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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅱ章 大秦王帝国 インぺリウム・ローマ 編 ―長命菊の名君―
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第3節 騎士団、山道を駆け抜ける

 荷馬車内で、それぞれの時間を過ごす。焔はルノーとの稽古をしている中、ジュヌヴィエはロランから料理を教わっていた。

 焔とルノーは一対一の練習稽古に励む中。ジュヌヴィエは、異空間の調理室にてロランから料理を教わる。


「今日の昼食は、クロックムッシュー、ニンジンのポタージュです。スイーツには、クレープを。」


「わぁ!素敵!」


 メニューを聞いて、ジュヌヴィエは瞳を輝かせる。まずは、スイーツ以外の材料を集め、包丁で適切な大きさに切り込む。


「指を傷付けないコツは、猫の手です。」


 ロランはジュヌヴィエに丁寧に教えて行き、彼女はゆっくりと実行する。野菜と肉を切り、炒めて煮込んだり、調味料や追加の材料を入れたりと次々と進める。

 いい匂いは、調理室を越えて荷馬車の異空間内へと広がる。オリヴィエとの勉強を終えたフロリは、その匂いを辿って調理室へ向かう。


 “ジュヌヴィエ‼……ロランから料理を教わっているのか”


 ジュヌヴィエは、懸命にロランの教えを元に料理を作って行く。彼は、その様子を見るが―


 “ん?何だ?どうして、モヤモヤ、するんだ?……部屋に、戻るか”


 謎の感情に包まれたフロリマールは、足音を立てぬ様に調理室から離れて部屋へと戻った。

 そして、デザートのクレープを作る。焦がさぬ様に生地を作り、果物を適切な大きさに切ってクリームと共に盛り付ける。


「良い出来栄えです。流石、ジュヌヴィエ様、呑み込みが早いです。」


「いえいえ、ロランさんのおかげです。」


「お言葉に感謝します。それでは、昼食を知らせるベルを鳴らしましょうか。」


 ロランはそう言って、時計を見る。丁度、十二の場所に短針と長針が重なっている。彼は、昼食を知らせるベルを鳴らす。

 空を飛んでいるアストルに、稽古場にいる焔とルノー、自室で共に勉学に励むフロリマールとオリヴィエ、手綱を握るアッシュ、山の景色を眺めていたクー、それぞれの伝言の瞳に連絡が回る。


「おっ!ご飯だ!グリン、後でご飯を用意するからね!」


「ありがとう、アストルフォ。」


 グリンはそう言って降下し、荷馬車上にアストルを降ろして再び空へと飛び立つ。


「見回り、ご苦労さん。」


「ありがと、クーちゃん!」


「ちゃん?!」


「行こう行こう!」


 アストルは呼び方に困惑するクーを気にせず、腕を引っ張って荷馬車内へと向かった。

 そして、リビングで昼食を食べる焔たち。焔は、頬が落ちる様な満足顔でペロリと食べてしまった。


「ジュヌヴィエ。美味しかったよ!今度、教えてくれるかな?」


「いいよ。でも、まだまだだから、一緒にやろう。」


了解(ダコール)!じゃぁ、アッシュと交代して来るから後でね!」


 焔はそう言って防寒着を着て、馭者をしているアッシュと交代に入る。


「あぁ~、寒いよ。(ロード)‼」


「中であったかい料理があるから。ジュヌヴィエが作った料理なんだけど、どれも逸品だよ。」


「ほんとか!言ってくるぜ‼」


 アッシュは焔の言葉を受けて、目を輝かせて荷馬車内へと走って行った。焔は、手綱を握ってソレルとタサドルの操作をする。アストルは、荷馬車の上でグリンに料理を差し上げている。


「美味しい。」


「良かったぁ。ジュヌヴィエちゃんが作ってくれたんだよ。」


「人が作る料理は、暖かい……。」


 グリンは料理の口にして、そう言った。焔は、そんな会話を聞いて微笑む。アーサーは彼女の襟元で、布団に丸まった様な感じで温まっている。

 山である為、まだ冬の寒さが残っており、焔たちが吐く息は白くなる。


 “道中、魔物に襲われなければ良いけど…”


 焔は、不意に浮かび上がる不安を抱きながら馭者をする。その時―


 ウォォォォォォォォンッ!


 と、狼の鳴き声が響いた。彼女は、すぐさまに周囲を見渡す。アーサーも、周囲を見渡して彼女を呼ぶ様に鳴いて威嚇する。彼女は、アーサーが威嚇している方角を向くと、そこには魔獣の特徴を持つ狼の姿が七匹確認した。

 アストルは、すぐさまグリンに乗って槍を構える。


「ソレル、タサドル‼走れ!」


 焔はそう言って手綱で指示をして、荷馬車を走らせる。


「焔ちゃん!」


「ソレル、タサドル、こっち!」


「道は、僕とグリンに任せて‼」


 アストルはグリンと共に低飛空で道沿いに進んで行き、焔は頷いて彼らに続く。同時に、荷馬車内は魔獣が近づいている事を感知する警鐘が鳴り響く。

 オリヴィエは、直ぐに荷馬車の外にいる魔獣を水晶玉で確認する。


「直ぐに、魔獣・(ルヴトー)迎撃!」


 彼の指示に、アッシュたちは荷馬車(おもて)と向かう。


 “魔獣に文句は通じないけど……折角のお茶を邪魔すんじゃねぇよ‼”


 とオリヴィエは思い、


 “ジュヌヴィエの折角の料理を、冷めさせよってか…あ゛ぁ゛?!”


 とフロリは思い、怒りに火を付けて思った。

 焔は手綱を手に取って立ち上がって、ソレルとタサドルを操作する。アストルとグリンの前に、(ルヴトー)が数匹威嚇して立ちふさがる。


「グリン、吹き飛ばせ!」


 ピィー‼


 グリンは、アストルの指示に魔獣の群れに突っ込んで思いっきり翼を羽ばたかせて、魔獣を強風で浮かばせる。焔は、そのまま走り通る様に二匹の馬に指示をして魔獣の真下を通る。


「それぇ!」


 アストルは魔法槍(ソルセルリー・ランス)を振るい、グリンは魔獣たちの間を瞬時に駆け巡る。魔獣たちは、彼の槍捌きで倒される。彼とグリンは、討伐直後に荷馬車の先頭に立って道なりに誘導する。

 すると、外の異常に気付いたアッシュたちが現れて定位置につく。


「キュウ!」


 アーサーは荷馬車後方の空を見上げる。焔は、斜め後ろを見上げると、魔竜(ワイバーン)の群れだった。(ドラゴン)と違って、前足は無く、人や動物を容赦なく襲い掛かる魔獣として分類される。


「嘘っ!魔竜(ワイバーン)?!」


 焔は、初めて見る魔獣に驚くが、馭者の務めを果たす為に直ぐに前を向く。荷馬車の前にいるアッシュとオリヴィエとクーは、荷馬車の上で魔竜を見て攻撃に入る。


 “()‼”

 “(ヴァン)(フレッシュ)‼”

 “(アンサズ)‼”


 三人はそれぞれの魔術で魔竜に向かって放つが、俊敏に避けられてしまう。クーは、最終手段でイチかバチかを試す為、アッシュとオリヴィエに後ろへ下がる様に言う。彼は、二人が後ろへ下がるのを見てから魔槍を手にして上に投擲する構えを取る。


「……行け。紅棘の死の魔槍(ゲイボルグ)ッ‼」


 赤黒い炎を纏った槍の矛先から、呪いの棘の矢が放たれる。魔竜たちは一度避けたが、彼の魔槍は敵を逃さない。棘の矢は、次々と魔竜の心臓へ止めを刺して討伐を完了する。

 しかし、まだ狼の魔獣の声が聞こえて、荷馬車の後ろから追いかける。荷馬車内から後ろを見ているフロリマール、ジュヌヴィエ、ロランはそれぞれ魔術を放つ。


 “(ヴァン)‼”

 “(ルミエール)!”

 “(フランマ)‼”


 三人の放った魔術は、狼の群れへと衝突して雪原に罅が走る。そして、荷馬車が走っている直ぐ近く山から轟音が響いた。(エル)は、山の上を見ると、雪が大量にこちらへと降り注いでくる。


「雪崩だぁぁぁっ‼ソレル、タサドル、このまま走れぇ‼」


 (ほのか)は急いでと叫ぶ。ソレルとタサドルは、全速力のまま走り抜けて端に差し掛かった所で、雪崩をギリギリ回避した。魔獣の群れは、瞬く間に雪崩に飲み込まれて行った。

 そして、橋を渡り終えると、山小屋があったので彼女は手綱で急ブレーキをかけて荷馬車を停車させた。


「はぁ、はぁ、はぁ…。」


 焔は、窮地を抜けた事で力が抜けてしまい、後ろへ落ちそうになる。


(ロード)!」


 降りて来たアッシュは、倒れそうな彼女を支える。彼は、彼女によくやったと言って頭を撫でた。オリヴィエは、荷馬車の上に落ちて来た掌サイズの赤い水晶玉を拾い上げる。


「オリヴィエ、何だそれ?」


 クーは、彼が拾い上げた水晶について尋ねる。


「魔竜を倒した時に落ちて来たんだよ。これは……少し調べ甲斐があるかもね。魔竜は、あまり出くわす事が無かったからね。」


 オリヴィエはそう言った。その時―


「お~い!お前さんたち、大丈夫か?」


 と宿屋の主であろう男が声を掛けて来た。アッシュは、全員怪我は無く大丈夫だと宿屋の主に言った。騎士団は、荷馬車を置いてから宿屋へと入って行き、部屋にて休憩を取っていた。

 その間、アッシュとフロリは、宿屋の主と宿泊日数などで話し合っていた。


「お前さんたちは、ルミソワから来たのかい?」


「はい。そうですけど…。」


 フロリマールは宿主の質問についてそう答えると、宿主はある話を始めた。


「実は、一昨日泊まった商人の話によると―」


 二人は、男から情報を貰う。彼らにとって、衝撃的な知らせであった。彼らは宿泊日数などの手続きを済ませて、急いで仲間たちの部屋へと入る。


「大変だぞ!」


「何事でしょうか、アッシュ殿。」


 ロランは彼の慌てように気付いて尋ねる。アッシュは、騎士団全員に言う。


「大変な事になった…。」


 一瞬の沈黙。どういう事なのかを、フロリマールは話す。


「宿主さんによると、この道を進んで行くと、ローマ帝国に入るんだけど…。一昨日泊まりに来た商人さんからの情報で、ルミソワ人を見つけ次第捉える様に言ったようだ。

 それも、兵士の警戒が凄まじいんだ。商人さんは、ケルト人だったから大丈夫だったんだけど、殺しにかかるような雰囲気だったって。」


「えぇ~。それじゃ、僕たちはローマに行けないのォ?!」


 フロリマールの話に、アストルはそう言ってガッカリする。しかし、ここで長居する訳にもいかない。ルノーは、アッシュに話をする。


「先輩。作戦を、中止と言う訳ではないですよね?」


「ん~。そうだな。こうなると、少し変更するのが良いだろう。よし、立案を変更する会議を始めよう。」


 アッシュは、騎士団員にそう言って会議を開催することにした。

 読んでくさだいまして、ありがとうございます。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 焔:し、死ぬかと思ったぁ。


 アッシュ:でも、(ロード)が頑張ってくれたおかげで雪崩に巻き込まれずに済んだよ。


 焔:なら、良かったけど…。でも、皆でローマへ行けないなんて…。


 アッシュ:もしかすれば、(ロード)が言っていた魔術師とやらが関係しているかもしれないな。

      と、ここで『イリュド豆知識!』。俺が、焔をロードと呼んでいるのは、竜と主の契約でもあるけど、なんかさ、心配になるんだ。ちゃんと、支えなくちゃってな。


 焔:よし。ローマに入る作戦を考えないとね。バレたら、お終いだよ…。次回、『第4節 潜入作戦

・改 ―ローマへ―』!

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