9話。前略。妹の視点より①
この書き方は難しい……
文章修正の可能性有。
私はへレナ・トロスト、15歳です!
今私は、お姉ちゃんと一緒に神城準男爵様が住むお屋敷に着いたんだけど、思ったより大きなお屋敷だったのでびっくりしてます。
このお屋敷をただで貰ったっていう話だったから、やっぱり準男爵様が侯爵様の信頼する寄子だって言うのは本当なんだなぁって思いました。
あぁいや、お姉ちゃんの言葉を疑ってたわけじゃないんだけど、流石に会って10日も経っていない人をベタ褒めされてもねぇ。
準男爵様のことを考えてるときはポ~って感じになるし、お屋敷に近付くにつれてソワソワしたり、急に身嗜みを気にしたりとかしだすしさぁ。
どこからどう見ても恋する乙女って感じじゃん?
恋は盲目って言うし、流石に過大評価を疑っちゃうのは普通だと思うんですよね!
ま、そうは言っても、このお屋敷を見ればね。少なくとも侯爵様との繋がりは信用できましたよ? あとは準男爵様の人間性です!
お姉ちゃんの態度を見れば無いとは思うけど、私の体目当てって可能性だってあるんだから。
……う~嫌だ嫌だ。たまに屋敷に来てた人たちからの視線を思い出しちゃったよ。
最初は気のせいだと思ったんだよね。私ってお姉ちゃんと比べたら綺麗ってわけでもなければスタイルも良くないし。
だけど時間が経つにつれて、アレは私を食い物にしようとしてる目だってわかるようになったんだ。
って言うかさ、普通『金は払うからさっさと出仕させろ』なんて言う? それも私の目の前でニタニタしながらだよ?
あれはもう本っ当に気持ち悪かった! いや~もしもお兄ちゃんがあいつに私を売ろうとしたら、多分私はお兄ちゃんを殺して逃げ出すか、普通に逃げ出してたね!
今考えれば『そんなことしてもなんにもならない』っていうのはわかるけど、あのときは本気で逃げようとしてたからなぁ。
「ご主人様。エレンです。ただいま戻りました」
おっと! 嫌なことを思い出してたら、お姉ちゃんが入口に備え付けてある室内用通信機を使って、準男爵様に連絡を取ってるよ。
う~ん。普通なら他の使用人さんを呼ぶんだろうけど、まだ使用人さんがいないみたいだから、直接準男爵様に連絡を入れるのもしょうがないよね!
あ、でもでも、もしかしたら侯爵様のお屋敷から教育係の人が来てるかも知れないんだっけ? だけど、流石に準備とかあるだろうからそんなに早くは来られないよね~。
そうなると、暫くはお姉ちゃんに教えてもらうのかな?
それはそれで楽しそう! なんて考えていたら、通信機の向こうから男の人の声が聞こえてきました。
『おぉお疲れさん。妹さんは大丈夫だったか?』
むむむ? お屋敷に戻ってきたお姉ちゃんに一声掛けるのは当然として、すぐに私のことを聞いてきたぞ?
これは、私を引き取るためにお屋敷を留守にしたお姉ちゃんに対しての労い? それとも準男爵様も私を狙ってたから、その成果の確認? もしくは他に何か意図があるのかなぁ~?
「はい。お陰様でどこぞの変態の下に行く前に、こうして保護することができました!」
『そうか。それは良かったな』
「はい!」
お姉ちゃん……自分だって色々大変だったはずなのに、ずっと私を心配してくれてたんだね。
「あ、それとですが、兄も婚姻に承諾いたしました」
うん。お兄ちゃんが完全におまけだけど、仕方ないね!
『ほほ~。それじゃその辺の報告も一緒に聞こうか。裏の鍵は開いてるから、そのまま来ていいぞ』
「かしこまりました」
お姉ちゃんはそう言って通信機の向こうに居る人に深々と頭を下げてから通信を切りました。
……声だけ聞いたら普通に優しそうな人だよね。
最初に想像していた筋肉ムキムキで荒っぽい感じの軍人さんじゃなさそうなのは良いんだけど、それならどうやって侯爵様との伝手を得たんだろ?
「それじゃヘレナ、ご主人様をお待たせするのは良くないから早く行きましょうか?」
「あ、は~い!」
言ってることは正しいけどさぁ。今のお姉ちゃん『お待たせするのは良くない』って言うより『早く会いたい!』って感じなんだよね。
はぁ~お姉ちゃんが幸せそうなのは良いことなんだけど、なんだかなぁ。
そんななんとも言えない気分になりながらも、私はお姉ちゃんと一緒にお屋敷の中に入ったんだけど、そこには私が見たことが無い世界が広がっていたんです。
「はえ~。やっぱり侯爵様って凄いよね!」
お屋敷の中に入った私は、まず細かい意匠や調度品の質の高さに驚かされました。
細かいお値段はわからないけど、普通に置かれてる壺とか、普通に飾られてる絵を見れば、それ一つで家が買えるくらいの高級品だっていうのがわかります。
「これが本当の貴族のお屋敷かぁ」
貧乏男爵の家でしかないトロスト家では見ることもできない調度品に思わず溜め息が出てしまいました。
そんな高級品をポーンとお屋敷ごと準男爵様に差し上げるんだから、侯爵様の凄さがわかります。
「そうよね。だからこそ、侯爵様に認められたご主人様も凄いってことは理解してね?」
「あぁ、うん。そうだよね」
正直お姉ちゃんからの『準男爵様凄いアピール』に疲れてきた私としては「あ~はいはい。そうですねー」って言って流したいところなんだけど、実際に凄い人なんだろうから反論もできないんだよね。
それにお姉ちゃんの気持ちもわかるんだ。
もしも私が失礼な態度を取ったせいで侯爵様に気に入られている準男爵様から嫌われたら、私もお兄ちゃんも、そしてお姉ちゃんも大変な目に遭うんだもんね。
だから、私にも敬意を持ってもらいたいからこそ、ことあるごとに準男爵様を褒めてるんでしょ?
それはわかるんだけど、今の『準男爵様大好き!』って感情を隠しもしないお姉ちゃんが言っても説得力が無いと言いますか、逆に不安になると言いますか。
とりあえず、不安を表情に出したままご対面するのは失礼だよね? と考えた私は、なんとか準男爵様が自室にしているという二階のお部屋に着く前に、その気持ちを抑えようと努力をしようとしました。
……まぁ、階段を登るにつれて上機嫌になるお姉ちゃんを見てたら、色々と心配をしている自分が馬鹿みたいに思えてきて、結局『不安』という気持ちよりも「ここまでお姉ちゃんが好きになる人ってどんな人なんだろ?」っていう『興味』のほうが強くなったんですけどね。
それはそれで失礼な考え方だって気付いたのは、ご挨拶が終わってからのことだったんだけどさ。
長くなりそうなので前後編の分割でごわす。
エレンさんの視点? ピンク一色になりそうなんでちょっと……ってお話。