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18話。新しい朝が来た①

と、投稿だぁぁ!

文章修正の可能性大。

翌朝、目覚めると同時に昨夜の夜戦を思い出したのか、顔を真っ赤にしたエレンが急いで服を着て部屋から立ち去った後、神城の下にローレン侯爵から「朝食を共にしないか?」という旨の呼び出しが入った。


その呼び出しを受けた神城は部屋に備え付けられていた簡易なシャワーを使って簡単な身嗜みを調えた後、侯爵に指定された部屋へと訪れた。


「お待たせいたしました閣下」


「いや、(けい)の立場を考えれば、朝からこうして呼び出すのは不躾であったと反省していたところだ。こちらの不調法を許されよ」


「……恐れ入ります」


ラインハルトから見れば神城は、突如として異世界から召喚された翌日だ。更に言えば、王家から付けられた侍女との夜戦の後だろうから、最低限の身嗜みを調えるのに時間が掛かるのも当然の話であるので、自らを待たせたことを咎めるつもりはなかった。


……女の匂いを漂わせたまま侯爵である自分との会談の場に現れるような阿呆なら、最初から相手になどしない。という思いもある。


そんな彼の思いを察した神城も、特にこの話題に対して深入りすることなくラインハルトからの謝罪を受け入れた。


言ってしまえば社交辞令の応酬ではあるが、こういったものは話の内容ではなく「互いに最低限相手を尊重する」という意思を見せることが重要なので、無駄な話と言って切り捨ててはいけない。


そんな社交辞令のいろはについてはともかくとして。ラインハルトは朝食を食べながら神城を呼び出した理由について話を始めた。


「昨晩陛下とも話し合って、私が卿を保護することが正式に決定した」


「それはそれは。ありがとうございます」


「お互いに利益があることだからな。更に陛下から、卿を近いうちに男爵に叙するというお言葉を賜ることができた。これは宰相も認めたことなので、決定事項でもある」


「……男爵に、ですか?」


「そうだ。何故かわかるかね?」


急に告げられた陞爵の報告に、喜ぶよりも訝しげな顔をする神城だったが、少し考えてすぐにその答えに辿り着く。


「……外交を任せるには準男爵では貫目が足りぬ。とお考えでしょうか?」


「ふむ。流石に理解が早いな」


「恐れ入ります」


ペコリと頭を下げる神城に対し、ラインハルトは「そこまでわかっているなら話が早い」と頷いてもう一つの意図を明かす。


「付け加えるなら、私だけでなく王家にも恩を感じるように。ということだな」


「……なるほど」


正面から言われて。神城は王家の抜け目の無さを理解した。政治闘争に明け暮れる貴族は、貸しを作る機会を見逃すことはないということだ。


「理解してもらったところで卿の待遇の話をさせていただこう」


「はっ。よろしくお願い致します」


「まず、卿には王家より法衣子爵の中でも上位の者と同等の給金が支払われる。まあこれは外交官としての給金も加味した結果だな」


具体的にはエレンの父や兄の給金の倍の金額であるが、そのことは流石の神城も理解できていない。


「それはそれは、ありがたく頂戴致します」


実際神城にはそれがどれだけの金額になるかはわからなかったが、これに関しては国としての見栄であり、恩を売る行為であると考えたので遠慮や辞退をしようとは思わなかった。


そんな神城の態度を見たラインハルトは、きちんと王家の意図を理解していることに満足げに頷き、言葉を紡ぐ。


「うむ。さらに我が侯爵家からも、同等の金額を出させてもらう」


「……よろしいので?」


ただでさえ上位の子爵に相当する金を貰っているのに、さらに倍? 流石に貰いすぎじゃないか? と高い給料に付随する責任や職務に警戒する神城に対して、ラインハルトは朗らかに笑いかけた。


「王都の法衣子爵程度の給金であれば問題は無いよ。それに、卿が提案した常備薬の構想ではそれ以上の利益を見込めるからな。さらに言うなら卿は我がローレン侯爵家の食客だ。そのくらいはしないと私の立場が無い」


「あぁ、なるほど。そういう訳でしたら、ありがたく頂戴致します」


神城としては、自分が正式に準男爵となれた時点で最低限の身分保障はされているし、金銭に関しても侯爵の食客となったうえに常備薬システムの恩恵や自身の職業もあるので、それほど深くは考えていなかった部分がある。(必要最低限は支払われるという確信があった)


しかし、王国としてはそうも言ってられない事情がある。


それと言うのも、神城は国家として正式に爵位を与えることを認めた相手であり、さらに外交官(この場合は駐在大使に近い)としての役割を持たせることになる人間だ。


そんな立場の人間に最低限の給金しか支払わなかった場合、もしも日本との交渉の際に「給金? まともに貰ってませんね」などと口に出されては、国家としての威厳も尊厳もあったものではない。


そのため、王国は最低でも他者に話されても問題が無い程度の給金を支払う必要があるのだ。


とは言っても、神城はローレン侯爵家の食客である。


故に神城に対しては国は外交官として男爵相当の給金を支払い、残りの部分(口止めや懐柔を含めた諸経費)をローレン侯爵家から支払われることで話は決まっていた。


……実際は常備薬システムによる利益の一部を回す予定なので、ローレン侯爵家の懐は一切痛まないというのは神城とラインハルトだけが知ることである。


「具体的な数字を言えば、卿には現時点で年間二千万シェンの給金が支払われることが確定している」


「…………」


「ん、どうした? これでは不足かな?」


これまで打てば響くように返事をしてきた神城がなんとも言えない表情で黙り込んだことを受け、ラインハルトは何か問題があったか? と疑問を抱くが、その疑問は続く神城の言葉ですぐに解消されることになる。


「いえ、不足もなにも、私はまだこの国の通貨制度すら理解できておりませんので、具体的な数字を挙げられてもなんと反応していいのか……」


流石の神城も、初めての夜戦を経験したエレンに対して、夜戦の最中や戦の後のまったりとした時間に金の話をするような真似はできないし、しようとも思わなかった。


そのため神城はいまだに物価や平均年収などの知識もなかったし、なんなら通貨の単位が【シェン】であることも初めて知ったのだ。


故にラインハルトから『君の年棒は二千万シェンだ!』とドヤ顔で言われても、リアクションが取れなかったというだけの話である。


「おぉ、それもそうであったな! これはうっかりしておったわ」


「お恥ずかしい限りです」


「いやいや、それは恥じることではない。むしろ当然のことよ。……やはり知っていることが常識であるという思い込みは擦れ違いを生じさせるな」


「誠に。これからも同様のご迷惑をお掛けすることになるかも知れませんが、何卒ご容赦を頂けるようお願い致します」


「うむ。ま、その常識の違いが常備薬という構想を生むのだから、一概に悪いものでもあるまいよ。……だからと言って貴国の常識を我らに押し付けられても困るがな」


(これはつまり、民主主義の普及や階級制度に口を挟むな。ということだろうな)


ラインハルトの口調からそういった感情を読み取った神城は、頭を下げながら了解の意を示した。


「無論、我が国には『郷に入りては郷に従え』という言葉があります。貴国にお世話になる以上、貴国の常識を尊重するのは当然のことでございます」


「それがわかっておれば良い」


ハハハと笑うラインハルトを見て、神城は「やはり常識の擦り合わせは重要だ」と考えていた。さしあたっては金銭に関してだ。


侯爵と庶民の価値観はまるで違うだろうが、貴族として生きるなら貴族の価値観を学ぶ必要がある。


そう結論付けた神城は、できる限りの情報を引き出すためにラインハルトとの会話を続けるのであった。






ようやくお金のお話が出てきた……。シェン?作者にネーミングセンスを求めては行けませんってお話。


次回はお金に関してとかですかねぇってお話。





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