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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅱ章 大秦王帝国 インぺリウム・ローマ 編 ―長命菊の名君―
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第12節 脱出計画 ―本物の皇帝―

焔は、暗殺者(アサシン)が彼女の身の安全の為と、牢獄に閉じ込められた。そこで、出会ったのは――

 焔は暗闇に慣れた頃、一人の青年の姿を捉える。そっと歩み寄ると、青年はゆっくりとこちらを向くと、怯え始めた。


「誰だ!く、来るな!」


 青年はこちらに気付いた。(レイ)はスマホをしまって、灯りの魔術で照らして話をする。


「驚かせてごめんなさい。私は、貴方の敵ではありません。ここに、投獄されたんです。」


「う、嘘だ!あの女の刺客だろ!信用できないッ!」


 青年は、酷く怯えながら言う。まるで、誰も信用しない、と言うかのように。瞳も動揺と言う言葉一色しか表せない。


「あの女?」


「あの女は、僕を支配しようとしている!僕の考えなんて、聞いてくれない!……怖い。」


 “支配。考えを聞かない。怖い?”


「突然の事で、貴方が信用できないのは分かります。私は、アグリッピナの暗殺計画によって、ここへ投獄されました。」


 (レイ)の言葉に、青年はビクッと肩を震わせる。


「……その話、本当なのか?」


「はい。私は、ローマを助けたいのです。スラム街は、深刻な状況です。それと、ポッパエアさんが暗殺されたのです。

 確信とは行きませんが、私が暗殺された事で、アグリッピナは野心のまま、ローマを支配する事も考えられます。このままにはしておけません。私は、王宮(ここ)を出ます。」


 焔はそう言って、長い話をした事を謝罪してから青年に名を尋ねた。


「ネロ……。ネロ・クラウディウス。」


「五代目皇帝陛下?!……陛下。そ、その、今、成り代わっているのは……。」


「ぼ、僕の、か、か、母さん、だ。」


 “かなり震えてる。母親に対する恐怖、か。……分かるよ。何となくだけど、支配されている様で親が怖く感じること。でも、ネロの方が怖かっただろうな……。声色から凄い恐怖心がある”


 焔はそう思いつつも強制ではないが、ネロに母親の事について尋ねる。彼は、彼女の問いに答えるどころか、手が震えていた。

 焔は、その話は止そうと確信して、話せるまでそっとする事にした。また、ネロにここを脱出してスラム街へ避難する事を話した。


「脱出?何を言っているんだ。直ぐ、あの女に見つかる。」


「陛下……。あなたの気持ちはわかります。しかし、こうもしていられないのが、現実です。正式な皇帝を玉座に座るのは、反逆罪に値する……そうでしょう?」


「そ、それは……。」


「陛下。貴方は、誰にも言えない恐怖があるのかもしれません。ですが、あなたが居なければ、ローマは滅びます。それに、ローマ郊外に愛する人がいます。」


「まさか、アクテ、なのか?」


「はい。私たちは、ルミソワの者。アグリッピナやローマの人々には、それを隠して王宮に参りました。辛いのは当然ですが、民を愛する貴方だからこそです。今が、立ち上がる時です。いざと言う時は、私が守ります。」


「……。」


「こんな事を言って、信用性を得られない事もあるでしょう。ですが、今は信じてください。」


 焔は跪いて「行きましょう」と言って、ネロに手を差し出した。彼は、恐る恐る彼女の手を取った。彼女は通いの瞳を通じて、オルランドことロランと連絡をする。


「オルランド。今からスラムに向かう。」


[ど、どうされたのですか?]


「ごめん。緊急変更なの。私は、アグリッピナに暗殺された事になっているの。それに、隠された牢獄で真の皇帝、ネロ・クラウディウス様を見つけた。一度、避難させないとね。」


[……招致。迎え入れる準備をしておきましょう]


 ロランは驚きつつも、冷静さを失わずに答えた。


「ありがたいけど、なるべく目立たないようにね。……それで、スラムは大丈夫なの?」


[今の所は問題ありません。オリヴィエの解析結果では、スラムの人々は重度の鉛を体内に蓄積されていたようです。

 それも、水道管だけでなく、ローマ全体で使われている鉛の食器も原因の一つです。その製造を止めなければ、毒に満ちた町になってしまいます]


「それはまずいね。合流したら、後で聞くよ。じゃぁ。」


[分かりました。そちらもお気をつけください]


 ロランと連絡を切って、焔は何御変哲もない石ころにルーン文字のラドを描いて地面に置く。兵士に見つからずにスラムへ通じる道を探す為だ。石ころは、魔術の効果で地面を転がり始める。


「其方は、一体?」


「大丈夫です。探索のルーン魔術があれば、脱出する道を示してくれます。」


 焔はそう話して、ネロの足首にあった鎖をルーン魔術・破壊(ハガル)で解放する。彼女は、彼に歩けるかどうかを尋ねる。彼は歩き出すも、筋力が足りないのか一歩一歩に時間がかかっている。


「陛下、無理は禁物です。……(ラグ)庇護(ソーン)安寧(ウィン)。」


 焔はルーン魔術を行使して、水のクッションを作ってネロを乗せる。彼は、心地が良かったのか暴れる事は無かった。彼女はルーンの辿った道を歩き、クッションはその後についていく。


「陛下。その、お尋ねしても良いですか?」


「……構わぬ。今は、君しか話し相手が居ないからな。」


「貴方の得意な事はありますか?その、趣味とか、特技とか……。」


「どうして、それを?」


「いえ、その、ネロ陛下は芸術に興味があるお方だと聞いて。アグリッピナは、芸術面にあまり興味を示していませんでしたから。」


「うむ。……確かに、我は、芸術に興味はあるし、特技は(ハープ)と剣術だ。皇帝たる者、戦うこともある。」


「そうですね。……となると、皇帝専用の武器があるはず。」


「む?何を言っている。」


「も、申し訳ありません。剣術を得意とする陛下なら、専用の武器があるはずと思いまして。」


「うむ、なるほどな。……我の武器は、紅に近い色と白の二本を持っている。皇帝の部屋の武器庫にある。」


 “随分と難題なところに……取りに行くにもタイミングがあるか……”


「では、陛下の服も取り戻さなくては。」


「取り戻す?まさかとは思うが……。」


「陛下のお考えの通りです。誰が皇帝の玉座に相応しいか、証明するんです。……ッ!静かにしてください。」


 焔はそう言って、曲がり角から覗くと見張りの兵士がこちらを監視していた。幸い、向こう側を見てはいないが、ルーンの石も止まってしまっている。彼女はここを通る以外に方法が無い事は分かっている。

 彼女は左右上下と周囲を見渡すと、天井は薄暗く松明もあまり照らされていない。


 “天井、か。行ける、と思う”


 ルーンの石を手にとって、焔は小声でネロに兵士がいる為に音を出さない様にと言う。彼は了承して、彼女の指示に従う。

 焔は、自分とネロに重力魔術を使い、天井を床として立つ。彼女は、そっと足を踏み出して天井を歩き、兵士の目を無事に回潜った。彼女はルーンの石を天井に置くと、石は天井を走る。

 天井を走って行くこと、数分。ルーンが示したのは、地下水道だった。深い溝の水路に新鮮な水が流れている。焔とネロは、地面に降りる。


「水道……。」


「陛下、ご安心を。ここを進めば、スラムへ直進です。もう少しの辛抱です。」


「そ、そうか……。しかし、ここはよく化け物が出ると聞く。」


 ネロは、不安を抱えつつ言う。焔はルーンの石を置いて、再び進もうとしたその時だった。


「ウゥ………ウォォォォォォォォォォッ!」


『?!』


「ココハ、オレノ、ナワバリダァァァァァァァッ!」


『で、出たぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 二人は現れた化け物に驚き、同時に叫んでルーンの辿る道を走る。化け物は、黒いオーラを纏い、大きなハンマーを片手に持って二人を追いかける。


「な、何アレ?!」


「あんなの、聞いておらぬ!一体……。」


 もう少しの所だと言うのに。焔は、このままスラムに行くのは、大問題と確信して、行動に移す。


同調(ラド)……。陛下、後で追いつきますので、出口でお待ち下さい!」


「なんだと!其方では!」


「大丈夫です。今は、陛下の安全が第一ですから!」


 焔はネロがルーンの石と共に先に行ったのを確認して、脇差を構える。これだけの狭い範囲は初めてだが、やるしかない。

 化け物は彼女に目掛けて、ハンマーを振り下ろす。即座に避けて、化け物の腕に一振り。


 “よく見えなかったけど、あの黒い液体は何だ?メリウス・ヘヴンとは違うのか?”


 焔はそう思った時、ハンマーは彼女に目掛けて再び降ろされる。避けようとしたが、彼女は水路へと落ちてしまう。化け物は容赦無く、水路に入って彼女へと迫る。彼女は脇差を握り直して、水中戦に入る。


 “少し呼吸が楽?あの時以来、ずっとだ。いやいや、今はそれdころじゃない‼来い!水の型 水曲の技 渦潮螺旋!!”


 焔は回転斬りをして渦を作り、化け物を迎え撃つ。化け物はハンマーを持っていた腕を吹き飛ばされる。彼女は、そのまま次の動きに移り、会わせ技を繰り出す。


 “白糸流麗の技 滝鯉登り‼”


 焔は、水路の地面から水面の上へと上昇して化け物を斬り、通路へ着地した。化け物は叫びながら塵となって消えた。しかし、焔の足元へコロンッと黒い石が落ちて来た。彼女は手に取ろうとしたが、静電気が走ったかのように痛みが手に痺れた。


「何、これ?あの化け物の残骸とすると、調べる必要はあるか。」


 焔は、殻になった小瓶に手に触れず、その石を入れてポーチにしまった。彼女は、通路にある小石にルーンを刻んで、急いでネロの元へと向かった。

 ネロはクッションに座りながら、焔が来るのを待っていた。彼は彼女が無事である事に安堵したが、驚きが大きかった。


「そ、其方、強いのだな‼」


「へ、陛下。お褒め頂き光栄ですが、今は、こ、声を……。」


「お、おぉ。すまぬ。……そうだな。皇帝を守った褒美として、お前を信頼することにした。」


「あ、ありがとうございます。陛下。」


「陛下と畏まるでない。最初は何者かを知らない故に怖かったが、其方は何かの才能があるかもしれぬ。これからは、ネロと呼ぶが良い。」


「そ、そんな‼」


 “ちょっと、待ってよ。心を打ち明けるの早くないか、失礼だけどチョロすぎるぞ!?”


「頼む。友人がおらんのは、あまり好きではない。」


「わ、分かった、ネロ。……こ、これで良い、かな?」


「うむ、とても良い!」


 “相当、寂しがり屋なのかしら?ねだり方が、構ってクン……だね”


「と、とりあえず、スラムに向かいましょう。」


 焔はそう言い、ネロを連れてスラム街へと飛び出して合流地点へ無事到着した。オルランドことロランは、彼らを見つけて拠点へと匿った。

読んでくださいまして、ありがとうございます。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


焔:まさか、皇帝が偽物とは……。それに、凄い展開で自分も驚いた。陛下は、ほんとに大変だったと思う。

 私の時代だと、良くも悪くもと言う皇帝だから……何とも言えないなぁ。

 さて、次回は『第13節 スラム街/侵入 ―忘れてはならぬもの―』。

 そろそろ、豆知識を披露したいな。

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