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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第5節 知恵も積もれば山となる➁

 焔は、ゾーイの保護の許可を貰う為にケイローンへ相談に持ちかける。

 翌日。休日の為、焔はゾーイを連れてケイローンの元へと訪れていた。


「アスクレピオスが、言っていたもう一人の英雄。それが、彼女ですか……。」


「はい。私が責任を取る事を前提に、ゾーイを保護する許可を頂きたいと思ったんです。」


「うーむ……分かりました。許可を下します。万が一、約束を破るような事があれば―…」


 ケイローンはそう話すと、焔は彼の言葉を遮って―


「もし、その事があれば、ミュケナイ先輩に監督生を譲ります。」


 と言った。彼は、彼女の瞳に覚悟があると確信して、分かったと受諾した。部屋を後にして自室へ向かっていると、ゾーイは焔に言う。


「どうして、あんな約束をするのです? 貴女にとって、不利益では?」


「これ位のハンデが丁度良んだ。それに、ゾーイは悪い事をする訳ない。大丈夫。」


 (ユウ)はそう言って、ゾーイに笑顔を見せる。彼女は、その言葉に疑問を持つ。


「……貴女は、やはり変わってます。人間は、大体同じ事を考えるのかと。」


「まぁ、そうだね。何でか、人間ってリーダー格の人がいると、その人に逆らう事が自然に怖くなって、周りに合わせて行動してしまうんだ。どうしてそうなるのかは、誰にも分からないけどね。」


「人間にしては、独特な感性を持っているんですね。」


「そうかな? こう見えて、意外とおっちょこちょいなんだけどなぁ。……まぁ、ともかく。ケイローン先生にも許可を貰って、アテナ様にも認められたし、どこか出かけない?」


「何故、そうなるのです。人間が集まる町など。」


「あ、別に無理しなくて良いんだ。ただ、思い出作りと言うか。楽しんだ方が良いと思って。」


「……マスター。お気遣い、ありがとうございます。それについては、考えさせてください。」


「良いよ。嫌だったら、一人で行っても構わないから。ただ、刻限までには帰って来て欲しいかな。」


「分かりました。では、私は部屋に戻ります。」


 ゾーイはそう言い、焔の自室へと走って行った。彼女はゾーイを見送った後、訓練所で魔術と剣術の練習に励む。今まで取得してきた剣技を全て確かめる。


 “弱くなってないけど、少し体力が減ったな。ローマの時は、まともに動けていなかったし。まずは、基礎トレーニングだな”


 基礎体力を向上させる為、スカアハの元で行ってきた山下り以外のトレーニングをする。


「1491………1498…1500ッ! あ゛ぁ゛ッ!」


 “へい、次ィッ‼”


 焔は気合を入れて、休憩を挟みつつ次々にトレーニングを行う。すると、彼女に声を掛ける人物がいた。


「焔!」


「アシェル、先輩……。」


「アシェルで良いよ。僕は、色んな人から感情を教えてもらっているし。むしろ、君たちの方が先輩さ。」


 “ん? どう言う事?感情を、教えてもらっている?”


「ところで、焔は訓練してたでしょ? 良かったら、付き合うよ。」


「え?!は、はい。お、お願いします。」


 焔は突然言われた事に驚いたが、遠慮する訳にもいかず一緒に訓練をする事になった。アシェルは彼女が剣術を行使する際の手癖などを的確に指示して改善をする。

 アルケイデスは、その様子を訓練所の廊下から見て唇を噛みしめる。そして、後ろにはメガラの姿もあった。


「アルケイデス。どうしてあんな事をしたの?また、同じことを繰り返すわよ。」


「……どうして、どうして、俺じゃないんだ。」


「え?」


「俺は、あの剣を、何故引けなかったんだ。ケイローン先生の愛弟子である俺が一番なのは、当然のはずなのに。」


「何故、そればかりに固執するの? ミュケナイ公爵様に言われたの?」


「俺が、俺自身が許せないんだ。」


 メガラは、アルケイデスの言葉に不安だけでなく、焦燥感が大いに現れているのを感じた。彼は、彼女に意味不明な話をして悪い、と言って自室へと向かって行った。メガラは、彼の背中を見る事しかできなかった。

 再び訓練所で、アシェルは焔の剣筋を見て先程より良くなったと言う。


「あ、ありがとう。し、失礼ながら、さっきの言葉が気になったんですけど、どう言う事ですか?」


「あぁ。感情を教えてもらっている、っていうヤツかな? 嘘のようだけど、本当なんだ。……君に会う為、君の剣となる為に、ね。」


 “私の、剣?”


「今は話せないけど、その内話すよ。まだまだ、君はここで学ばなきゃいけない事があるから。」


 焔は、アシェルの言葉に首を傾げる。最初はフワフワ系かと思いきや、何か知っている様子を見て謎めいていると薄々感じた。二人は、訓練を終えて息抜きに町へ行こうとした時、警戒アラートが鳴り響いた。


[魔獣、ギリシア湾方面に出現。監督生及び討伐執行生徒は、ただちに指定拠点へ向かってください]


 焔は初めての事に戸惑っていると、アシェルは持っている剣の上に乗って宙に浮かぶ。まるで空中スケボーのようだ。


「焔。僕に掴まって!」


 焔はアシェルの魔術に驚いたが、彼の手を取って指定拠点へと向かう。到着すると、指示を待つ生徒たちが待機していた。アシェルは、彼女に自信をもって指示を出す様にと励ます。


「海岸線に沿って防壁を展開ッ! 弓矢部隊は防壁の後ろで待機! 飛空できる方々は、防壁内の弓矢部隊後方の空中で、陸上部隊も後方で待機! ……全体! 怪我をした場合は、防壁(シールド)の後方へ。お願いします!」


 焔は緊張するも自信をもって、指示を出した。生徒たちは、それぞれ行動を始める。その中には、アールシュ、ロラン、ルノーがおり、彼らはせっせと任務をこなす。しかし、数名の生徒が指示に従っておらず、アルケイデスの姿は無かった。


[スマホ警戒アラート発動。これは、持ち主である貴女のみが聞こえる敵性反応をアラートで示します。……敵性反応あり、数は百体以上。一分後に第一陣襲来]


「急いでください‼ あと一分で、敵が来ます!」


 焔は、部隊全体に指示をする。彼女の言葉に、生徒たちは急いで準備を進める。ようやく準備が整えて、十秒経つかと言う所で魔獣の第一陣が海より姿を現す。スマホの敵性個体分析が発動して、焔の耳に聞こえる。


[第一陣、敵性個体:ラミア。魔獣分類:魔蛇。上半身は女性、下半身が蛇の怪物。同反応個数:100体以上]


 アナウンスの直後に、ラミアが群れで現れる。焔は、心で落ち着きと自信を持って指示を出す。


「弓矢部隊‼打ち方用意ッ!」


 弓矢部隊は、構えを取る。そして、彼女は放てと指示し、矢の雨で第一陣を撃破する。彼女の元に、何かに気付いたルノーがやってくる。


「大丈夫か? 肩に力が入っている。深呼吸しろ。」


「あ、ありがとう。ルノー。」


 焔は型に力が入っていた事に気付いて、深呼吸をする。


「あぁ。それよりも、次が来る! 陸上部隊の出番だ。」


「……ッ‼ 弓矢部隊、防壁(シールド)より、後方へ! 陸上部隊、出陣!」


 焔はルノーに言われて、指示を出す。ルノーは焔に次々と的確にアドバイスをする。槍兵は防壁(シールド)付近で迎撃、剣士は浜辺で接近戦を行う。その中にはロラン、アールシュがいた。

 しかし、砂浜が滑るのか足を取られそうになる者はいたが、なんとか回避できた。

 その時、海から大きな波しぶきが上がって姿を現したのは、上半身は女性で下半身は魚だが、腹部に六頭の犬の頭が付いた女怪『スキュラ』だった。体長は少なくとも五m級はある。


[第二陣及び主格、襲来。敵性個体名:スキュラ。海峡に住む女怪で、姿は非常に奇妙かつ想像が難しいとされている]


 スマホの適性個体分析のアナウンスが焔に告げる。


「焔ッ!」


「陸上部隊、及び浜辺にいる生徒は後方に撤退してください‼ ……飛空部隊、距離を保ちつつ迎撃開始ですッ‼」


 (ほのか)は初めて見る怪物に驚いてしまい、ルノーの声で(レイ)は我に返って表に出て急いで指示を出す。空中にいるアンジェリカとモージたちは距離に気をつけて遠距離攻撃を行う。

 その時、スキュラは足を振り回して浜辺の部隊に攻撃を仕掛けようとする。


「浜辺にいる生徒は、直ちに回避ッ! スキュラの足の攻撃が来ます!」


 焔はそう言うと、スキュラは攻撃を始める。予め、後方への撤退をしていた為、被害は無かった。しかし、スキュラは怯まずに前へ進もうとする。


「こうなったら……ルノー、ロランをこちらに呼んでください。」


「分かった。」


 ルノーは、急いでロランの元へと向かう。その時、焔の指示に従わなかった生徒六名がスキュラに接近して攻撃を始めた。


「待ちなさい! スキュラは危険です!」


「異国のお前の言う事なんか聞くかよ!」

「スキュラなんぞ。伝説を知っていれば、チョロい!」


 “期待と噂のミュケナイ先輩がいないし、まして今()()が身勝手に飛び出したら!”


「今すぐ、下がれ!」


 (ホムラ)は魔術で鎖を繰り出し、六人の生徒を強制的に戻そうとする。次の瞬間、スキュラは六人の生徒らを目で捉えると、腹から出ている犬たちの首が伸び、六人を次々と捕らえて呑み込む。

 焔が繰り出した鎖は、そのうちの一人を捕られられる直前に救い出した。


「無理に出るなとあれ程!」


 焔は厳しく注意するが、生き残った生徒は錯乱しているのか、彼女を指差して愚か者と叫ぶ。すると―


「自業自得です。うるさいので、寝ていてください。」


 と、ゾーイが現れて錯乱する生徒を峰打ちで気絶させた。そこへ、ロランとルノーが駆けつける。

読んでくださいまして、ありがとうございます。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

焔:なんとか、役目は果たせたけど。……。


アシェル:焔は、良くやったよ。次までに、部隊の編成を整えよう。サポートは僕や君の仲間にもできるから、安心して。


焔:アシェル先輩……ありがとうございます!と、ここで『イリュド豆知識!』。

 アシェルは、三学年にいる一人の先輩から魔術を教わったそうです。その人は、妖精族との事です。


アシェル:その人は、とても優しい。色々なことを教えてもらったよ。


焔:師匠って所なんですね。次回、『第6節 知恵も積もれば山となる③』!まだまだ学ばないといけないなんて、勉強は苦手だぁ……。

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