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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅱ章 大秦王帝国 インぺリウム・ローマ 編 ―長命菊の名君―
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第18節 勧善懲悪/序

 焔とルキウスの前に現れたのは、召喚術で呼ばれた二体の英雄たち。

 焔はルキウスを守るべく、奮闘する!

 焔は、左手に握る銃形態・日輪天空の引き金を引いて魔法弾を術者へ放つ。すると、狂戦士の英雄は、すかさずに前へ出て拳で彼女と刃を交える。


 “……ッ‼これが、狂戦士(バーサーク)の英雄。力が段違い、いや、あの時のクーと!”


 焔はそう思いながら、身体強化で拳を反動を利用して刀で押し返す。しかし、フードが取れてしまい、素顔が明らかになってしまう。

 だが、余裕もなく剣士の英雄の刃が振り降ろされ、銃形態・日輪天空で押さえる。更に、狂戦士は容赦なく、拳で潰しにかかる。


 “死ぬッ!負けるッ!”


 焔はそう直感した。ルキウスは彼女の名を叫び、奴隷の青年は恐怖の余りに目を瞑った。その時だった。


「姉さんッ!」


 焔の聞き覚えのある声と共に、狂戦士の拳を自分の剣で防いで怪力で押し返した。同時に、術者に向けて紅き槍を投擲して距離を取らせた。彼女の左隣と目の前に仲間がいた。


「アル!兄貴!」


「姉さん。無理、し過ぎ。」


「ったく、心配させやがって。」


 アルとクーはそれぞれ、焔へ言った。クーはロランからの連絡を受けたと話すと、それなら、話は早いと言って現れたのは暗殺者(アサシン)だった。


暗殺者(アサシン)!」


「主。ここは私に任せてください。剣士の英雄とは、ここで……殺します。それと、この布と飾りを。」


「……ッ!……分かった。」


 焔は布と飾りを見て何かを知り、英雄である彼の正体を考えて剣士と戦わなくてはならぬ絶対的な理由があった。すると、クーも暗殺者(アサシン)の隣に立って言う。


「なら、俺も、ここに残ってイカレ野郎を片付けてやる。」


「兄貴?!」

「クー?!」


 焔とアールシュは、クーの発言に驚く。彼は言う。


「アールシュ。お前は焔と行け。それと、そこのお二人さんもだ。元老院議員と皇帝さんは、謁見の間にいるぜ。」


「あ、ありがとう。」


 と焔は言い、奴隷の青年の手を優しく取って走る。狂戦士は焔へ一撃入れようとするが、クーはルーン魔術で敵の足元に氷の棘を作って阻害する。


「二人共、無理しないで。」


「其方たちの勇気、褒めたたえる。」


 アールシュとルキウスは、クーと暗殺者(アサシン)にそう言って焔に続いた。


「協力、感謝します。」


「良いんだって。んじゃ、まぁ、行くぜ‼乱暴野郎、俺が相手だ!」


 クーは狂戦士と戦い始め、激しい攻防が繰り広げられる。暗殺者(アサシン)は、フードを取って剣士の英雄に言う。


「私を覚えているか、術者(カエサル)。」


「お前ハ、やはり、カ。」


「何があっても、私は貴方を止める。例え民が良かろうとも、時は許しはしない。覚悟ッ‼」


 暗殺者(アサシン)・ブルートゥスは、カエサルとの一騎打ちを始めた。同時に、焔とアールシュとルキウスと青年は、ローマ王宮へと到着した。青年は焔に尋ねる。


「あの方たちは、大丈夫なのですか?」


「心配はいらないよ。兄貴とあの方は強いから、簡単に負けません。……ここからは、貴方を怖がらせる人々がいます。でも、自身を持ってください。私たちが付いていますから。」


「う、うん。」


「ありがとう。……謁見の間に着いたら、ルキウスはこの方をマントで隠してください。呼ばれたら、彼と一緒に来てください。」


「分かった。」


「アル、二人を守って欲しい。貴方ならできます。」


「やれることを、やるよ。姉さん。」


「‼……頼みましたよ。」


 “アル。私がいない間、何が起きたんだろ……いや、それより、謁見の間に”


 焔は三人と共に謁見の間へと向かうが、違和感を感じる。


「兵士たちがいない?」


「怪しいな。だが、あの英雄……伯父上だったとは。」


「もしかして、カリグラ帝の事?」


「あぁ。伯父上は月に狂わされたのだ。暗殺は仕方なかった、と聞いている。」


「そう、だったんだね。」


 焔とルキウスはそう話し、兵士の姿がない為に不自然と思いながらも謁見の間に到着する。ルキウスと青年は作戦を実行し、物陰に隠れる。アールシュは、二人の護衛で周囲を見張る。

 彼女はそれを確認して、謁見の間の扉を勢いよく開いた。皇帝への発言が激しく行われていたのか、騒ぎが一気に鎮まる。


「何者か‼む、その服装は。」


「流石は陛下。私は、貴方の客人としてお泊りしていた式守焔と言います。兵士たちがいないと言う事は、スラム街の火災の処理に当たっているのでしょう。さて、元老院の皆様に質問があります。」


「何だ?」


 そう言ったのは、奴隷を馬鹿にしたような発言をした元老院議員アントニオだった。(レイ)は、堂々とスラム街で拾い上げた書類を見せた。


「この書類、見覚えがありますか?スラム街で発見したのですが。」


「私がスラムに出る事は無い。何かの間違いだろう。」


「そうでしょうか。では、証人に聞きましょうか。」


 焔は後ろを向いて、アールシュに合図を送る。彼は、小声でルキウスに青年を出す様に言う。ルキウスは不安を見せる青年に言う。


「勇気を出すのだ、其方よ。困った時は、あの少女……焔を頼れ。」


 青年はルキウスの言葉を飲み、ゆっくりと謁見の間へと足を運んで焔の隣に立つ。その時、元老院議員たちはざわめいた。


「……ッ‼何故、ソイツが‼」


 アントニオは、自分専属の奴隷にして王宮に仕えさせている青年の姿を目にして目を見開く。

 その頃、クーと暗殺者(アサシン)・ブルートゥスは、二体の英雄との激しい戦いをしていた。その近くの門には、避難してきたロランとオリヴィエ、スラムの人々がいた。


「ウォぉぉぉぉぉぉッ‼」


 狂戦士の英雄・カリグラは、クーに向かって拳で殴りにかかる。彼は恵まれた鋭敏さで拳を避けて、すかさず槍を振るって間合いを取る。また、彼の体には緑炎が纏っており、力の暴走していなかった。

 クーは、鋭い槍捌きでカリグラの身体に傷を入れる。カリグラは連続で拳を振るって、クーと互角の威力を発揮する。だが、利点はある。クーの持つ槍の矛は呪いを纏っており、怪我は魔術で治りにくくなる特性がある。

 二人の連撃は凄まじく、衝撃波で二人の間に距離ができる。クーはそろそろお終いにするべきと思う。


「へぇ、狂戦士にしてはやるな、お前。悪いが、この槍で沈めてくれるッ‼」


 クーは目を鋭くさせて、構えを取ってから槍に赤黒い炎を纏わせ―


紅棘の死の魔槍(ゲイボルグ)ッ‼」


 と、呪いの一撃を放つ。カリグラは煙の合間に見えた月を見て力を溜め―


狂いし月の光(ルーナーティクス)ッ‼」


 と言い、拳に力を纏ってクーの呪いに対抗する。クーはその瞬間を逃さず、間合いを一気に詰めてカリグラの心臓を一突きし、直ぐに引き抜いた。


「グッ……グォォォォォォォォッ‼」


 カリグラは呪いを全身に受けて、茨の棘で止めを討たれて姿は消えた。クーはそれを黙って見た後、門の外にいたロランとオリヴィエに合図を送る。

 一方、ブルートゥスとカエサルの戦闘はローマ王宮の屋根上で行われていた。刃が激しくぶつかり、火花を散らせる。


「こうして刃を交えたのは、初めてダナ。」


「そうですね。ですが、やはり、私は貴方を容認できません。」


 鍔迫り合いの下、二人の交わした言葉はそれだけだった。そして―


賽は投げられた(ウィデーレ・ウェニーレ・ヴィクトーリア)!」


正しき世の為(アクーラートゥス・ローマ)‼」


 ぶつかり合う英雄同士の奥義。しかし、すでに決着はついていた。カエサルの体には、影分身したブルートゥスに刺されていた。


「やはり、お前には勝てぬか。英雄とは、残酷だな。」


「……残酷、没落だけではない。栄華や誇り、それも英雄だ。()()。」


 ブルートゥスはそう言い、分身を消した。カエサルは負けを受け入れてたのか、姿は消え去っていた。彼は、カエサルが消えた後、己の刃の柄を強く握りしめたのだった。

 再び、謁見の間。ネロは静かにと手で合図して、元老院議員たちの騒ぎが鎮まった後―


「虚偽と思えば、堂々とした立ち振る舞いだな。して、その証拠は?」


 と言う。焔は言う。


「貴方は、誰に、どんな命令されましたか?」


「言うな‼言ったらどうなるか、分かってるな?」


 青年は恐怖に支配され、口が堅くなる。その時、背中を暖かい手が優しく摩った。焔の手だ。その瞳は、一人ではないと言っている様だった。青年は、自分を救ってくれた事が何よりも嬉しかった事を胸に答えた。


「私は、この、アントニオに、この書類を持ってスラム街に向かい、ランプで放火せよ、と。」


「何を言う‼無礼者が。ち、違う‼違いますぞ、陛下。」


 アントニオは怒り出す。焔は、青年を自らの背中に隠して安心させる。青年は、彼女のマントの裾を思わず握っていた。彼女は青年にアールシュの元へ戻る様に言い、彼は指示に従った。


「黙れ、アントニオ。続けてみろ、焔よ。」


「はい。アントニオ様だけではありませぬ。他にも、バリー様、カルヴィン様、イーノク様、ジル様。以上の四名と他十名ほどの不正受領金額が乗っております。

 しっかりと公務を行っていると見せかけ、数日後に焼却処分を行ってもおかしくはありません。……証人は、勿論います。入ってきてください。」


 焔はそう言うと、召使いにして暗殺者(アサシン)の彼が入って来た。


「ローマ王宮の召使いである彼が証拠となります。何せ、スラム街焼却計画を聞いておられましたから。」


 ネロは、焔の言葉に暗殺者(アサシン)に真偽を問う。彼は、自分はローマの危機を考えたまでで彼女の言う事は虚偽ではない、と話した。


「ふむ。物的な証拠を見つけた故、その者たちに処罰を与え―」


「お待ちください、陛下。いえ、ユリア・アグリッピナ!」


 焔は、ネロの言葉を遮って言う。それを聞いたネロ、否、ユリア・アグリッピナは、血相を変えて言葉を失った。元老院議員たちは、驚いて騒ぎ始める。

 彼女に見破られる事は既に分かっていたが、このタイミングまでは読めなかったのだ。しかも、警戒すべき元老院議員たちの前で。

読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


焔:次回、『第19節 勧善懲悪/破』!緊急事態だから、豆知識や話は戦いのあとね!ごめん!

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