4話。クラスチェンジについての云々
文章修正の可能性あり
これは毛生え薬の効果を実感したルイーザが侯爵家に赴き、今後の薬の生産量についての折衝をしていたときのことの話である。
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「クラスチェンジ?」
ヘレナが女性特有のローテーションに入ったため、今日はエレンと二人で寝具の使い心地を確認していたのだが……色々試した後で横になったエレンが急にそんなことを言ってきた件について。
「はい。本日の業務中に私の職業である【メイド】のレベルが10に上がりましたので、職業の変更が可能になったので、そのご報告を、と思いまして」
「ほほう」
確か元々レベル9だったもんな。これは王城にいた時点でレベルアップ間近まで鍛えられていたのに加えて、ここでルイーザに鍛えられたことでレベルが上がったと見るべきだろう。
基本的に職業は特殊職を除き一律レベル10になるとその上級職になれる。
とは言っても、上級職の中には複数の職をマスターしないといけない職もあるようだから一概にはそうとも言い切れないらしいが、今回エレンが【メイド】の上級職である【上級メイド】になる分にはなんの支障も無い。
ちなみに細かいレベルの確認は教会や王家にある鑑定石みたいなのを使う必要があるが、10になった時は、なんとなく上限に達したってことがわかるんだとか。
エレンにとっては初めてのことだったが、基本的な知識として知っていたので、実際に経験したときに『あぁこれか』と思う程度にはわかりやすい現象だったらしい。
「それで、次回のお休みは教会に行って職を変えようと思うのですが」
「あぁ、そういえばそんなシステムだったか」
「はい。そんなシステムなのです」
「ふーむ」
そんでもって、転職するためには教会でなんらかの儀式を行う必要があるそうだ。この辺はあれだ。なんと言うか、非常にゲーム的な感じで慣れないところはあるが、それがこの世界の理だと言うのなら是非もなしってな。
「わかった。つまり俺はエレンに外出許可を出せばいいわけだな?」
ついでにマルグリットをエレンの護衛としてつければ、彼女の護衛の経験にもなるって寸法だろう。
いやはや、未だにこの世界の常識を理解していない俺のために、こうして然り気無く話を向けてくれるエレンには感謝しないといかんな。
そう考えていた時期が俺にもありました。
「それも有りますが、職業を変える前にご主人様のご意見を伺いたいと思いまして」
「ん? 俺の意見?」
はて? 何かあるのか?
「はい。と言ってもご主人様のご意見を伺う前に【メイド】という職業についてご説明させていただく必要があるのですが、よろしいでしょうか?」
んん? メイドについてとな?
「よくわからんが、頼む」
聞いてみないことには判断のしょうがない。それに多分だがここで『話を聞かない』という選択をしたたらエレンは悲しい顔をしてしまいそうだし。ここは『説明を聞く』一択だろう。
「かしこまりました」
そう判断した俺に対し、エレンは一度丁寧にお辞儀をしながら【メイド】という職についての説明を始めるのであった。
~~~エレン説明中~~~
「……なるほどなー」
【メイド】の上級職はまんま【上級メイド】だが、その上の【侍女】になるためには戦闘職や魔法職を修める必要がある、と。
確かに通常【メイド】は召し使いだが【侍女】はそれを管理する総合職だもんな。それに主君のサポートには護衛も含まれることがあると考えれば、腹心たる【執事】や【侍女】に戦闘技能は必須なのか。
つまり【侍女長】であるルイーザもそれなりに戦闘はこなせるわけね。怖や怖や。
つーかこの場合はあれだろうな。この世界を作った神か何かが『執事やメイドは強い』ってお約束を踏襲していると見なすべきだろうか?
それはともかくとして。
「はい。一般にはスカウト系を修めることで【アサシンメイド】が。戦士系を修めることで【バトルメイド】が。魔法職を修めることで【マジカルメイド】が。といった感じで修めた職業と関係がある特殊職が派生するそうです。そして、それらの特殊職を経由しなければ【侍女】にはなれません」
「ほほー」
マジカルメイドって。ネーミングセンスがアレだが、それを抜きにしても中々に深いシステムだねぇ。
おそらく一般家庭出身の場合は、戦士職や魔法職としてのレベリングができないから【メイド】から【上級メイド】になり、そのまま【上級メイド】で一生を終わらせるのだろう。
だが貴族の娘が【メイド】になった場合はその限りではない。
貴族の妻となるなら、ただの召使でしかない【上級メイド】よりは、特殊な能力を持ったほうが良いだろうし、使用人を束ねる妻としても【侍女】が欲しいだろうさ。
「ですが、これは私が【侍女】の職に就くことが前提になります」
「ん? どういう……あぁ。そうか。別に【侍女】に拘る必要は無いってことか」
「そうなんです。それでご主人様のご希望を確認したいと思いまして」
「んー。エレンの好きに……いや、ちょっと考えさせてくれ」
「はい。もちろんです」
危ない危ない。そうだよな。ヘレナは出仕しているだけだからまだしも、エレンは王家に身売りしたあとで俺が貰い受けた形だから、王国としてはすでに俺の所有物なんだよな。
だからここで『エレンの好きにしろ』と言ってしまえば、それは彼女の自由意思を尊重したってことにはならない。むしろ彼女に興味を持っていないということになってしまう。
そういった事情から、俺はエレンに『俺のためにどうなってほしいのか』ということをきちんと示す必要があるのだ。
俺に限らず、向こうの人間にしてみたら人権とかそういうのを気にしてしまうような制度ではあるが、これがナーロッパの貴族社会だ。故に、これに関してはもう割り切るしかない。
そんで、今の問題は彼女の職業についてだな。
具体的に言えば、今のままだと、エレンは『戦闘や補佐ができるメイド』になるのだろうが、今後の職業の選択によってはそれを『メイドとしても働ける戦闘職』にすることもできるということか。
これは似ているようでまるで違う。
一応選択肢としての一つに、複数の一次職をレベル10にして転職を繰り返し『簡単な戦闘技能とスカウト技能に加え、初歩的な回復魔法を習得したメイド』という、ある意味本当の【オールワークスメイド】というのも存在するらしい。
まぁ名前は格好良いが所詮は器用貧乏。手間の割には使い道が限られているので、貴族社会ではあまり好まれることはないようだ。
そりゃそうだよ。人がいないならまだしも、分業ができる程度の人員が居るならそんなのは交代要員以上にはならんもん。俺だって我が家の筆頭女官であるエレンをそんなのにする気はないし。
あぁそれと、可能性として言うならエレンに戦闘職を修めさせて、今後エレンに【メイド】とは関係ない、全く別の仕事をさせるという選択肢もある。
だが、この場合はこの場合で問題がある。
一番の問題は累計レベルに上限があるってことだな。そうである以上、これまでの【メイド】としての経験値を無駄にするのは勿体無い。
あとの問題は、個人の資質だ。
そもそも最初の職業に【メイド】を選ぶ女性というのは、当然天職が得られなかった女性である。だから無理やり戦闘職に就けたところで才能が開花するということはない。
また家柄や周囲の環境の都合上、戦いから縁遠い女性が多いというのもある。
身近な例で言えば、まんまエレンだな。彼女はなんやかんや言っても男爵令嬢だし、これから急に本格的な冒険者のような職業に就くのは厳しいだろう。
そんなこんなを考えれば、やはりエレンには【メイド】を活かせる職で、尚且つ俺にとっても都合が良い職業になってもらうべきだ。
……よし。
「エレン」
「はい」
「俺としてはエレンには【スカウト】系のスキルを覚えてほしいと思う。頼めるか?」
戦闘職は専門の護衛騎士が居るからそれほど重要ではない。魔法にも興味が無いわけではないが、それより先にエレンにも一人で戦える力があったほうが良いし、なにより魔法職だと専門の勉強が主な仕事になってしまうのでエレンの本来の職務から外れてしまう。
しかし【スカウト】なら、レベル上げのために俺に付き従うこともできるし、ナイフを使う職業だから【メイド】との親和性も低くないみたいだから、その辺の無駄がないのも良い。
それに、やっぱりメイドと言えばナイフだろう。
古事記には書いていないが、東の方の伝記にはそう書いてある。
婦長? 知らんなぁ。
そんな俺の内心はともかくとして、だ。
エレンには『俺に従う』という以外に選択肢がなかったとは言え、それでも腐ることなく俺を支えてくれるのは正直ありがたい。だからこそ俺は『彼女の未来を考えた決断』ではなく、あくまで『自分の都合』を押し付けることにした。
……それが彼女の望みだと信じて。
「はい。ご主人様がそれを望むなら、私に否はありませんよ」
そんな俺の問いに対し、エレンは笑って承諾の意を示してくれた。
「そうか。(あぁ。なんていい女だ)」
「きゃっ!」
そのエレンの表情と言葉で色々昂ぶった俺は、エレンをどこぞの地上最強の生物が妻を抱きしめるが如く強く抱きしめ、そのままお互いが満足するまで高級寝具の使い心地の確認作業を行うことにしたのであった。
神城君がクラスチェンジすると思った? 残念だったな!
このあと滅茶苦茶○○○したもよう。
まさか20万字を超えるまで職業やレベルやステータスの設定が公開されていなかったとは……読めなかった。この作者の目をもってしてもっ! (本文見直せ)
え? 神城君のレベルアップ? それに関してはもう少しあとなんじゃよってお話
―――
詳細? ノクタ? はて。一体何のことやら?(ΦωΦ)?
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