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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第7節 進展

 魔獣退治を終え、焔は対策を立てるべく奮闘!

 一方、ある人は青の春が到来する。

 そして、焔は昼食を終えて部屋に戻り、今の部隊に必要なものを考え始める。


「うーん。連携を伴う戦闘は、合図に指示が要だから……通信手段か。あ!」


 焔はそう言って取り出したのは、伝達の瞳と呼ばれる魔術道具だ。


 “これを、使って……あとは、ホログラム技術の”


 彼女は、思いついたアイデアをノートに記す。こんな機能があっても良いのでは、ということも書き込む。色々とアイデアが浮かんだ所で、アイデアをまとめて行く。


「こんな所かな? ケイローン先生に聞いてみよっと!」


 焔は書類をポーチにしまって、ケイローンの部屋へと向かう。すると、ケイローンの部屋からメガラが出て来た。

 彼女は物陰に隠れて見ると、メガラの表情は寂しさを纏っていた。彼女は、メガラを陰から見送ってから扉をノックして入室許可を得て、ケイローンの部屋へ入る。


「ケイローン先生。その、新たな機器の開発について見て欲しいんです。」


 焔は、アイデアをまとめた書類をケイローンに渡す。彼は、彼女から受け取った書類を読んで答える。


「何故、この機器が必要とお考えになったのですか?」


「この間の戦闘で、知性が低い魔獣に対しては拡散魔術を応用した声掛けはできます。

 ですが、もし、知性がある魔獣を相手した際、策を打ち破られては困ると自分なりに思いました。全員が所持する事で同時に素早く情報を共有し、正確な戦闘を行えると考えました。」


「なるほど。今までにない考えですね。これまで、拡散魔術と音魔術を応用した方法、太鼓に合わせて動く方法もありました。

 しかし、これは、画期的で良いと思います。他にも良いアイデアを考えた際も、この様に私に提出する様に。」


「はい。」


 焔は、ケイローンの言葉を受け入れて部屋を後にした。彼女は訓練所へと足を踏み入れると、アールシュがいた。彼も剣術の訓練をしている。


「あ、姉さん。」


「アル。調子はどう?」


「うん。体は、以前より動きやすくなった。自分のことは、まだ曖昧かな……。」


「そっか。」


「でも、夜叉族について図書館で調べて少し思い出した。」


 アールシュは数日間、自分の一族について手掛かりを探していたようだ。夜叉族は善なる鬼たちの総称だが、夜叉族は天夜叉と地夜叉の二種族に分かれる。

 そして、人間を守る為に羅刹族とアスラ族と戦うことがある。


「初めて聞いた事もあるけど、やっぱり護法善神なんだね。」


「うん。でも、まだ思い出せない。」


「大丈夫。少しずつで良い。それに、私はアルを故郷に帰す約束したんだから。」


「姉さん。ありがとう。」


 アールシュはそう言い、焔へ共に剣の稽古をしないかと話す。彼女は、快く受け入れて彼と訓練を行った。

 一方、その頃。アンジェリカはルノーを屋上に呼び出していた。


「あの。もし、良かったら、来週の休日、二人で町に出かけませんか? い、いきなりでごめんなさい! 返事は急がなくて良いので。」


「あぁ、いや。実は、俺も、君と町に出かけたかった。来週の土曜、お願いする。」


「あ、ありがとうございます。」


 “焔。助言、ありがとう”

 “ど、どうすれば良いんだ?! ほ、焔に相談するしか……”


 アンジェリカとルノーは、心の中でそう呟く。その二人を、こっそりと覗く一つの影があった。


 “ルノー殿が、乙女(マドモアゼル)・アンジェリカと二人きり……間違いないようですね。しかし、相談する相手は……”



 その数十分後。ルノーは、焔の部屋に訪れていた。彼女は、突如であった為に驚いた。しかし、相談だと聞いて、とりあえず話を聞くことにした。


「んで、相談って何?」


「じ、実は、アンジェリカと二人きりで出かける事になったんだ。しかし、女性への贈り物として何がいいのか、服も分からない。」


 “恋愛経験ゼロの私に聞く? ソレ”


 焔は第一にそう思ったが、答えない訳に行かなかった。


「いつも通りで良いんじゃないの? 服は、身だしなみとかをきちんとすれば。……あんまりカッコつけ過ぎも駄目だし。」


「そ、そうか。」


 ルノーは、焔から具体的なアドバイスを聞いて納得したのか、嬉しそうな表情をして部屋を後にした。その数時間後には、アンジェリカと夕食を取る事になり、早速恋バナとなった。


「んで、上手く行ったのかい?」


「うん。」


「良かったじゃないか〜。んじゃ、デート楽しんで頂戴ね。」


「ありがとう。」


「焔殿!」


「ロラン。どうした?」


 焔はロランの用件を聞くと、食後に相談したい事があると言う。彼女は、その約束を受け入れて食後にロランと二人きりで人気のない場所で話を始めた。


「んで、話って?」


「実は、その。とある御方と話のついでに、ランデヴー(意:デート)に誘おうと考えていたんです。」


「へぇ~。青春だね。それで、相手はどんな御方?」


「先程焔殿と食事で一緒にいて。笑顔が素敵な女性です。」


 “さっき? ま、まさか!”とレイ、

 “アンジェリカ?!”と、焔とユウ、

 “道理なこった”と呆れるホムラ


 は、それぞれ思う。焔は脳内で混乱もあったが、とても厄介な出来事になりそうだと考える。


「だ、誰かは分かったよ。それで、どうするの?」


「ランデヴーはいきなりなので、まずは私の気持ちをお伝えしようと思います。」


「告白ね。ま、良いんじゃない。思い留めるよりも、伝えた方が意外とスッキリする事もあるし。」


「焔殿は、そういった経験はあるのですか?」


「告白って言うか、思いを伝えた事はある。結局、長い間、返事が来なくて自分から断ったんだけど。

 まぁ、自分には早かったかって考えた。だから、ほぼ恋愛経験はゼロ。恋人関係は、よく分からない。」


「そうだったのですか?! 私は、てっきり……。」


「良いんだって。恋愛関係はまだ理解できないけど、相談や協力することはできる。悩みは、持ち続けても意味無いし。失敗しても、チャンスが来ることもあるし。」


「その通りですね。ありがとうございます。」


 ロランはそう言い、焔を夜遅くまで外に居させるわけにはいかないと彼女の部屋まで送った。焔は、彼に礼を言って部屋に入るとゾーイがいた。


「おかえり、ゾーイ。町はどうだった?」


「騒がしかったです。でも、元気でいる姿は悪くありませんでした。」


「良かった。今度、ゾーイが気に入った店とか場所とか、教えてよ。誰にも言わないからさ。」


「考えておきます。それと、別件になるのですが……この周囲に何かの力がある気がするんです。」


 焔は、ゾーイの言葉にどういうことかを尋ねる。

 召喚された英雄であるゾーイは、学園の外から魔力を感じるという。場所は特定できなかったが、元々空気中にある魔力とは同じようで違うモノ、とのこと。


「ありがとう。気づかなかったから、片隅に置いておくね。」


「はい。念の為、注意するほうが良いでしょう。微弱ですが、その魔力に邪悪な感じがあるので。」


 ゾーイはそう話し、おやすみなさいと言ってから姿を消した。焔は、寝る支度をして就寝した。

 そして、翌日。焔は、錬金術の授業を受けていた。二学年から受講が可能のようだ。


 “錬金術って、聞いたことはあったけど。元々は、卑金属を金にする目的から始まったとは驚いたな”と焔、

 “禁忌の錬金術があるのも当然だな”とホムラ、

 “人体錬成でしょ? 死んだ人間は生き返らない、か”と焔、

 “それだけじゃねぇよ。禁忌ではないが、ホムンクルス生成だ。この世界なら、成功してもおかしくはねぇからな”とホムラ


 は思う。担当教師は、焔と同じ歳くらいの青年で美少年と言っても過言ではない。噂では、錬金術師の資格を最年少で取得し、講習を行う教師の資格もあると言うベテランだ。


「――禁忌は、これだけではないよ。過去に魔獣を生成し、街に被害をもたらした歴史がある。もし、その様な実験を試みる場合、学園長が定めた規則によっては退学を命じざるを得ない。最悪の場合は、牢獄行きだ。いいね?」


『はい!』


 クラスメイトらが返事をすると、丁度鐘がなった。授業を終えて、アンジェリカと話をする。


「過去に、あんな歴史があったなんて驚いたし、初めて知ったわ。」


「私も。でも、錬金術とか、魔法工学に夢中になった結果……なのかもしれないんだろうね。」


「そういう事じゃ!」


「うわぁッ!」

「オリランド先輩!」


 突如、二人の前にトンガリ耳を持つ小柄な青年が現れて驚く。オリランドは、三学年で謎に包まれている妖精族と言われている様だ。彼は、二人にその歴史を話し始めた。


 ◆


 今から二百年前のこと。とある科学者が優秀な錬金術を持っていた。魔法工学は勿論だが、錬金術は随一と呼ばれていた。

 そんなある日。科学者は、錬金術で生命を生み出す研究に乗り出した。元々は卑金属を金属に変化させる術だが、固定化された概念を打ち払う為にと始めた。

 しかし、植物の生成しか上手く行かず、いつしか科学者は錬金術にのめり込んでしまった。

 そして、とある実験でとんでもない物を生み出した。(ドラゴン)の姿をした――


 “ファブウォック”


 と呼ぶ。

 ソレは、あらゆるものを吸収して成長するモノで、規模は想像より大きい。伝説と異なる点は、血液に強い毒性があったこと。血液に触れると、長い苦しみに苛まれるか、死ぬかの二者一択。

 人々は召喚術で英雄を呼んで倒すことはでき、ファブウォックは地に落ちた。後世となった今は『オリュンポスの災禍』または『エディタの禍』として歴史に刻まれている。


 ◆


「――という話じゃ。」


「そんなことが……。教えてくれて、ありがとうございます。」


 とアンジェリカは礼を言う。焔も同様に礼をする。


「良いんじゃよ。理解できたのなら、わしは良しとするぞ。」


 オリランドはそう言って、フワッと姿を消した。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 誤字脱字がありましたら、ご報告おねがいします。

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