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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第8節 発議

 二百年前、オリュンポスを襲った厄災。焔は、そのことを知る為に賢者・ケイローンの元へ訪れる。

 ルノーとアンジェリカがデートする当日。焔はケイローンの許可の下、魔法工学省へ書類提出に向かう。

 ケイローンのサインがあれば、様々な魔法工学品を製造してくれる。凄すぎる。

 魔法工学省の理念として、子どもたちや若者の才能開花を目指すという、焔の世界にもある考えだった。


「すみません。開発部への書類提出をお願いします。」


「おっ! 今年の監督生は、君かい? 待っていたよ。書類は、結構多いね。」


「その。魔獣討伐に関しての装備品を整えようと思ってたんです。」


 焔は意外な出迎えに驚きつつ、その理由を話す。


「了解。えっと、お名前は?」


「式守焔です。」


「式守さん……あの人が言っていた。」


 焔は、受付担当職員の反応に首を傾げる。書類提出の手続きを終えた直後、一人の研究員により、ある場所へ案内を受けていた。


「私に渡したいと言うのは、どういう?」


「実は、ここの研究を任されていた工学者、レイラさんが行方不明になったんだ。遺言には、賢者から平和の旗を授かる者・留学生で今年の監督生に私の子を紹介しろ、と。」


「それが、私だと……。」


「私の見解だと、そう思ったんだ。紹介する彼は、レイラさんの後継者と騎士を目指す子なんだ。

 ちなみに、騎士を目指す子は、魔獣討伐クラスに所属している。いずれ、出会うと思うが、彼についての資料を渡せ、とね。」


「そうでしたか。その方の名前は?」


「ギャレット、と言うんだ。話では、孤児と聞いている。」


「ギャレットさん、ですか。」


 “話では孤児、って何か引っかかるな。気のせいなら、いいけど”


 焔は、研究員の会話でそう思う。行方不明になった工学者の担当研究所に到着し、資料を受け取る。資料は盗まれるわけにはいかない為、ポーチに収納した。学園へと戻る最中――


「あ、ヤバッ! 錬金術の宿題プリント、やってなかったぁ~! と、図書館で調べよ。」


 やるべきことを思い出し、急いで学園へ戻って図書館へ向かった。図書館になんとか、到着して錬金術に関する本を探して抜粋する。


【錬金術】

 始まりは、古代エジプトや古代歴オリュンポスにあたる。錬金術の試行の過程で、硫酸・塩酸などの化学薬品の発見に成功。同時に、実験道具も多く開発された。

 錬金術の最大の目標は“賢者の石”を作り出す、あるいは見つけ出すこと。しかし、現在は生成時に危険物質が発生する事から、ほぼ禁止とされている。

 主な錬金術の成果は、磁器の製法、蒸留、火薬、化学物質の発明と発見である。


 “なんとか、空欄を埋めれたぁ~。でも、オリュンポスの災禍について手掛かりなし。こうなったら、ケイローン先生に話すしか、ないか?”


 焔はそう考えて図書館を後にし、ケイローンの元へと向かった。扉の前に立って、ノックを三回する。ケイローンは入室許可を下し、彼女は扉を開けて中へ入った。


「焔くん。丁度良い所に、と思ったけど、その表情からすると聞きたいことがあるみたいだね。」


「その。錬金術の授業で気になる言葉を聞いたんです。過去で、このオリュンポスが壊滅寸前になった事があると。」


「……ついに、話す時が来てしまった様だね。魔法工学省で資料を渡されたのを報告で受けた。中身は見たのかい?」


「いいえ。後で見ようと考えています。極秘なので、細心の注意を払います。」


「うむ、よろしく頼みましたよ。では、その過去についての本を紹介しましょう。こちらへ。」


 ケイローンによって案内されたのは、奥にあった隠し部屋で貸出禁止及び閲覧注意の本が保管されていた。彼は、その中の一冊を魔術で取り出して手にし、彼女へ渡す。


「これが、貴女の求めていた歴史の真実が記された書物です。閲覧する前に、私が知る情報を魔術でお見せ致します。」


 ケイローンはそう言うと、幻影魔術で焔にオリュンポスの過去を見せ始めた。彼女の視界に、その惨禍が映る。

 オリュンポス出身の英雄たちは、巨大な竜に立ち向かっている。そして、無残にも命を奪われてしまう人々や兵士、逃げ惑う人々と戦場の状況が残酷にも理解できる。


 ◆


 今から二百年程前、オリュンポスで起きた錬金術災害。遠く北に住まうエディタという女が生み出した化け物が町を破壊し、多大なる被害をもたらした出来事。


 化け物の名は『ファヴォック』と呼ばれ、名の由来はファヴニールとジャバウォックを組み合わせたもの。


 ファヴニールは鋼の様な鱗を持ち、毒性のある吐息を放つと伝えられています。ジャバウォックは十五m程の大きさで意味不明な語を話し、燃える様な赤い瞳と鋭い爪を持っていると語られる。ファヴォックは、それらを合わせた怪物。

 鋼の様に強靭な肉体、体長が十五m程、燃えるような紅い瞳と鋭い爪、吐息ではないが血液に毒性があること。恐ろしかったのは、あらゆるものを吸収して成長すること。


 人々はこれを対処するために、魔物退治で有名な英雄を中心に召喚術を次々と行う。

 しかし、英雄でさえも苦戦させ、現世に体を保てなくなった彼らは奴に吸収された。最後の最後で生き残った英雄たちがおり、私を含め――


 『ヘラクレス』『医神(アスクレピオス)』『オリオン』『ウラノス』『妖精族の大魔術師』


 がおりました。ヘラクレス、オリオン殿、ウラノス様に関しては特別な英雄であった為に、役目を終えると元の時代へと自動送還される。私とアスクレピオスと大魔術師殿は、今後のオリュンポス為に今も力を尽くしている。

 そして、この惨禍を【オリュンポスの災禍】または【エディタの災禍】と後世の人々は呼ぶ様になった。


 ◆


「ケイローン先生とアスクレピオス先生がいたのは、そう言う事情があったんですね。」


「ここだけの話、人が作ったものは時折予想外かつ恐ろしいものを生み出してしまう事が多々あります。貴女の世界でも、該当するものもあると思います。」


「はい。ですが、エディタは何故そこまで……。」


 (レイ)はふと疑問を口にし、受け取った資料を部屋にある机に広げた。その中から、エディタの生涯が記された資料を探しだした。


【私が錬金術に関心を持ったきっかけは、父だった。父は魔法工学省に勤務する職員であり、錬金術師でもあった。また、私を馬鹿にする奴らを驚かせたかったのだ。


 魔術の基礎を修得したのは十二歳で、錬金術を学び始めた時期と同じである。錬金術の始まりを知っていれば分かると思うが、初めは卑金属から金にするという方法を試した。始めてから五年の月日が経った頃に、ようやく成功した。


 そして、アテネ剣魔術学園に通う事になって二年が経ったある日、家族でより所だった父が魔獣によって亡くなった。私は――】


 ドカンッ‼


 読み途中で大きな物音が聞こえて、焔は吃驚して肩をビクッと撥ねらせる。ケイローンは、彼女に資料をしまう様に指示して隠し部屋を出た。隠し部屋を出ると、書斎部屋の机前にアルケイデスの姿があった。

 そして、開かれたままの扉近くには、アールシュとアシェル、メガラとモージ、魔獣討伐クラスの生徒らがいた。凄い物音に駆け付けたのだろう。扉は半壊している。


「アルケイデス。何か、私に申したいことがあるのですか? 扉を破壊しなくても。」


「今就任している監督生に、決闘を申し込みます。」


 “決闘? あれか、負けたら監督生の権限を譲るって言う……”


 焔は、隠し部屋の扉に隠れながらアルケイデスの言葉を聞いて思い、そのまま息をひそめる。

 ケイローンはアルケイデスに対して、なぜ決闘を申し込みに来たのかと尋ねる。彼は、拳を握って答えた。


「自分が、将来、同盟主として立つ為です。」


「……了解しました。分かっていると思いますが、決闘でのルールを厳守してください。」


「分かっております。明日にコロシアムで決闘を、と監督生にお伝えしてください。」


「いいえ。通達しなくても、大丈夫です。ミュケナイ先輩。」


 (レイ)は、堂々と物陰から姿を現して言う。見ていたアールシュたちは、いつからいたんだ、と思う。彼女は、アルケイデスに言う。


「事情を深く問いません。ですが、一つだけ質問があります。何故、そこまで監督生と言う地位にこだわるのですか? もし狙うのなら、学問も優秀な成績を納めるべきだと思いますけど。」


「……。」


 アルケイデスは、その言葉を受けてだんまりしてしまう。確かに、焔の言葉が最もだ。しかし、彼は言う。


「んなこと、言ってる暇はねぇんだ。」


 “あの表情、別の事情がある”


 (ほのか)はそう考えながら、アルケイデスからの決闘を受諾した。むしろ、彼の実力を知る為に受けて立とうと決意した。

 あの英雄と同じ名と力を持っているのなら、現監督生である自分の実力を試したいと思ったからだ。


 “下手に力加減されるのは、正直イヤだな。勝負事は正直弱いけど、仲間である以上その力を知るのが、妥当だと信じる”

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告おねがいします。

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