第5節 図書館へ
アッシュに連れられて、焔とフロリは図書館へとやって来た。
アッシュによって連れられた焔とフロリ。無事に図書館に到着したが、焔は息切れがたまらなかった。
「ぜぇ……ぜぇ……」
「だ、大丈夫か?」
フロリは、心配する。アッシュは「無理に走らせてすまん!」と謝った。焔は「大丈夫」と息を切らしながら言った。
「ここが、その場所?」
「あぁ、図書館と研究所が合体したものさ」
「随分、大きいな。うわぁ~」
図書館にしては、荘厳で壮大だ。古代の神殿の様な雰囲気を放っている。彼らは、焔の息が整った後、図書館へと入って行った。
中に入ると、アンティーク調の二階構造で天井まで本が棚にびっしりと並べられていた。また、奥には大きな扉がある。図書館には、既に何人かの者が本を読んだり、探したりしている。
(ここが……。何か、本当に二次元に来た感じだな。まぁ、現実なんだけど)
と焔は思いつつ、周囲を見回す。
「俺らの用があるのは、この奥だ。」
「え?あの奥の扉か?」
焔はそう言うと、アッシュは「そう」と答える。彼によれば、この奥は魔術・魔法研究に関する施設らしい。焔とフロリは、アッシュの案内で奥扉かへと向かう。
彼女は、周りをよく見ながら奥へと進む。
“小説……図鑑……絵本……魔法学。いっぱいある‼”
と彼女は周囲の景色を見て、頭の中に記憶する。高校になって、友人と初めて池袋へ遊びに行った際は、特にそうして迷子にならぬ様にしていた。
そして、扉の前に着き、アッシュは開ける。扉の向こうは、まるでエルフの里の様な雰囲気を持つ場所だった。
「綺麗!」
「こんな場所が……」
焔とフロリは驚く。図書館とは思えない程の景色である。
「だろ?ここはいつ来ても、綺麗で落ち着くんだ。さぁ、こっちだ!」
アッシュはそう言い、二人を案内する。向かった先には、秘書官らしき女性がいた。
「アッシュさん! 今日は、なんの御用ですか?」
「久しぶりだな、ソフィー」
彼女の名は、ソフィー。アッシュはここに住まう精霊の一人で、秘書であると紹介した。彼女は、アッシュの事を知っている様だ。彼は用件を伝え、ソフィーは「分かりました」と言い――
「では、そこの貴方。」
「わ、私ですか?」
焔は、ソフィーの言う通りに従い、石畳に描かれた魔法陣の上に乗る。
「では、焔さん。目を閉じて下さい」
焔は、ソフィーの言う通りにする。彼女は水晶玉を掌の上に浮かばせて、何かの呪文を唱える。すると、魔法陣が光って焔の体が宙に浮かぶ。そして、水晶玉からは、焔の魔力や属性が示される。
「……っ! これは!」
「……? 何か分かったんですか?」
フロリはソフィーに問うと、彼女は答える。
「この者……魔力は未熟で、属性は不明ではありますが、精進すれば高められるはず。……む? ……右手甲にある竜の紋章は、竜に選ばれし者の証拠」
「竜に、選ばれし者?」
フロリは、ソフィーの言葉に疑問を持つ。アッシュは、彼に「白銀竜の伝説を知らないのか?」と質問する。フロリは「聞いたことはあるが、詳しくは知らない」と答えた。
【白銀竜】……それは、古代から神話や伝説で語り継がれる竜の事。実際に、白銀の鱗を持つ竜神族がいて人間と共に暮らしていたがが、最近はその姿を見せなくなってしまった。
「そんな……人と仲良く暮らしていたのに……何があったんだ?」
「分からないが、何かあったのは間違いないだろう。多分な」
アッシュはそう言ったが、目は真剣だった。焔の魔力と属性調査を終え、ソフィーはフロリの調査を始めた。焔は、隣にいるアッシュにこう言う。
「なぁ、アッシュ」
「何だ?」
「前から思ってたが……アンタ、とんがり耳なんだなって思ったんだ」
そう。焔の言う通り、アッシュの耳は尖っている。周囲の人と比べても、彼だけ違うのだ。
「……元々、そうなんだ。」
「アンタは、分かってたか。わりぃ」
「いや、焔が、悪い訳じゃないさ。だけど、その……」
アッシュが何か言いたそうにしていたが、丁度良い所で、フロリの調査は終わった。アッシュは、ソフィーに尋ねる。
「どうだった? ソフィー」
「はい。フロリさんは、魔力の器が大きいです。属性は風となっていますが、比較的にバランス型です」
「あ、ありがとうございます。」
フロリは、ソフィーに礼を言う。彼女は「いいえ」と言った後、焔にこう言う。
「……そして、貴方は神に選ばれし者。右手甲にある紋章は、白銀竜の聖痕と思われます」
「白銀竜?」
焔は、初めて聞く言葉に首を傾げる。『紋章』や『聖痕』と言うのは二次元でよく出てくる為、すぐに理解できる。ソフィーは、彼女に説明をする。
「伝説や神話に寄れば、その紋章が刻まれし者…白銀竜の主……ロードである証拠です」
「白銀竜の、主?」
焔はどういう事か理解できなかった。ソフィーによると――
『竜神族と言う種族は、人間と白銀の鱗を持つ竜の二つの姿を持ち、中でも、人間と深き絆を持ち、この世界を絶望へと陥れようとする者に対抗し、主と共に戦う使命を持つ竜……それが、白銀竜だ』
と説明した。
(主と共に、悪を倒す使命を持つ竜って事か?)とホノ、
(何か、ファンタジーでよくあるパターンだ)とユウ、
(それが現実だし……使命と言えども大変なんでしょうね)とレイがそれぞれ思う。
ソフィーは彼女に説明を続ける。
「しかし、主は白銀竜の主であると共に、苦渋の決断や困難を乗り越える試練が待ち受ける事もあります。どうか、貴方に光明神様と白銀竜の加護があらん事を」
「……」
焔は黙ってしまう。仕方ない。現実として受け止めづらい事だ。
「焔さん。貴方の中に宿る力は、まだ本当の域に到達していません。それに、魔力もほぼゼロと言っても過言ではない状況です。精進して、人々を助けるか否かは、あなた次第です」
「……やりたいです。けど、この世界の事をまだ知らないのは、嫌です‼ なので、ソフィーさん。この世界の知識を私に教えてください‼」
焔は、ソフィーにそう言った。脳内では、レイ以外にもほのか、ユウ、エルが彼女の言葉に賛同していた。ソフィーは、彼女の思いを聞き入れ、この世界について教える事にした。
アッシュは、行かなければいけない場所がある為、部屋を後にする。フロリは、焔に「終わったら家に帰る様に」と言い、部屋を出た。
「この世界は、幻想界と呼ばれているのを知っていますね?」
「はい」
「貴方は、この世界とは全く異なる世界から来た。故に、この世界の知識を授けます」
そう言ってソフィーは焔を案内し、部屋の奥にある美しい泉へ辿り着いた。彼女は、焔にこう言う。
「貴方が持つ不思議な板……すまほ、という物を出してください」
焔は、ウエストポーチからスマホを取り出した。ソフィーは、焔の準備が整ったのを見て説明を始めた。これからの「異世界生活」。様々な「壁」と「困難」と「戦い」に備えて。
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次回『第6節 知恵を』です。