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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第6節 知恵も積もれば山となる③

 魔獣退治を通じて、焔はまとめ役としての自覚を感じ取る。また、学園内では青春が舞い降りる。

 焔の元に、ロランとルノー、ゾーイ、アシェルがいる。彼女は、上空にいる飛空部隊の二学年へ下がるようにと指示して、近くにいる彼らに尋ねる。


「ロラン。スキュラ周囲を炎の海にできる?」


「任務であるならば、成すまで。」


「うん。……ルノー、氷の魔術でスキュラに凍傷を負わせられる?」


「あぁ。それを成すのが騎士だ。遠慮は無用だぞ、焔。」


「すみません、焔。私も出ます。この鎌なら、不死のものを死へと導けます。攻撃のタイミングは、マスターの指示で。」


「ゾーイ……分かった。アシェル先輩、ゾーイの援護をお願いします。」


「了解した。ゾーイ殿、よろしく頼みます。」


「……仕方ありません。マスターの命令ならば。」


 焔は主力が揃った所で、最初にロランの攻撃を始める。ロランはその場で、フェルグスが使っていたカラドボルグを手に取ってスキュラの周辺に魔力を集中させ―


燃え盛る業火(カラドボルグ)ッ‼」


 と、爆発と共に炎の海を作る。スキュラは逃げる場所もない出来事に慌てる。そこへ、すかさずルノーが斬り込んで行き、素早い動きで奴の体に凍傷を負わせていく。スキュラは予想外な事が起こり、荒々しく声を上げる。


「…ケ゛ー……キ゛ル゛ケ゛ーッ!ド コ ダァァァァッ‼」


 “キルケー?男たちを惑わすって言われてる魔女だっけ?”


「キルケは、ここにいない。……弓矢部隊は私の前、飛空部隊は弓矢部隊後方の上空で横隊列を!

 陸上部隊は弓矢部隊前方で魔術発動の準備を!……全体!目標を、スキュラに定めてください!」


 焔の指示に、全部隊は隊列を組む。彼女は攻撃構えの指示を出して、タイミングを待つ。ルノーは全体の様子を見て直ちに飛翔魔術で帰還する。


「全部隊!全力で放てぇッ‼」


 焔は強く指示を出し、自身も銃で部隊と共にスキュラに一斉攻撃を行った。スキュラは、矢と魔術の雨を受けて怯んだ。アシェルは剣をスケボーの様にして乗って、ゾーイをスキュラの近くまで急いで飛ぶ。


「行けッ‼」


「はぁぁぁぁぁぁッ‼」


 ゾーイは、自分より大きな鎌を振るってスキュラに不死殺しの刃を突き立てた。スキュラは、止めを刺され、倒れると共に骨も残らずに消えて行った。

 焔は、なんとか倒せたことに安心はしたものの、犠牲となった者たちを思うと喜ぶ感覚にはならなかった。戻って来たアシェルとゾーイは彼女の表情を見て、そう察した。ルノーは剣を納めてから、焔に言う。


「焔。とりあえず、任務は終わった。部屋でゆっくり休め。」


「う、うん。」


[アテネ剣魔術学園・魔獣討伐の任務を完了を確認。部隊は、通常通りの任務に戻ってください]


 生徒たちへ学園からのアナウンスが響き、生徒たちは今日行うべき任務へと戻った。数名の生徒は、気絶した生徒を学園境内の保健室へと運んで行った。

 焔はルノーにケイローンへの報告を任せ、自室で休養を取る事にした。


「あの人の言葉が引っかかるのですか?」


「……うん。勝手な行動をしたし、あんな暴言を吐いたのは悪いけど。同じ人間だし……。」


「……人間は、複雑でよく分かりません。」


「そういうものさ。人間だって、自分が分からないもん。他人の考えが分からないのも同じでさ。……けど、皆に喜びがあっても、皆が知らない、自分だけが知る()があるし。」


 “マスター……”


「あぁ~、駄目だ。監督生なら、役目を果たさないと。」


 “……ケイローン先生の所に行こっと”


「ちょっと、ケイローン先生のとこに行ってくるね。」


「はい。」


 焔は、不安と勇気を持ってケイローンの部屋に向かった。部屋に入ると、ケイローンは彼女に話を始める。


「ルノー君から全てお聞きしました。うちの生徒に、指示を聞かなかったものがいた、と。」


「はい。申し訳ありません。注意で、止められませんでした。あんな人たちでも、生きる権利はあるのに……。」


 焔は、彼らは自分たちと同じ人間で命あるものだ、と本音を漏らす。


「君の責任ではない。こちらも、君に教えるべき事を伝えていなかった。それについては、私が責任を取る。それと……アルケイデスが来なかったようですね。」


「はい。ミュケナイ先輩は、何か事情があるのですか?」


「ここだけの話だ。彼や仲間には絶対に話さぬよう。」


「はい。」


「実は、ミュケナイ家は代々ゼウス様の血を引いている人の一族。数百年に一度、魔獣以外で類まれな力を持つ子供が生まれるのです。」


「それは……人間離れした怪力のことですか? 英雄ヘラクレスの伝説にある。」


「その通りです。しかし、先祖が受けた呪いがあり、ミュケナイ家の本来の力が薄れてしまっています。以後、ミュケナイ家は呪いを克服するため、様々な治療法で解読を試みてます。」


「そうだったのですね。」


「はい。特に、アルケイデスは、周囲との距離が離れすぎているので、他人と上手く友好関係を築けなくなっています。」


「そういえば、授業でペアになった時に私の魔術を教えてくれませんでした。色々教えてもらいたかったのですが。」


「そうでしたか。何度も言っているのですがね。」


「それに、監督生にれなかった事に、深い疑念があるようなんです。どうして自分ではないのか、みたいな。」


「なるほど。とにかく、アルケイデスの事は私に任せてください。貴女は、監督生としての仕事を本格的に始めなければ。」


「は、はい。尽力します。」


 焔は、ケイローンから二冊の本を受け取る。一冊は【監督生の務め】、もう一冊は【貴方だけの特別戦術百科】と書かれていた。

 ケイローンは、彼女に更に知恵を積むようにと助言し――


「沢山の本を読むといいでしょう。きっと、貴女の役に立ちます。それと、特別戦術百科は、貴女に差し上げます。」


「あ、ありがとうございます! ケイローン先生。」


 焔は、礼を言って部屋に戻る。机の上に本を置くと、置き紙があることに気付く、そこには――


 『刻限まで戻ります。私は、町にでかけます  ゾーイ』


 と書かれていた。彼女は一安心して、ケイローンから渡された本を読み始めてノートにまとめる。


【監督生の務め  生徒の監督及びリーダー的立場で学園長との直接対談も可能。このアテネ剣魔術学園は、魔獣討伐部の統率者として担われる。現場での指揮は勿論の事、部隊の陣形編成、平気の開発原案などにも携わる事が出来る】


 戦術百科には、それぞれの陣形や作戦の方法などが記されていた。しかし、その記述内容は時代も国もバラバラで不思議なものだった。


 “官渡、白狼山、赤壁、樊城、夷陵での戦法。八門金鎖、石兵八陣――奇襲作戦、釣り野伏せ作戦、啄木鳥戦法、車懸りの陣、組み撃ち鉄砲、騎馬鉄砲隊、火牛の計――魚鱗、鶴翼、雁行、逆行、鋒矢、衡軛、長蛇、方円の陣、と”


「ふぅ〜ぅ。もうこんな時間?!」


 読み終えて時計を見ると、昼を過ぎていた。同時に、腹の虫が部屋に鳴り響く。その時、廊下に通じる扉からノック音がした。


「焔、いる?」


 声の主は、アンジェリカだった。焔は、直ぐに本とノートをポーチにしまって扉を開ける。アンジェリカは、焔を昼食に誘うところだったらしい。焔は、よろこんで彼女の誘いを受けて食堂へ向かった。

 食堂の席に着くと、二人は会話を始める。


「そういえば、アンジェリカって、魔術と剣術どっちが得意なの?」


「え?」


「その。ルノーに教えるのが上手かったし、魔術を使うのも上手いから気になっちゃって。」


 アンジェリカは、焔の言葉を受け止めて話を始めた。彼女の家は、代々貿易関係の仕事をしており、海賊に遭遇する事が多い。

 しかし、女性は船旅には出なくとも、護身の為に剣術や魔術を身につける義務があったのだという。


「なるほどねぇ。確かに、貿易品だと金銭とか多いし、狙われるのも無理はないね。」


「それに、過去に貿易関係の仕事をしている人の奥さんとか娘さんを人質に取る事件もあって余計ね。私は、お父さんから剣術と魔術を教わった。今思うと、身につけて良かった。」


「そんなことが。」


「うん。……ねぇ、焔に相談があるんだけど、ルノーって誰か好きな方とかいるの?」


「へ?」


 焔は、アンジェリカの言葉に思わず驚いて回想する。この間、誰かさんと同じような話をしたようでない様な。彼女は我に返ったのか、少し気になっただけだ、と頬を染めて言う。

 (ユウ)は、ニヤニヤしながら―


「はは〜ん。さては、恋バナかい?」


 と言った。すると、アンジェリカは図星だったのか言葉を失う。


「当たり、だね。」


 “ちょと、待て!これって……”と焔、

 “天命、ですね”とレイ、

 “いや、最初から分かってるだろ、コレ……”とホムラは思う。


「大丈夫。誰にも言わない。でも、どうして(ルノー)が気になったんだい?」


「ルノーは、何事も真剣で冷静で。それに、誰に対しても褒める優しさを持ってる。」


「私もそう思うよ。まぁ、地元じゃぁ氷の騎士って恐れられてるくらいだけど。」


「氷の騎士。確かに、そうかもしれないわ。それでも、心に情熱があるって言うか。授業の姿勢と戦闘を見て思ったの。」


「なるほど。……なら、今度一緒に町へ出かける約束してみたら?」


「えぇ?! わ、私からで大丈夫なの?」


「デートに誘うのも、男女関係なし。もしかしたら、相手は誘っていいか迷ってるかもしんないよ。時には大胆に、時には繊細に。」


「……うん。頑張ってみる。焔に相談してよかった。」


 焔はアンジェリカの言葉に、どういたしまして、と礼を言った。しかし、自分は恋愛経験ゼロ。それでも、友達の為なら相談に答えても良いだろう、と思った。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 そして、今日から連載を再開します。少しずつではありますが、更新をして行きます。

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