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23話。あぁ薔薇色の人生

文章修正の可能性有り

王都内某所


ドサッ。


神城が王都の連れ込み宿の設備の使い心地をチェックしているころ、マルレーンたちに担がれている間に意識を取り戻した少年たちは、とある建物の中のロビーのような場所に音を立てて投げ捨てられていた。


「痛っ!」

「くそっ!」

「な、なんだここは!」

「ぼ、僕をどうする気だ!」

「さっさと縄をほどけ!」

「あの卑怯者はどこだっ!」


身動きができないように縛られているにもかかわらず少年たちは口々に騒ぎだす。


そんな彼らの周りには、彼らを運んできた従者だけではなく、屈強な筋肉質の男から、すこし腹部がだらしない男など、複数の男たちが居た。


「「「……」」」


その男たちは、最初は少年たちに対して獲物を品評するかのような目を向けていたが、少しするとその視線を外し、仲間内で口々に語りだす。


「うほっ。良い男」

「ほう。本当に貴族だぜ」

「それも若くて活きが良い」

「うむ。良い肌をしているな」

「俺、実は気の強い子を屈服させるのが好きなんだよ」

「「「俺も俺も」」」


そして彼らはまたその野獣のような視線を少年たちに向ける。


「「「ひぃ!」」」


その舐めまわすような視線から、明らかに自分たちを獲物としてしか見ていない男たちを見て、ようやく少年たちは自分がどこに居るのか悟ることになると同時に、自分が洒落にならない状況に置かれていることも理解した。


「ぼ、僕は男爵家の息子だぞ!」

「僕もだ!」

「ぼ、僕の家は準男爵だけど、それでもただで済むと思うな!」

「わ、私は子爵家だぞ! 分かっているのか!?」


「「「「ハハッ」」」」


必死で状況を打開するために家柄を使って脅しをかけようとする若者たち。しかし周囲の男たちにとって、今の少年たちは食材でしかない。それも滅多に食することができない高級食材である。


故に、こうして自分が貴族の家の人間であることを吹聴すればするほど、自分の価値を高めてしまうことになるのだが、少年たちにはその自覚が無いのか、ただただ必死で己の家柄(産地)を主張する。


「彼らはこう言ってるが本当にいいのか? 俺たちは貴族の子供だってかまわず喰っちまう男だぜ?」


そんな野獣共が必死でなけなしの理性を働かせて、目の前でビチビチと跳ねる活きのいい獲物を襲うのを我慢している中、少年たちの主張を聞いて万が一の可能性を考慮したのか、館の主人である青い服を着こなした()()()が『後から面倒事は御免だぞ?』という意味を込めて食材の提供者に確認を取る。


すると食材の提供者(マルレーン)は、若者たちに対して精肉される前の仔牛を見るような目を向けながら、


「あぁ。ウチのご主人様が言うには『侯爵様にたてつくガキに現実を教えてやる』ってさ。勿論侯爵様も存じ上げていることだから問題ない。4日後くらいに迎えに来るまでに殺さない限り、好きにしてくれて構わないよ」


と言い放った。


それを聞いた()()()は「へぇ。なかなかどうして。侯爵様も話がわかるじゃないの」と獰猛な笑みを浮かべながら、横目で貴族の子供たちを見て「どう料理するか」と呟きながら舐めるように見回していた。


「……」


どこぞの侯爵にしてみたら風評被害も良いところだが、マルレーンはそのことには一切触れず、無言で懐から一つの小瓶を取り出した。


「それは?」


「特製の媚薬成分が内包された潤滑油だってさ。なんでも痛みすら悦びに変わるほどの効果があるんだとか。あとで感想を聞かせてほしいって話だったね」


「ほほう! それはそれは。至れり尽くせりってヤツだな!」


最初は怪訝そうな顔をした()()()だったが、小瓶の中身を知るとその表情が一転。ニッポリ……にっこりと破顔して瓶を受け取ったかと思ったら、周囲の男たちに対して「侯爵閣下からの差し入れだぞー!」と大声で告知する。


……この時点で、彼らの中でどこぞの侯爵への好感度は上昇しまくりであるが、それを当の侯爵本人が喜ぶかどうかは誰にもわからない。


それはともかくとして。


「そんじゃ、よろしく頼むよ」


「おうよ。任された!」


()()()に食材と小瓶を届けたことで、自分の仕事は終わったと判断したマルレーンは、今も無言でキョロキョロしているマルグリットや無言で青い顔をしている従士たちを連れて、足早に去っていく。


「「「「「「た、助け……」」」」」」


バタン。


「「「……」」」


若者たちの声を遮断するようにドアが閉じると、一瞬の静寂が室内を包みこんだ。


「おおっしゃぁ! 侯爵様の許可が出たことだし、遠慮なくイクぞぉぉぉぉ!」


……かと思えば、次の瞬間、館の主が半裸になって野獣のような叫び声を上げる。すると周囲の男たちも「もう我慢できねぇ!」と言わんばかりに獣性を剥き出しにして声を張り上げた。


「「「「うほぉぉぉぉぉ!!」」」」


「「「ひ、ひぃぃぃぃ!!」」」


……マルレーンらが退出した後、残された者たちの空気は綺麗に真っ二つに分かれた。


片や『侯爵様』と言う少年たちを遥かに凌ぐ権力者からのお墨付きが出ていることを知らされ、喜びの雄叫びを上げる野獣共。片や上位者から本気の不興を買ったことを理解して、その表情を絶望に染める若者たち。


そう、もはや貴族の若者たちに救いなどない。


外部から迎えが来るのは()()()4日後。 


それまで彼らが生き延びるためには『生意気な貴族の子供』という希少価値の高い商品として扱われながら、未知のエリアへと足を踏み入れるしかないのだ!




~~~




――そこは王都のどこかにあるという、異世界人によって谷中日暮里に似せて作られたとも言われる、知る人ぞ知る会員制の紳士淑女の社交(ハッテン)場にして、森の妖精が住まうとされる秘密の館。


その名も【ラ♂ヴィ♀アン♂ローズ】


ここに入り浸る会員たちは常に新たな刺激に飢えており、現在その会員数は王都近郊でおよそ114514人にのぼるとか。


そしてこの日、会員である紳士やご婦人(ご腐人)の下に『期間限定! 生意気な貴族の若者が体験入学!』という連絡が入ると、件の屋敷には屈強な男性を連れたご婦人(ご腐人)や、自分の手で若者の体験入学を彩って上げようとする多数の心優しき紳士淑女らが集結することとなった。


それから数日間。屋敷の一室からは「アッーー!」と言う声が絶えることはなかったという。


こうしてヘレナとエレンを拐って嬲ろうとした若者たちは『嬲る』ということがどういうことかを体と魂に刻まれることになったそうな。


彼らがこの救いのない世界において、自らに降りかかる様々なモノの全てをチャンスと認識し、未知のエリアに到達できたかどうかは誰にもわからない。


ともあれ、初日から数えて()()()。体験入学を終えた若者たちは両親の待つ自宅へと帰還することになるのだが……彼らの両親たちはこの間、ローレン侯爵家から『厳重注意』という名の圧力を受けており、色々と変わり果てた息子の報復を企むどころではなかったという。


……さらに数日後、ラインハルトの下に数人の貴族から感謝の言葉と共に、とある秘密倶楽部への会員証が贈られることになる。


苦笑いをしながら()()を受け取ったラインハルトが()()を利用したのかどうかは、また別のお話である。



具体的な描写をしたら作品が吹っ飛ばされるので、今回はこんな感じになったのもシカタナイネ!


アヴェ男爵? そんなのは居ない。いいね?


秘密の社交場をルイーザが何故知っていたのか、それは誰にもわからない。


迎えに行くのが二日遅れちゃうなんて、マルレーンさんったら、ホントうっかりさんなんだから!ってお話。


---


( ゜д゜)

( ´゜д゜)

( ; ゜Д゜)

(  Д ) ゜ ゜

( ; ゜Д゜)

( ´゜д゜)

( ゜д゜)

( ゜д゜)ハッ!


よ、4000ポイント超えた?


いや、読者様にクレクレしたのは確かに作者なのですが、まさかここまで……


一体何が読者様の琴線に触れたのやら。やっぱり薬剤師っぽいことをしたからですかねぇ。


しかしその次の話がまさかのコレ!

つーか投稿しづらいわッ!


こんな作品ですが、お気に召しましたら評価の方よろしくお願いします!



閲覧・ポイント評価・ブックマーク・誤字訂正ありがとうございます!

 




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