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幕間。不遇職は伊達じゃない!

文章修正の可能性大

クレーン(英: crane)あるいは起重機きじゅうきとは、巨大なものや重いものを吊り上げて運ぶ機械である。


日本では、クレーン等安全規則により「クレーンとは、次の2つの条件を満たす機械装置のうち、移動式クレーンおよびデリック以外のもの」と定められている。


荷を動力を用いてつり上げ(人力によるものは含まない)

これを水平に運搬することを目的とする機械装置(人力によるものも含む)

したがって、荷のつり上げのみを行う機械装置はクレーンではない。

荷のつり上げを人力で行う機械装置は、荷の水平移動が動力であってもクレーンではない。

荷のつり上げを動力で行う機械装置は、荷の水平移動が人力であってもクレーンである。


広義には移動式やデリックを含むものをクレーンと呼び、狭義には固定式のみのものをクレーンと呼ぶ。


Wikipediaより抜粋


ちなみにウインチで釣り上げるものの、水平移動をさせないエレベータはデリックに分類されるので、狭義の意味ではクレーンには分類されないが、広義の意味ではクレーンとも言える。


つまり広義の意味でのクレーンとは、UFOキャッチャーのアームから超大型のタワークレーンまで。重機だけでなく、全てのアームを持つ機械に対して適用される言葉なのである。




―――



「どうしたらいいんだ……」


異世界召喚の衝撃から一夜明けた日。【クレーン技師】というレアなんだか不遇なんだかが分からない職業を得た少年である濱田仁志は、表面上は朗らかに勝ち誇っていたものの、その実、一人で思い悩んでいた。


それと言うのも、彼にはクレーンについての知識がまるでなかったからだ。


いや、正確には、一般的なクレーン車くらいは知っているが、それ以上の細かいことを知らないのだ。


実際、彼の年齢でクレーンについての専門知識が有るような人間はほとんど居ない。たとえ実家の家業が大工だろうがクレーンなど使わないし、父親が現場監督でも、家にクレーンを持ち帰ることなど無いのだから当然と言えば当然である。


それでも知識を持っているとすれば、それは度を越した重機好きか、ロボ系に憧れたか何かで妙に重機に詳しくなった小学生くらいではないだろうか?


残念ながら濱田少年はそのどちらでもなく、これまで極々普通に過ごしてきたのに、なぜかクラス転移に巻き込まれてしまい、なぜか鑑定で【クレーン技師】というレアな職業が出ただけの、どこにでもいる少年であった。


それがちょっと調子に乗ったら【勇者】になったクラスメイトを含めたほとんどの男子生徒が自身に羨望の目を向けてしまい、それを見た国王までもが自分を【勇者】と同列に扱うようになってしまったのだから、彼に掛かるプレッシャーは如何程のものか、他人には想像もすることはできない。


元々彼の居たクラスは、極々普通の、何処にでもある学校の、何処にでもある一クラスであった。


勿論スクールカースト的なものはあったが、それとて特定の誰かが虐められていたりしたわけでも無ければ、ラノベなどでよくいるような勝手な正義感をひけらかし、他人に何かを押し付けるようなテンプレを踏襲するような正義感の溢れる少年や、ヒロイン的な少女に特別扱いをされている陰キャも居ない、本当に極々普通のクラスだった。


それがある意味で悪い方向に作用してしまった。


もしも昨日の時点で周囲の連中が【クレーン技師】である濱田少年のことを不遇職であることを理由に足手まとい扱いしてくれていたら、国王だって彼をただの現場作業員として見てくれたのかもしれない。


だがもう駄目だ。


昨日の晩餐会で友人から「【クレーン技師】って何ができるんだ?」と聞かれた際、濱田少年は「よくわからないけど『クレーン召喚』ってのがあるな」と言ってしまったのだ。


当然その言葉を聞いた男子生徒は大盛り上がりとなり、その騒ぎに国王を含めた周囲の貴族も「何事だ?」と思いながらも、話題の中心にいた濱田少年を確実にロックオンしたことは、そのあとの待遇からわかっている。


「なんであんなこと言っちまったんだよぉ……」


一夜明けた今では、濱田少年は昨日の自分の馬鹿さ加減に腹が立ってしょうがなかった。それは別に年頃の男子生徒がよくやるように、無駄に背伸びしてできないことを言ってしまい、結果として引っ込みがつかなくなってしまったからではない。


「俺のバカ! 『自分のスキルを周囲に話さない』なんて、異世界転移の基本じゃねぇか!」


そう。別に濱田少年は嘘を吐いてはいない。実際彼には『クレーン召喚(小)』というスキルがある。では少年が現在何に絶望しているかと言えば……


「なんだよ、クレーン召喚って。なんだよ(小)って」


これであった。


神城が考えているように、職業スキルは適性や才能に近い。


たとえば火魔法師なら最初から火魔法(初級)というスキルを得ることになるのだが、これは極めて小規模な火を産み出すスキルであって、全ての火の属性魔法を使いこなせるというスキルではない。


この場合、火魔法師は火に関する属性魔法についての適性を得るので、火魔法に類する技術の習得や魔法効果にも補正がかかるという利点があるものの、使いこなすには相応の知識と技術が必要なのだ。


――ちなみに、初級の火魔法はファイアーボールといって小さな火の玉を生み出す魔法であるが、これを強化しようとして延々と空気を送り続けてファイアーボールを高温にしようとすると……術者が酸欠になるか、火が生み出す高熱による火傷で術者の集中力が乱れ、魔法が暴発して大惨事となる。


これは物理的に考えても当たり前の話なのだが、なぜか召喚されたばかりの人間はその失敗を繰り返すので、異世界から魔法使いを召喚した国は、きちんと常識を教育するようにというガイドラインまでできていたりするのだが、それに関しては今は良い。


何が言いたいのかというと、スキルも魔法も必要な知識を身に付けなければその効果を十全に発揮することはできないということだ。


だからこそしばらくは【聖女】も【賢者】も基本的な常識を知るための授業に専念し、そこで先達から様々な知識を得るという段取りが組まれている。勇者に関してはできることが多すぎるので、まずは騎士による戦闘教育。それが一段落したら魔法の教育を行い、それぞれが一定のラインに到達したと判断されたら実戦訓練に赴く予定だ。


……これにより、少なくともフェイル=アスト王国の上層部は、自分で呼び出した【勇者】に対し『現金50ゴールド・こんぼう×2・ひのきのぼう・たびびとのふく』を与えて魔王退治に旅立たせるような外道ではなかったということが証明されたのだが、今の問題は王家の【勇者】への待遇ではなく濱田少年の【クレーン技師】に関してだ。


現時点で【クレーン技師】という職業に付随しているスキルは『クレーン召喚(小)』・『クレーン解体』・『クレーン修理』・『クレーン組立』・『クレーン操作』・『玉掛け』の6種である。


この時点で、日本の、否、世界中のあらゆる建設作業現場で引っ張りだことなるスキルであることは間違いないのだが、問題はここは異世界であり、クレーンの知識を与えてくれる存在など居ないということだった。


それに知識としても「知ってるか? エレベータも広義の意味ではクレーンなんだぜ!」と 言われても、へぇ。としか返せないし、「クレーンで何ができるのか?」と聞かれても「あれだよあれ、工事現場のやつだよ」といった程度で、具体例を出せる高校生はかなり稀なことは間違いない。


さらに判断に困るのが、先程から濱田少年が頭を抱えている『クレーン召喚(())』である。


元々クレーンの歴史は古く、古代メソポタミアやローマでも使われていたということはクレーン好きの人間でなくとも知っている常識でもあるので、クレーンの名前や外見に関しての認知度は高いと言っても良く、世界的な知名度で言ってもケルトの怪人青タイツよりも間違いなく上だと断言できる。


しかし、その当時のクレーンの大きさは? と聞かれたらどうだろう? これに関しては、実際に現場でクレーンを使っているガテン系の兄さんや現場監督に聞いても、正確な答えが返ってくる可能性は極めて低いと言わざるを得ない。


それがクレーンビギナーでしかない学生たちなら尚更であろう。


……つまるところ、現在濱田少年が気にしているのは『小』ってどれくらい小さいのか? ということであった。


先述したように、なにせクレーンの種類は用途や地方・時代によって千差万別。小さいので言えばUFOキャッチャーのアームに始まり、大きいのは最大で数百メートルに届くものもあるのだ。


本当に大きなものから見たら、一般の高校生がクレーンで想像するような、トラックに積まれている4メートルのユニッククレーンや、消防の工作車に付いている4メートル~10メートル程度のクレーンも『小』だろう。


しかし、あれはあれで数百キロ~数トンの重量がある重機である。もしも軽々しく召喚した結果、誰かがあれに押し潰されてしまっては濱田少年には責任が取ることができないし、そうでなくとも王城の一室でクレーンを召喚し、家具を破壊したり、床が抜けてしまったらどうなるか。


駆けつけてきた騎士たちに「……攻撃魔法としては間違いなく優秀だ」とでも言えば良いのだろうか?


確かにクレーン自体がある意味鈍器のようなものだし、重量というのはそれだけで攻撃魔法としては凶悪な威力を発揮するのも事実ではある。だがクレーンをそのように使おうものなら、普通に業界の人に叱られてしまうし、なによりクレーンの重量で敵を倒す【クレーン技師】ってどうなんだ? という話になってしまう。


いや、元の世界のクレーン業界の怒りはともかくとして、召喚されたクレーンの種類によっては様々な危険が予想されるので、下手にスキルを試せないというのが問題なのだ。


ならば大々的にやればいいじゃないか? と思うかもしれないが、もし外で実験をするとなった場合、絶対に【勇者】や国王たちが見学しようとするだろう。


そこでもし召喚できたのがUFOキャッチャーのアームだけだったら……そのときは間違いなく不遇職のテンプレが濱田少年を襲うことになる。


それはそれで、ある意味異世界召喚の醍醐味ではある。しかし濱田少年はわざわざ苦労してまでテンプレを踏襲したいと思うマゾではないし、そもそも追放ではなく暗殺される可能性の方が高い。


そうなった場合『後でざまぁしてやる!』どころの話ではないので、濱田少年はなんとかして召喚できるクレーンの大きさを調べる必要があるのだ。


さらに言えば、濱田少年には他に気になるスキルがある。


それは『玉掛け』だ。


『クレーン』に『玉掛け』という、思わず股間がヒュンとなるような、この男の根源的な恐怖を煽るフレーズをいったいどう判断すれば良いのか、濱田少年には皆目見当がつかなかった。


もしかしたら社会人である神城に聞けば何かしらの意見を貰えたかも知れないが、王家としては特殊技能をもった濱田たちには他の召喚者と接触してほしくないらしく、特に神城とは接触をしないようにやんわりと釘を刺されている。(実際は侯爵と会食をしたあとで、自分付きのメイドさんと王城の寝具の使い心地を試していたからだが、濱田にはそこまで説明はされていない)


「くそっ。いったいどうしたら良いんだっ!」






――この日、王城の一室には、突如として異世界に転移させられた挙句、周囲に己のスキルについての意見を聞くこともできず、軽々に実験もできないスキルを得てしまったことに頭を抱える少年が居たという。


これは後に初代マクレーン伯爵としてフェイル=アスト王国だけでなく、大陸中に名を轟かせることになる漢、濱田仁志の若かりし頃のお話である。

うーむ。イマイチ文章がうまく纏まらない。

これは作者にクレーン愛が足りないからでしょうかねぇ。

と言うか、一話の中でこんなにクレーンクレーンと連呼することになるとは思いませんでしたよ。


恐るべしクレーン。


しかしクレーン技師は知る人が知ればヨダレを垂れ流すレベルのチートですよね。


そんな大ハードな人生を歩むクレーン技師の少年、濱田仁志。彼のあだ名は勿論ダウソダウソですってお話


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