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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国 編 ―小さな光と大きな闇―
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第4節 知恵も積もれば山となる➀

 焔たちのアテネ剣魔術学園の留学生活が始まる。

 しかし、楽しい事と同時に、様々な思いを抱える者たちも少なくは無い。

 その後、焔たちは先程の出来事で怪我人はいない事を確認して、無事学園に戻る事が出来た。


「あぁ、そうだ。ちなみにだけど、朝食を食べ終えて一時間後には授業に入る。剣魔術・魔獣討伐クラスは剣と魔術の訓練もあるが、知恵も当然必要だからね。」


 モージは、焔たちに助言を入れて自室へと戻って行った。彼女たちは一度自室へと戻り、教科の準備をする。


 “えっと、今日は動きやすい服装で授業を受けるから、このままで大丈夫だね”


 焔は、授業内容を確認してから剣を帯刀して部屋を出て、仲間と合流して食堂へと向かった。

 ケイローンによると、監督生は儀式で使われた剣を帯刀及び使用が許可されている。しかし、彼女としては盗難の可能性を考えてポーチの中にしまう事にした。

 ちなみに、一年生は訓練を積む時間で、殆どが体力づくりの時間に費やされると言う。二年生から実践魔術や剣術を伴う授業が行われるとの事。

 朝食を終えて、一時限目は実践魔術。魔術を行使する者たちには欠かせない分野にして、訓練所で魔獣討伐クラスに所属する三年生と共に行われる。噂では三年生は例年と比べて、人数は少ないらしい。

 担当教師は、授業を始めて話をする。


「良いか。魔術で最初に覚えてもらうのは、四大元素だ。いきなりだが、式守。四大元素を答えてみよ。」


 焔は突然で驚くも、すぐに答える。


「火、水、風、地です。」


「うん。模範解答だね。魔術の基礎は、主に四大元素から成り立つけど、最新では雷属性が加わることもある。

 しかし! 四大元素を使いこなすだけでは、魔獣討伐の際には役に立たない事がこれからあるかもしれない。」


 と話す。焔は、確かにその通りと実感する。

 四大元素の相性関係は、火は水に弱く風に強い、水は風に弱く火に強い、風は火に弱く地に強い、地は水に弱く火に強い。


「そこで、今日は四大元素の内、火の魔術の応用と発展を覚えてもらうよ。テストまでには、十分な使役を心掛けてほしい。この訓練所なら、刻限まで練習しても構わない。」


『はい!』


 焔たち留学生以外の生徒たちは、教師の言葉にハキハキと返事をした。そして、教師から指定された二人一組のペアを作り、魔術の訓練を始める。

 ロランは三学年の小柄な青年と、ルノーはアンジェリカと、アールシュはメガラと、焔はアルケイデスとペアを組んだ。


「なんで、俺なんだよ……。」


「よ、よろしくお願いします。」


「とりあえず、火の魔術、放ってみろ。」


 アルケイデスの指示を受け、焔は緊張しながらルーン文字を描いて火の魔術を放ち、訓練所に置かれた的に当てる。


「ちょ、ちょっと待て。」


 アルケイデスは、焔にルーン魔術を誰に教わったのかを尋ねる。彼女は、クー・フーリン王子の師匠だ、と答えた。


「アイツの師匠、か。……次は、風を利用した火の魔術だ。火は、風に対して有利なのは、分かってるだろ。」


 “二つの属性を同時に……威力が弱くてもやるしかない!”


 焔は、ルミソワで学んだ事を思い出しながら魔術を行使する。威力はそこそこだが、火と風の魔術がバランス良く出る。しかし、アルケイデスはその直後に訓練所を出ていこうとする。


「あ、あのッ! 待ってください!」


 焔は、アルケイデスが訓練所から去って行くのを見て驚き、止めに入る。しかし―


「黙ってくれないか? ……未熟者が監督生になるなど、反吐が出る。やっぱり、俺は降りる。」


 と、彼女を睨んでから去ってしまった。すると、アールシュとメガラがこちらにやって来た。


「全く、焔ちゃんが可愛そうじゃないの。」


「大丈夫? 姉さん。」


 アールシュは、焔に声を掛ける。彼女は、心配してくれるアールシュに感謝を伝えてメガラに尋ねる。


「メガラ先輩。私は、何か失礼したのでしょうか?」


「気にしなくて良いのよ。アルケイデスは、簡単に言うと怪力ボーイ。ここに所属する皆から期待されてるけど。

 怪力の力加減が難しくて物を壊すことも多くて。それに、未来の同盟諸国のリーダーを担うから、不安だし、少し焦っているのかもしれない。」


 焔はその言葉を聞いて、元の世界で経験した事を思い出す。


 『周りは普通にできているのに、自分だけ置いて行かれる』


 そのような感じなのだろうか、と彼女なりに思った。メガラは続ける。


「前もこんな事があったのよ。先生が止めても、無視して放棄。……でも、彼が全て悪いって訳じゃない。私は、誰にも言えない事情があると思ってる。」


「そうなのでしょうね。もしかしたら、他国人である私が監督生と言う事に納得できないのかもしれません。」


「……こんな話は止しましょう。実は、もう一人、焔ちゃんのペアを先生が候補で上げておいているわ。アルケイデスの事は、私に任せて頂戴。アシェル!」


「はい!」


 メガラに呼ばれて、教師の傍にいた銀髪蒼眼の青年がやって来た。焔は、その姿を見て―


 “あの時の……”


 と、夢であった青年とそっくりだった事を思い出す。青年は笑顔で、焔に自己紹介をする。


「初めまして。僕は、アシェル・S(ソード)・ナイト。よろしくね。」


「よ、よろしくお願いします。」


 “ふ、ふわふわ系男子だ”


 焔は挨拶をして、アシェルと拍手をしながら思った。一方、ロランは、小柄な先輩と懸命に訓練を行っていた。彼は、トンガリ耳を持っており、妖精族と思われるが、謎深き人物だ。


「うむ。お主は、呑み込みが早い。」


「それ程でもありません。まだまだ学ぶ事は、これからも沢山あります。」


「良い姿勢だが、時には休養するのも騎士として大事なことだぞ。友と出かけるのも、一人で趣味をするのも良しじゃ!」


「そうですね。この所、きちんとした休みを取っていませんでしたね。」


「運が良いことに、明日は休日だ。有意義に過ごすと良いぞ。」


「ありがとうございます、オリアンド先輩。もう一度、お願いします。」


 ロランは、オリアンドにそう言う。彼は、勿論だと再び指導を始めた。ルノーは、アンジェリカから適切な説明を受けて魔術をサクっとこなす。


「ルノーさんは、魔術がお得意なのですか?」


「ルノーで良い。……あまり、公爵の様な扱いには慣れていないんだ。敬語は、よしてくれ。」


「う、うん。分かった。」


「助かる。……君は、教えるのが上手い。だ、だから、その、もう一度良いか?」


「ありがとう。」


 ルノーは、アンジェリカの微笑んだ姿を見て、胸の奥がドクンっとなった感覚が走る。彼は、なぜ胸の奥が苦しいのだろうと思ったが、それがある感情だとは知らない。

 それから、二時限目には魔術学問で属性や魔術の成り立ちや種類について学ぶ。昼食を取り、三時限目に剣術訓練、四時限目に飛行術を学んだ。

 放課後、焔たちは部活動案内を受けた。焔はアシェルに進められた馬術部へ、アールシュはルノーとロランと共に剣術部へ仮入部した。そして、待ちに待った夕食の時間が来た。


「ふぅ〜。授業や部活が終わった後の夕食は、美味い! ……んで、仮入部草々、ボコボコになるまで喧嘩したのかい?」


「すまん。」


 ルノーは焔の真正面で食事しており、アールシュは別の場所でロランと話をしていた。彼らの顔には絆創膏、腕や足にシップが貼られていた。治療してくれたアスクレピオスは、怪我した原因を聞いて―


「何をやっているんだ、お前たちは……。明日から激しい運動は控える様に。医者との約束を破ったら、分かっているな?」


 と呆れつつ、脅迫に近い忠告を言っていた。まぁ、医者からすれば、その様な怪我は二度もして欲しくない、と言った所だろう。


「全く、一大事にならなかったらと言って……。競争相手なのは理解してるけど程々にしてよね。周囲からヤバい奴と思われても知りません。」


「キュ‼」


 アーサーは焔が言った言葉に賛成するかのように、「めっ!」と言う様に怒っていた。ルノーは反省しつつ、一口を食べ終えて彼女にある事を尋ねる。


「なぁ、焔。聞きたい事がある。」


「何? 相談事?」


「まぁ、そうだな。……一時限目の時、アンジェリカとペアになったんだが、その、ここが何か苦しいって言うか。彼女を見て、胸の奥がキュってなったんだ。」


 ルノーは胸に手を当てて、焔にこれは何だと言った。


「……ルノーって、そう言う所あるんだ。へぇ~。」


 焔は、ルノーの言葉にニヤニヤする。彼は何だと尋ねると、彼女は小声で素直に答えた。


「ソレ、恋ってやつだよ。」


「なっ!」


「ルノーったら、無自覚に一目惚れしてたんだね。うふふ。」


 “お、俺が、一目惚れ……恋と言うのは、こんな感情だと言うのか?”


 ルノーは自分がそのような感情を抱く事は無いと感じていたが、ここでその感情を抱くとは思わず赤面してしまった。焔は初めて見る彼の表情に―


 “青春だねぇ~”


 と、微笑みながら思っていた。こんな学園生活は理想中の理想だった。しかし―


 “けど、理想通りの生活が出来ないのは、この世界でも同じなんだな。でも、こうしているのが楽しいはずなのに……”


 と、焔は感情の矛盾にモヤモヤしていた。彼女は部屋に戻ると、ゾーイが大人しく部屋の隅にいた。


「ゾーイ。ご飯は食べてないよね?」


「英雄に食べ物は不要です。魔力が注がれている限り、餓死しません。」


 ゾーイは深くフードを被って冷たく言い放つが、焔は食堂からこっそりと袋に隠して持って来たパンを取り出して言う。


「それでも、食べて欲しいんだ。明日にでも、ケイローン先生に事情を話しておくから。今日は、イチゴジャムパンだけになったのは、ごめんね。」


「……仕方ありません。」


 ゾーイはそう言ってパンを受け取り、部屋の隅で食べ始めた。

読んでくださいまして、ありがとうございます!

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

焔:今日は、ケイローン先生がゲスト!


ケイローン:まさか。私がここに立つとは思いもしませんでしたよ。


焔:ケイローン先生は、どんな生徒に教えたのですか?


ケイローン:私は、ケンタウロス族なので皆さんとは寿命に違いはありますが、アキレウス、ヘラクレス、カストルと多くの生徒を育てましたね。

 少し前は、アルケイデスの武芸を教えていましたが、最近は学園長として忙しくなり、教えていませんね。


焔:そうだったんですね。また、教えられると良いですね!


ケイローン:ありがとうございます。それと、焔君には贈り物があるんだ。後々の楽しみにしてくださいね。


焔:あ、ありがとうございます、ケイローン先生!次回『知恵も積もれば山となる②』!お楽しみに!

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