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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅱ章 大秦王帝国 インぺリウム・ローマ 編 ―長命菊の名君―
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第13.5節 光明神の巫女 ―首都ローマへ―

一方、郊外の街に身を潜む騎士団は……

 その頃のアッシュたちは、迫害を受けない事への安心と疑心を抱えつつ、焔たち、オリヴィエたちの安全を祈っていた。ジュヌヴィエは、自分の事を思い出す為に町を巡る。


「ジュヌヴィエ!」


「フロリマールさん。」


「ちょ、ちょっと、こんな所で一人で歩いてたら、駄目だろ?焦ったぁ……。」


「ごめんなさい。でも、来てくれてありがとう。」


「あ、いや……俺が勝手に来ただけだ。それは、そうとして、行きたい所、あるんだろ?」


「はい。では、行きましょうか。」


 二人は再び教会跡を見てから、町の各地で教会があった頃の話を人々に聞き回る。

 その途中。彼らとは別の宿に訪れた時の事。ジュヌヴィエは、エントランスホールの壁に飾ってあった絵を見つけて眺める。


「宿主さん。この絵は?」


「あぁ。それは、最後の地って言う絵なんだが……。あの日の事を忘れない様にって、俺の知り合いの絵師が描いたものだ。

 アイツは、この絵を描いた後、批判を浴びて自殺してしまった。けど、俺はそうとは思えなかった。あの日の事を、皆忘れかけている。忘れちゃいけねぇのにさ。」


 ジュヌヴィエは、その絵画を見て脳裏に蘇る。


 ―私が幼い頃、その地で母を守ろうとして父はローマ兵に殺された。また、共に逃げてきた亜人族も殺された。母は馬を借りて、その地を潜り抜け、山を越え、遠くルミソワにやって来たのだ。


 『フロルドリ……』


 母が呼ぶ自分の、名前。……そうだ、私の名前は!―


「ジュヌヴィエ?」


 フロリマールはジュヌヴィエの様子に異変を感じて、彼女の様子を伺う。ジュヌヴィエは―


「私は、フロルドリ……。」


 と、ポツリ呟いた。フロリマールは彼女の言葉を聴きとって、記憶を取り戻したのだろうと確信する。


「私の名は、フロルドリ。今と同じ、光明神(クレアシオン)様を信仰する巫女。そして、光明神の弓を託された。それと、お母様が言っていた事を思い出しました。」


「君の、お母さんが?」


 フロリマールはそう尋ねると、ジュヌヴィエ、否、フロルドリは―


『今、七つの厄災、降臨せし。その中の黄金の蛇竜(じゃりゅう)は、時が遅ければ星と言う命を喰らうだろう』


 と話した。


 『七つの厄災』


 それは、七つの大罪に相当する怪物の事。光明神(クレアシオン)を信仰する人々や学問で教わる事が多い為、知っている者が多い。

 厄災は全部で七体で、それぞれ一つの罪を司る。それに値する怪物も当てられており、言い伝えでは“一つの国どころではない危険な状況になる”と言う。


【Ⅰ:傲慢、Ⅱ:回天(嫉妬)、Ⅲ:物欲、Ⅳ:堕落、Ⅴ:憤怒、Ⅵ:暴食、Ⅶ:色欲】


 しかし、フロルドリの母・によると、第Ⅵの罪を司る黄金の蛇竜は“始まりの厄災”とも言われる。その話を聞いたフロリマールだったが、突如、通いの瞳が鳴り出した為、それに応じる。


「はい。ロ、オルランドさん、どうしたんですか?」


[申し訳ありませんが、アッシュ殿とフロリマール様に、首都ローマへ馳せ参じていただきたいのです]


 ロランはそう言い、フロリマールに事情を話す。彼は、その話を聞いて目を見開く。


「え?そんな‼それじゃ……。」


[気持ちはごもっともですが、そうは言っていられないのです。アッシュ殿に、どうかお伝えして欲しいのです。クー王子にも使い魔でその事を話し合いました]


「わ、分かった。」


 フロリマールはそう返事をして、ロランとの連絡を切った。


「ど、どうしたの?」


「ジュ、じゃなくて、フロルドリ。アッシュと俺に、ローマへ来て欲しいってロランから。」


「え?それは……。」


 フロリマールは一息する。核心には至らない事が、覚悟を決めて言う。


「焔が、殺された。ローマ宮廷で。」


「……ッ!」


 フロルドリはそう聞いて衝撃を受けた為、足に力が入らなくなって倒れる。フロリマールは、彼女を受け止めて言う。


「しっかりしろ、フロルドリ!焔が死ぬ訳無い。」


「……フロリマールさん。」


「だ、だって、焔はあんな簡単にやられる訳が無いだろ?あの鞘の事もあるけどさ。

 悔しいけど、アイツは俺よりも周囲の状況をよく見てる。きっと、何処かで反撃を考えてるさ。」


「……フロリマールさんの、言う通りね。焔は、強い人だもの。」


 フロルドリはフロリマールの言葉に、焔は負けるはずがないと改めて確信する。フロリマールは彼女に言う。


「フロルドリ。君は、ここで待っててくれ。」


「いいえ。……私も行きます!フロリマールさんのお供をさせてください!」


「なっ……。うぅ、分かった。けど、あまり、無理はするなよ。」


 フロルドリの真剣な眼差しに、フロリマールは押されてしまったのだった。こうして、彼はフロルドリを連れて、アッシュと共にローマへと旅立った。

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