまで待ってろ)」と言われ、それぞれに個室を割り当てられて待機することとなった。


これは俺たちが共謀して変な事を考えないようにする為の措置だと思われる。この状況で他人の部屋に行ったり、よくわからん行動を取る奴は向こうにマークされるのだろう。数日後には行方不明になるパターンかねぇ?


ま、自分とは関わりの無いお子様がどうなろうと知ったことではないので、俺は俺でやるべきことをやろうと思う。


ナーロッパに来た現代人が最初に確認すべきことと言えば、それは当然……。


「すみません。トイレってありますか?」


部屋付きのメイドさんにトイレの確認をすることだ!


「え?あ、あぁ、ありますよ。来客用は向こうになりますので、ご案内いたします」


「はい。よろしくお願いします……できたら早足で」


「は、はい!」


真顔でトイレの案内をするように頼まれたメイドさんは、頬を引きつらせてやや早足で俺をトイレまで案内してくれた。


そしてトイレに着いた俺は、トイレの確認を行う。


……うむ。それぞれの個室にはトイレは無し。だが一つのフロアに来客用としてトイレを用意している、か。ヴェルサイユ宮殿にすら無かったと言われるトイレを標準装備しているとは、侮れん。


しかも水洗でトイレットペーパーまである。しかしウォシュレットはない。


ふーむ。総合すれば、さすがはナーロッパと言ったところだろうか?


しかしトイレ。王城の客室の近くに用意していないところを見ると、このトイレは後付けの可能性が高いよな。


あとは技術的な問題か。水に関しては魔法関連の技術で片付くが、下水道工事や配管は……これも魔法で作れば良いか。


あとは便器の質。これは陶器に近いが、少し違う。だが自然石を削って作ったような感じでもないから、これも魔法の産物かもしれん。


うーむ。説明を全部魔法で片付けるのもアレだが、下手に確認をとって目を付けられても困るから、今は魔法ってことで納得しておこう。


とりあえずは待たせたメイドの反応の確認だな。


「いやぁ助かりましたよ。召喚から国王陛下との謁見までずっと我慢してましたからね」


「そ、それは大変でしたね」


「えぇ。危うく尊厳が死ぬところでした」


「あ、あはははは」


ふむ。トイレの中でこちらの技術レベルなどを調査していたんだが、流石にトイレの個室の中までは監視していなかったか? 俺が数分の間トイレの個室から出てこなかった事に対して特に疑問に思っていないようだ。


技術レベルについてはそれなりに理解した。トイレに余力を割ける余裕があるのもな。


あと早めに確認しておきたいのはスキルだな。しかし流石に監視されている状況でポンポンスキルを試して、俺のスキルの可能性を向こうに知られるのは遠慮願いたいので、これも今は我慢すべきだろう。


だが、俺の予想が正しければ俺のスキルは想像以上に使えるハズだ。


……想像よりも使えなかったら女神の悪口を大声で叫んでから死んでやるぞ。


~~


女神が聞いたら『約束はどーなったのよ!』と叫びだすようなことを考える神城であったが、神城にすればまだ恩恵を受けた実感が無いので、感覚的には商品受け取り前にキャンセルをするような感覚である。


故に現段階での暴露は女神との契約には違反していないのだ!

……あくまで神城の中では、だが。


~~


そんな相互の価値観の違いから悲しい戦争が生まれそうな状況はともかくとして俺は次の調査を行うためにメイドに話しかけた。


「安心したら少しお腹が空きましたね。晩餐会の前に何か軽くつまめる物を頂くことは出来ますか?」


この場合『安心したから』と言うよりは『出したら余裕が出来た』と思われるだろうが、それはそれで構わんのだ。


「えっと、食べ物なら晩餐会用に沢山用意されておりますので、お客様用に軽食を用意することは可能です。しかし、よろしいのですか?」


俺の質問に対してメイドさんはそう言って来たが、はてさて、この場合の『よろしいのですか?』は何に対してだろうな? 普通に考えれば『もう少し我慢すれば美味しいものが沢山食えるぞ』ってことなんだろうが、敢えて曲解すればお腹の調子は大丈夫ですか? にも聞こえなくもない。


「大丈夫です。問題ありません。そもそも晩餐会は国王陛下や貴族の方々との懇談の場でしょう? そのような場で食事に専念などできませんよ」


向こうの確認がどちらの意味を持っていたにせよ、本来の目的である調査は終わっている。彼女の表情と返答から、現時点でこの国は食料にもそれほど困っていないことがわかったし。


尤も、裕福なのは首都とか王城だけって可能性も無いわけではないがな。だが謁見の間に列席していた貴族の肌ツヤや着ている服はそれなりの質だったところを見れば、少なくとも貴族連中は戦時中の国家とは思えないくらいに裕福な生活を送るだけの余裕が有るようだってのは確かだ。


「……そうですか。では厨房に使いを出して軽食を用意させます」


一瞬の間があったが、メイドさんは俺の言い分に納得し、軽食を用意してくれることになった。


うむ。これはあれだ。俺が晩餐会の意図を理解していたことが計算外だったか? そんなん普通に考えれば……あぁいや、今まで召喚された人間が社会経験がない学生だったり、世間慣れをしていない教師だけなら晩餐会をただのお食事会と勘違いしていた可能性もあるのか。


うーむ。意図して驚かせるならともかく、普通にするだけで驚かれるってのは困るぞ。それも召喚された側の人間が駄目すぎて驚かれるなんて最低だぞ。


いや、過ぎたことは仕方ない。なんとかしてこれをプラスにしなければ。


そうこう考えていると、メイドさんが軽食をワゴンに載せて持ってきてくれた。 


「お待たせいたしました」


「ありがとうございます。おぉ! 美味しそうですね!」


「軽食とは言え、王城に勤める料理人がお客様の為にご用意したものですから」


「なるほどなー」


メイドの反応を見て特に怪しまれているような雰囲気を感じなかった俺は、とりあえず内心の不安を隠しつつ、軽食として出された料理を観察しながら食材に使われる技術や香辛料の調査を行うのであった。


トイレ(水回り)に使われる技術でその国の余裕ってわかりますよね。ってお話



閲覧ありがとうございます!


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