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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅱ章 大秦王帝国 インぺリウム・ローマ 編 ―長命菊の名君―
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第9節 歓迎の宴 ―状況一変―

 焔はアールシュと共に部屋で食事をする中、クーはネロによって宴に参加していた。

 一方、クーはネロによって宴がもてなされる。


「ネロ陛下。申し訳ない、アールシュの今の状態では、ここにいるのは些か不安でしたので…。」


 クーは、ワインが注がれた盃を手にしながら言う。


「良い。焔は、我からの役目をしっかりとこなしている。別に構わぬ。あの子供の事を、()()()()になった()()()から聞いた。

 東方の鬼の一族、その末裔だと。しかし、一節によると、緑を司る龍や火を司る鳥、雷を司る虎に水を司る亀と蛇の力を持つとも言う。」


「そんな伝説的な一族なんですねぇ。東の事はよく知らなかったので、驚きました。」


 “今、最近配下になった魔術師、とか言ったな。何か、裏がありそうだが…今は止そう”


「我も驚いた。ただ、珍しく華奢に見えて、強靭な肉体、獣の様な身体能力。鬼とは、恐ろしいものだ。」


「……。まぁ、今の所は、焔が落ち着かせていますので、大丈夫ですよ。」


「ふむ、そうだな。些か、不安だらけであったが、む……焔がおれば良かろう。……すまない。少し、風に当たって来る。お前は楽しんでおれ。」


「ありがとうございます。」


 “帰ってから、焔に報告、だな”


 ネロが宴を後にして、部屋に戻るとボッパエアがいた。彼女は、彼が来た事に喜ぶが……。


「フン!よくも、まぁ、私の息子に近づいたわね。」


「え?何を言っているの?ネロ。息子?まだ、子供はいないわよ。」


「お前の野心は、とうに見通している。各地で迫害を起こしたのも、お前が元凶だろうが…。皇帝の妻となり、家に金を持ち込むためにね。」


 ネロは、変身術を解いて本来の姿を見せる。ボッパエアは、その姿を見て恐れおののいてしまう。


「嘘……。何で、義母(おかあ)様!は、迫害は何かの間違いですよ‼」


「悪いが、もうお遊びはお終いだ。暗殺者(アサシン)、この女を殺せ。」


「御意。」


 暗殺者はネロの指示に従って、剣を抜刀する。ボッパエアは慌てて逃げ出すが、暗殺者の素早い動きにより背後から腹を貫かれた。

 暗殺者は刃を引き、ボッパエアは失血によって地面に倒れる。


「これで、家を脅かすを倒せた。時期に、迫害を止めにかかろう。そうすれば、ウフフ。……ご苦労、暗殺者(アサシン)。召使いの仕事に戻れ。」


「御意。」


 暗殺者はそう言って、血を振り払ってから剣をしまい、部屋を後にした。後に、この事件は直ぐに王宮に広まった。

 何者かによってポッパエアが殺された、と。その知らせは、翌日、焔とクー、アールシュの元に届いた。


「ちょい待って。こんな時に、事件とか……。物騒な話はやめてくれ。」


「何があったかは知らんが、ヤバいのは事実だ。」


「じ、けん?何?」


 “あぁ〜。天使や、この子。弟属性、増し増し……”


「アールシュは知らなくて良いよ。……兄貴。どう思う?」


「いや、どうと言われてもな……。宴も、違和感なしだ。あ、それと、迫害を皇帝さんが止めたって事で話題になってるぞ。皇帝の見えない所で、皇后は民を迫害したってな。」


 クーは、噂の内容を話す。


「いやぁ……流石に、違和感あり過ぎでしょ。迫害を止めるのに、長い月日いる?」


「俺も同じだ。計画性ってか、裏がありそうだ。」


 確かに、違和感が大きい。しかし、民は皆、安寧が戻って来たか、と喜びに満ちている者が多い。


「兄貴にしては、言うね。」


「おいおい。俺は、ただ槍を振るっているだけじゃねぇぞ。」


「ごめん、ごめん。分かってるよ。」


 “やっぱ、冗談を言うのは合わない、か……”


「で、オリヴァーとオルランドからは、何だって?」


 クーは焔に尋ねる。昨晩、焔は、オリヴァーことオリヴィエ、オルランドことロランと連絡を取っていたのだ。


「うん。スラム街になった原因を突き止めたみたい。けど、もし、この情報を皇帝に嗅ぎつけられたら、大変だけどね。」


「そうだな。ま、でも、進歩してる事には変わりねぇさ。」


「アールシュの事も話したんだけど、二人共、私と同じ……アールシュを、故郷に送り届ける。家族のことを思うとね。」


 焔はそう言って、ふと、あることを思いついた。


「そうだ!アールシュ。今日から君をアルって呼ぶよ。友達だし、渾名も悪くないでしょ?クーも、良いと思わない?」


「とも、だち……。うん。いいよ。」


「良いんじゃないか。それにしても、結構素直だな。アルは。」


 クーは、アールシュの様子を見て率直に言う。


「アルは、多分、上にお兄さんかお姉さんがいるんじゃない?だって、ほら、ねぇ……。」


 焔は、そう言った。クーは、アールシュの雰囲気で弟ぽさが出ている事を理解した。


「なるほどな……。そうかもしれないな。」


「でしょ!………あ!そうそう!……アル。家族のこと、何か思い出せる?」


 焔は、アールシュに尋ねる。彼は少し考えるも、首を横に振った。まだ、記憶の一欠片も思い出せず、混濁している様だ。


「困ったなぁ……。何か、手掛かりがあれば良いけど、やっぱり、コーサラに行くしか無い、か。兄貴。こっからコーサラまで、どれくらいかかるんだっけ?」


 “ルミソワで世界地図を見たけど、結構遠かったような……”


「俺の記憶だと、結構遠い気がした。途中で、オリュンポスを越えて、その先は長い道のりじゃなかったか?」


「オウマイガーッ!……気長に行くしか無いか……よよよ。」


 クーの言葉に、焔はそう言ってガックリと肩を落とす。アールシュは自分の意志を徐々には出て来るようにはなったが、まだまだ心配な点がいくつかある。


 “どーしよ……いつまでも部屋に閉じこもってちゃ、駄目だよな。ちょっと、過保護過ぎたかも……。ダメダメ、クヨクヨしちゃ!”


「アールシュ。そろそろ、宮廷の外……町に出たいと思わないか?いつまでも、ここに居ても飽きてしまうだろ?」


 (エル)はそう言って、アールシュに尋ねる。


「外、町。……行きたい‼」


 アールシュは、この時初めて感情を含めた言葉を発した。瞳に僅かな光を宿して。焔は、明日に町へ赴いて買い物でもしようと約束した。

 クーは引き続いて皇帝と会談をし、アールシュは昼寝をし、焔はバルコニーからローマの街並みを眺める。


「……今頃、どうしているかな。」


 一方、アッシュたちの元には迫害が終わったと喜びの通達があった。喜ぶ光明神(クレアシオン)の教徒たち、アッシュ、アストル。しかし、フロリマール、ジュヌヴィエ、ルノー、エレオノーラは喜びと言うより疑問が残る。


「いきなり、迫害が無くなるとは思えない。」


「ルノーも、そう思うのか。」


 フロリマールはルノーにそう尋ねた。


「お前もか?」


「あぁ。腑に落ちないさ。師匠が教えてくれたんだが、急な変化などには気をつけて方が良い、例え国内外問わずって言ってた。それが、まさに今かなって。」


 フロリマールは、師匠という人物からの知恵を話した。


「そうか。俺は、爺さんの事があってから、人を疑う事を忘れなかった。父さんと母さんが信頼を取り戻したとしても、媚を売って来る奴には特に気をつけてたさ。」


「氷の騎士、ってそっから?」


「分からない。でも、ずっと睨むような目線だったし、そうかもしれないって思う時はある。……それよりも、この状況、ローマでも広がっていれば良いが…。」


 ルノーがそう言った時、フロリマールの通いの瞳が音を出した。彼は通いの瞳を開くと、焔からだった。


[フロリマール。そっちの状況はどうなの?]


光明神(クレアシオン)の教徒に対する迫害が無くなったって。噂では、皇后様が迫害していたって聞くけど。」


[情報の伝達が早いね。そんなに早く?]


「ローマはどうなんだ?」


[その情報はあるよ。ようやく安寧が来るのかって、喜んでいる。ただ、宮廷では大変な事が起こった。ボッパエア皇后が暗殺されたんだ。]


「皇后が、暗殺?!」


 フロリマールは思わず大声を上げたが、周囲に知られては混乱を招くとして小声で理由を尋ねる。


[まだ、詳しい事は分かってないんだ。でも、裏はあると思う。]


「俺もそう思うよ。急に、こんな出来事は起こせないはず……。物語でも、急に平和になって、めでたし、だなんてあり得ない。」


[確かに。例えると、そうだね……。とにかく、まだ様子を見て欲しい。本当に終わった事なのか。こっちも、様子は見ているから。]


了解(ダコール)。アッシュたちにそう言っておく。ありがとう。」


[いいえ。そっちも、気をつけてね]


 焔は、そう言って通信を切る。話を聞いていたルノーは、フロリマールと目を合わせてアッシュとアストルを呼び、ジュヌヴィエとエレオノーラも宿泊部屋へと招く。

 フロリマールは、焔と話していた事を伝える。


「た、確かに、いきなりハッピーエンド、なんてないな……。」


「気付かなかったぁ……。」


 アッシュとアストルは、迂闊だったことを反省する。


「致し方ありません。こう言う事も、考えられます。」


「こう言う事も?どういう意味なのですか?」


 エレオノーラの発言に、ジュヌヴィエは尋ねる。

 エレオノーラの話によると、国の全ては皇帝が指揮権を担っていて、逆らう事も許されない事が多い。また、皇帝崇拝もあってか、皇帝の信頼は大きく、覆す事は限りなく不可能に近い。

 ましてや、ネロ皇帝は民からの信頼がとても厚く、より困難を極める。


「今の所、こっちは見守るくらいしかできない、か。」


 アッシュは、残念と思いつつもそう言った。


「そうだね。申し訳ないけど、焔とクー王子、ロランとオリヴィエに任せましょ。」


 ジュヌヴィエはそう話す。彼女の意見が、今の所はごもっともだとアッシュたちは頷いた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます!

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


焔:兄貴、パーティに参加してくれてありがとう。


クー:造作もねぇよ。お安い御用さ。


焔:兄貴らしい!フゥ〜!


クー:ま、久しぶりに皇帝さんと話したけど、気になる事はあったな。

   と、ここで『イリュド豆知識!』。ネロ陛下は魔術が得意だが、剣士や騎士は最高に立派なものだと知ってから、常に剣を持っているようだぜ。


焔:へぇ、確かに。剣士とか、騎士は良いよね。んで、兄貴が気になる事って?


クー:あぁ。それは……って、尺がねぇじゃねぇか!!し、次回、『第10節 ローマ市街/散策』だ。


焔:兄貴……(タイミングが悪すぎる……)。

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