第23.5節 インぺリウム・ローマ/祝福の喝采
復興支援の先行きが見えぬ中、勇気のある行動をした者たちがいた。
復興作業はルミソワ、アルスターとコノートが加わり、俊敏に進んでいた。ルミソワが無事に復興支援できたキッカケは、ローマの子供たちだった。
「お姉さん、煉瓦持って来たよ!」
「兄ちゃん、これで良いのか?」
ローマの子供たちは、白銀騎士団と少数の兵士たちと共に煉瓦の運搬・積み重ねなどをしていた。彼らの親たちは、騎士団が危害を加えず、笑顔で子供たちと接しているのを見て手伝おうとする者が増えて行った。
「皆!少しお休みしようか。」
焔は、子供たちに礼を言って休憩を知らせる。子供たちは、元気よく返事をして休憩に入る。すると、アールシュは焔に、クレメンテは子供たちに水を配給する。
「お疲れ様、姉さん。」
「ありがと、アル。そう言えば、記憶はどうなの?」
「うーん。まだ、思い出せない事もあるよ。父さん、母さん、兄さんの名前。思い出せたのは、剣技、くらいかな?」
焔は、それについて問う。
アールシュは、自分の村に伝わる剣技があり、いくつか教わった事があると話す。しかし、その威力を上げるには“聖なる炎”が必要と明かす。
「そっか。でも、良かった。家族の事、思い出せて。」
「うん。姉さんのおかげだよ。」
「そんな事ないって。……あ、そろそろルキウスとアクテさんの所に行かないと。」
焔は立ち上がり、アールシュとクレメンテに子供たちの遊び相手を頼み、王宮へと向かった。
彼女は、王宮に到着すると、ルキウスとアクテがいた。彼らは、焔だけに付き添いして欲しいと話す。彼らに付いていくと、王家と貴族たちの墓場だった。
「これは……。」
「ローマの大禍で、犠牲となった者たちだ。後世へ、二度とこの様な惨禍を起こさぬ様に、な。」
ルキウスはそう言い、とある三つの墓の前へ歩いて止まる。焔は、石碑に刻まれている名を見て理解し、口を慎む。
「彼女たちには、すまないことをした。……か、母さんは、ローマの為、我の為と言ったが、結局は被害を出してしまった。母さんが言ってたのだが、焔の言葉は正しいのかもしれない、と。」
「え?」
焔は、アグリッピナがそう言ったと知って驚いた。
「本当なんだ。……よく考えたんだ。母さんは、多分、あぁでもしないと、生きていけなかったのかなって。」
ルキウスは悲しい表情で言い、続ける。
「だが、我には立ち止まる時間がない事は分かっている。どうか、この事を焔、アクテ……其方らに伝えておきたかったのだ。」
ルキウスはそう話した後、一人の時間が欲しいと言う。焔とアクテは、王宮の中庭にて話をしていた。
「もう少し早かったら、違ってたかな……。」
「焔さん?」
「あ、そ、その……ルキウス、陛下の事を考えると、少し早く助けてたらと……。」
「そんな事はないわ!」
アクテはそう言って、焔の両手を取る。焔は突然の事に驚いてしまうが、彼女は続けた。
「ルキウスは、焔さんにとても感謝してるわ。それに、騎士団の皆さんはローマの為に頑張ってくれた。私は、感謝してもしきれない事に、とても悔しい。……ご、ごめんなさい!」
「あ、い、いえ!こちらこそ、ごめんなさい。アクテさんの方が、大変だったでしょうに。」
「アクテ、で構わないよ。緊張しないで。ルキウスの友人ですもの。敬語は必要ないわ。」
「え、えっと……じゃぁ、よろしく、アクテ。」
「えぇ!」
二人は握手をして、友好関係を築く事になった。アクテはルキウスを支える他、クレメンテと共に子供たちと親交を深めていった。
そして、復興開始から一ヵ月半後。王宮は修復され、市街は無事に完成した。そして、ルキウスは、ローマ市街復興を記念して、皇帝戴冠を行った。彼は大群衆の前に、アクテと共に姿を現す。ローマ市民は、大歓声に包まれる。
ルキウスは、市民に言葉を述べる。
「ローマの民たちよ。我の戴冠を祝福してくれる事、誇りに思う。だが、皆には謝罪しなければいかぬ事がある。」
ルキウスは、ローマの大禍について全てを打ち明けた上で謝罪をした。民は、その話に驚いて何も言えな型。彼は、話を続ける。
「だが、我はこのような事を踏まえ、決して二度も起こさせないと誓う‼しかし、我だけでは素晴らしいローマを築けぬ。ローマの栄光の為には、其方らが必要なのだ‼
……ここまで国を守り続けた民、其方らがいたから、今があるッ‼我は、民を愛する。……どうか、新たなローマを、平和なローマを共に築いてくれぬか?」
「陛下が悪いのではありません!」
「ルキウス様は、頑張ったよ‼」
『ルキウス様‼』
そう声を上げたのは、クレメンテと市街復興に協力してくれた子供たちだった。また、その子供たちの両親とスラム市街に暮らしていた人々も、次々と祝福の言葉を上げる。そして、徐々に民衆は声を次々と上げ始め―
『ワァァァァァァッ‼』
と歓声になった。
ルキウスは、全くの予想外に目を見開く。民衆は、彼の言葉に賛成の意を示すべく歓喜を上げる。彼の不安は、歓喜により消された。
「皆……ぐすっ……感謝するッ‼栄光あるローマを、切り拓こうぞ!」
ルキウスは涙を流しつつも、アクテの手を取って民衆に手を振る。まだまだ解決すべき課題はあるも、彼は前に進もうと言う決意は確かにあった。
また、彼はアクテと再婚。彼女は、ルキウスへの思いは揺るぎないものだった。二人の再婚は、民から壮大な祝福を与えられた。
クレメンテは、ルキウスから良民への昇格を得た。彼は、その恩を返すべく、ローマ兵になる事を決意した。
しかし、そこには白銀騎士団はいても、焔、アーサー、アールシュ、ロラン、ルノーの姿がなかった。彼らは、急用で『オリュンポス諸国同盟 首都・アテネ』へと向かったのだった。
読んでくださいまして、ありがとうございます!
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焔:ローマの平穏を取り戻せてよかった。
アールシュ:うん。良かった。
焔:あとは、ルキウスが上手くやってくれると信じてる。……でも、全ての人を幸せにするって難しいな。まだ、剣奴隷の人たちを完全に自由に出来てない。
アールシュ:それでも、姉さんは頑張ったよ。
焔:アル……(本当に、素直で良い子過ぎるぅ……)。あ、やべ、次回予告!アル~!
アールシュ:うん。次回、『第Ⅲ章 魔法工学先端国 オリュンポス諸国同盟 ―小さな光と大きな闇―』、『第1節 首都アテネへ/急行』だよ。楽しみにしててね。
焔:(微笑ましい~。天使だ)
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《第Ⅲ章 オリュンポス編》
ローマの大禍は収束した。しかし、焔は、アーサー、アールシュ、ロラン、ルノーと共にオリュンポス諸国同盟の首都アテネへと向かっていた。
そこは、魔法工学の最先端。神々が織りなし、英雄伝説が語られる地。魔獣の脅威から故郷を守る為、戦士たちは知恵と武芸を手に仲間と共に戦う。
そこで、焔たちは、大いなる脅威を目の当たりにする。また、焔は新たな出会いを、アールシュに大きな変化が訪れる。




